在学生・教員の声

田中 智大 (たなか ともひろ)教養学部4年(インタビュー時)

メジャー:文学

自分の知らない世界はまだたくさんある

イギリス文学を学びに留学

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交換留学先は、イギリスのシェフィールド大学です。ICUに入学した理由の一つも交換留学に参加したかったからで、留学を単なる英語のみの学びにしては意味がないので、自分のメジャーである文学を深められるところに留学しようと思っていました。当初はアメリカへの交換留学を考えていたのですが、サイモンズ, クリストファー E. J.先生の英文学史やシェイクスピアに関する授業を受けて、イギリス文学への関心が深まったので、イギリスへの留学を決めました。

シェフィールド大学は、イギリスの総合大学なので、授業の幅が広く、文学のジャンルを横断して、コメディー、悲劇、さらには映画なども学ぶこともでき、非常に素晴らしい環境でした。中心的に学んだのは、シェイクスピアなどのルネサンス期の文学やルネサンス期後の文学ですが、課題が本当に多かったのが記憶に残っています。「明後日の授業までここまで読んできて」というように課題が出されるのですが、とにかくページ数が多く苦労しました。読まないと次の授業でディスカッションに参加できないので、ひたすら読むしかなく、24時間空いている図書館にこもっていました。平均すると1週間に300~400ページの文学を1冊は読んでいたと思います。多分日本ではここまで読むことは少ないと思います。

まだ知らない面白い文学の世界がある

日本では学ぶ機会が少ない黒人文学や奴隷文学といったマイノリティ文学を授業で取り上げる機会が多かったことが、とても印象に残っています。それまでは、文学には文章のうまさが前提として必要と思っていたのですが、例えば黒人文学は、字をかけなかった人がようやく字をかけるようになった頃に書き上げられていて、洗練はされていませんが、その当時の黒人の人から見たイギリス文化が描かれていて、自分の知らない世界や見方を新たに知った感じがして、とても興味を持ちました。

留学の大きな成果として、興味ある分野がいろんな方向に広がったこと、そしてもっと文学を学びたいと思ったことがあげられます。留学前までは、シェイクスピアの演劇などばかりに興味があったのですが、今は『フランケンシュタイン』や『ドラキュラ』など、ゴシック文学と呼ばれるジャンルや、主流から外れた文学も面白いと思うようになりました。これは授業でマイノリティ文学に触れたことが大きなきっかけです。また、留学中にゴシック文学を研究している大学院生がチューターとしてついてくれていたので、その人から話を聞くうちに、まだまだ面白い文学の世界があると感じました。留学前は、卒業後は就職することを考えていましたが、次第にまだ学び・研究し足りないと思うようになり、今はイギリスの大学院への進学を考えています。

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ウェールズのスノードン山で留学先の友人と

留学は今後必要となる寛容性を養う

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イギリスに留学していたICU生とロンドンで

留学は、旅行とは異なりある一定期間違う文化圏で過ごすことになるので、大学生の今しか経験することできないことだと思います。実際に留学してみて、想像していた以上に世の中には知らないことがたくさんあることを実感しましたし、さまざまな事を違う視点から見る楽しさも覚えました。また、違う文化圏で暮らすことで、自分に知らず知らずのうちに培われてしまった偏見に気付かされることもありました。

これからの社会は、今まで以上に多様な価値観が共存する社会になると思います。その時に必要なのは、自分の知らないことを恐れるのではなく、知ろうとすることだったり、違う価値観や考えを受け入れる寛容性だと思います。留学は、さまざまななことを新しい目で見る機会がたくさんあり、この経験は必ず寛容性を養うことにつながるので、ぜひ留学に挑戦してみてください。