人権侵害、ハラスメントの定義と事例
ICUでは、セクシュアル・ハラスメントだけではなく、アカデミック・ハラスメント、パワー・ハラスメントなど地位や立場の違いを利用して、相手に教育、研究、就労の場における不利益を与える行為を人権侵害として定義し、禁止しています。人権侵害は、教員と学生・院生、上司と部下、先輩と後輩、多数者と少数者など、地位や権限の違いなど両者の間にある力関係を利用して、強い者が弱い者に対して逆らえない状況に追い込む構造が背景にあることが多いのです。
大学内での関係はキャンパスの外でも影響してきます。ですから、キャンパスの外での言動だからといって、対象から外されるということはありません。
地位や立場上の力関係では、同等あるいは逆転している場合であっても、ハラスメントなどの人権侵害がおこる場合も、もちろんあります。
セクシュアル・ハラスメントとは?
「何らかの力関係を背景にして行う、相手の意に反する性的な関心や欲求に基づく言動」のことをいいます 。 「相手の意に反する」ということは、行為者の判断ではなくて、その行為の対象者の判断が基準になるということです。「そんなつもりではなかった」という言い訳は基本的に受け入れられません。自分の思いや気持ちを押し付けていないか、相手がどのように考えているのか推し量る力を養う必要があります。 「性的な関心や欲求に基づく言動」には、性的マイノリティへの差別意識なども含まれます。 「性別による役割」を押し付けることも、セクシュアル・ハラスメント行為となります。「女なんだから」とか「男らしくしない」など、ついつい思い込んでいる固定観念を見直してみましょう。
(例)
- 性的な噂を流したり、人を侮辱する性的内容の冗談を言う。
- ポルノグラフィーや性的漫画を公の場所で見せたり、掲示したりする。
- 相手が望まないのに、デートや飲食などにしつこく誘う。
- 不必要に身体に触れる。 セクシュアル・ハラスメントの認定に関しては、被害者の判断が基準となります。あらゆる人間関係において、相手の人格を尊重し、対等な関係をつくっていくことが大切です。
アカデミック・ハラスメントとは?
「教育研究の場における、権力を利用した教育・研究上の地位又は権限を利用した不当な言動」のことをいいます。セクシュアル・ハラスメントへの取り組みが進む中で、大学における研究活動や教育指導など研究教育の場において、性的な言動以外にも深刻な嫌がらせがあり、アカデミック・ハラスメントとして認知されるようになりました。研究テーマを与えない、指導をしない、研究活動を妨害する、不平等な単位の認定をする、重要な情報を与えない、悪口や中傷などを言いふらす、些細なミスを大声で叱責するなどの言動により、教育を受ける権利、研究教育を行う権利、働く権利などを侵害する行為です。指導する側の指導される側に対する権力の乱用や、共同研究者間にある権力関係などがその背景にあります。
充分に能力を発揮する機会が奪われれば、思うように成果をあげることができず、当人の能力に対する評価が低下しますが、これは本人に非があると周りの人から誤解されがちです。そして多くの場合、被害者は孤立化させられます。
大きな権限をもつ者が権力を乱用しているとわかっても、その部下や同僚が協力や沈黙をすることで、アカデミック・ハラスメントを助長してしまうことが多いのです。このような「消極的協力者」がいなければ、アカデミック・ハラスメントは成立しないとも言われています。嫌がらせが企てられたとしても、周囲の人たちは荷担しないことです。
その他のハラスメント等による人権侵害
その他にも、地位や権限を利用して、部下の仕事量を増やしたり、情報を与えなかったりするような、就業環境でのパワー・ハラスメントにも気をつけないといけません。仕事を遂行し責任をとるために組織上、力を付与されているのであって、地位や権限の違いを利用して相手に好き勝手ができる力を持っているわけではありません。地位や権限の違いがあっても、お互いに人として対等な存在であるという自覚が必要です。地位や立場が上にある者の方が、力関係に鈍感になりやすいので、特に気をつけなければいけません。