挨拶

挨拶

生きることの課題を求めて

学長 日比谷潤子

学長 日比谷潤子

国際基督教大学(International Christian University)は、キリスト教の精神にもとづき、『国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資すること』を目的として、1953年に献学された日本で初めての教養学部一学部大学(College of Liberal Arts)です。同年4月29日に行われた最初の入学式では、新入生一人ひとりが紹介され、大学の目的と理想を実現するため、「世界人権宣言」の原則に立って生活することを誓約しました。

ICUの第一の特徴は、一人ひとりを個として尊重するところにあります。毎年4月と9月の入学式で新入生全員、3月と6月の卒業式で卒業生全員の名前を呼ぶのは、その具体的なあらわれの一つです。この慣行は、献学以来、営々と受け継がれています。

日本語と英語のバイリンガリズムを徹底し、約30の専修分野の学びを深めると同時に、分野を超えたつながりに目を拓いていくことを重視する教養学部、学部のリベラルアーツ教育を基礎に、学際的な研究の深化を目指す大学院とも、少人数制を堅持し、双方向的で参加型の授業・アドヴァイザー制度・オフィスアワー・チュートリアル等を通して、学生は主体的に学び、教職員は学生が自己の可能性を最大限に開発していく過程を支援してきました。多様な背景を持つ構成員がともに学び働くキャンパスでは、一人ひとりが互いの違いに気付き、自分とは異なる他者を理解し、それによりあらためて自己認識を深め、互いにつながっていきます。

もう一つの特徴は、構成員相互の全人的な交わりを重視する伝統です。深い森に囲まれた62万平方メートルのキャンパスには、本館(教室棟)、理学館、図書館、体育館等の施設はもとより、寮や教員住宅が点在し、学生と教職員が教室の枠を超えて学び合う環境を提供しています。このかけがえのない校地は、第二次世界大戦後の荒廃のなか、本学設立の理念に賛同した多くの人々からの寄付によって購入されたものです。

本学初代学長の湯浅八郎(1890─1981)は、『欽定英訳聖書』(King James Version)の「幻なければ民ほろぶ(Where there is no vision, the people perish.)」(「箴言」第29章第18節)を、「人間としての生きがい、団体としての理想実現を考える場合に大切な標語」と考え、「我々は一人一人、皆一度あって二度ない人生をおくっているのでありますが、どのような幻をもって生きているのか。我々の生きがいはどこにあるのか。これが第一義的な生きることの課題ではないでしょうか。」と問いかけました(『若者に幻を』国際基督教大学同窓会、1981年、34─35頁)。私たちは、献学当時から今日まで60年間にわたって、本学に関わりを持った無数の人々の祈りに応えるべく、日々、生きることの課題に真摯に取り組んでいます。

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