NEWS

2019年春季卒業式を挙行

公開日:2019年3月25日

3月22日(金)、大学礼拝堂において2019年春季卒業式を挙行し、学部生504人、大学院生24人あわせて528人が本学を卒業しました。

厳粛な雰囲気の中で執り行われた式では、献学以来の本学の伝統に則り、卒業生一人一人の名前が読み上げられ、卒業生は壇上において学位記を授与された後、日比谷潤子学長と祝いの握手を交わしました。

続いて式辞を述べた日比谷学長は、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」の達成度指標とされる、新生児死亡率や5歳未満児死亡率など世界の平均寿命に関連する指標を例に、学問分野の境界を超えた総合的なアプローチが、世界的な課題の解決に不可欠であること語りました。

そして、卒業生たちに「本日学士号を取得したみなさんは、ここICUで、文理を問わない多様な知識、日英両語の運用能力、批判的思考力、問題解決力、文章記述力を獲得し、主体的に計画を立てつつ創造的に学ぶことのできる自発的学修者になりました。また、修士あるいは博士の学位記を受け取ったみなさんは、深い学識とそれぞれの分野における高度な研究能力を身に付けました。在学中に修得したこれらの力を、どうか賢明に、そして惜しみなく、世界が直面する課題の解決に果敢に取り組むために用いて下さい。そうすれば、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、永遠に価値のある宝がたくわえられることでしょう」と、激励の言葉を贈りました。

また、式の中では、顕著な活躍がみとめられた学生、教職員または本学関係者に対して贈られる「Friends of ICU賞」の授与式が行われ、今年度で本学を退任する鈴木寛教授(メジャー:数学)と、本学同窓生の安田祐輔さん(2008年卒)の2人が受賞しました。

鈴木教授は、1993年の着任以来、2019年の退任間際まで、学内住宅にてバイブルスタディを毎週開催し、学生との対話を通じたリベラルアーツを実践し、ICU献学の理念である基督教の根幹を家庭的な雰囲気の中で学生と共有しました。こうした理念実現に向けた永年の精励と献身的な奉仕の姿勢がICUコミュニティーに範を示すものであると、紹介されました。

安田さんは、「何度でもやり直せる社会をつくる」という使命を掲げ、もう一度勉強したい人のための個別指導塾を立ち上げ、また子供の教育格差解消を目的として支援制度を社会に根付かせる取組を推進しています。こうした努力を惜しまず前身する姿を通じ、他者に勇気と活力を与えた実績は、ICUの理念を具現化したものであると、受賞の理由が紹介されました。

日比谷潤子学長 式辞(全文)

Commencement190322-149.JPG

聖書朗読:マタイによる福音書第6章第19-21節

あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。あなたの宝のある所には、心もあるからである。


教養学部卒業生、大学院博士前期課程、同後期課程修了生のみなさん、おめでとうございます。ご参列のご家族、ご親戚、ご友人の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

昨年の夏、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳でいずれも過去最高を更新し、男女を平均すると84.2歳で、世界第1位との報道がありました(2016年のデータ)。健康、保健、福祉の水準を総合的に示す指標として広く使われている平均寿命は、その年に0歳の人があと何年生きられるかを表す期待値です。これを知るための最初の調査は、明治24年から明治31年(1891年~1898年)までの8年間を対象に実施されましたが、当時は男性が42.8歳、女性が44.3歳でした。日本人は、この120年余りの間に、格段に長生きするようになったわけです。ちなみに、本日の教養学部卒業生504名中276名が生まれた1996年の平均寿命は、男性が77.01歳、女性が83.59歳でした。

世界保健機関(WHO)による統計資料には、同機関に加盟している194の国と地域の平均寿命が掲載されています。この資料は2005年以降、毎年発表されるようになり、持続可能な開発目標(SDGs)が始まった2016年からは、目標の達成状況をモニタリングしています。SDGs が掲げる17の目標のうち、健康に明示的にフォーカスしているのは、目標3の「健康な生活、福祉の推進」ですが、寿命や健康には「飢餓の撲滅と食糧の確保」、「ジェンダー平等」、「水、衛生へのアクセス」、「気候変動に対する対策」、「平和で公正な社会の構築」等々、複数の目標が深く関わっています。

2017年夏の国連総会では、17の目標と169のターゲットの進捗状況をモニタリングするために、232の指標が採択されました。例えば、目標3のターゲット2「すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」の達成度測定には、新生児死亡率と5歳未満児死亡率の2つの指標があります。日本は2016年に、それぞれ0.9件と2.7件でした。WHOは世界を6つの地域にグループ化しており、オーストラリア、中国、フィジー、ラオス、ミクロネシア、韓国、トンガ、ベトナム等、37の国や地域とともに、日本は西太平洋地域に分類されていますが、新生児死亡率と5歳未満児死亡率の数字では、いずれもこのグループの1位でした。一方、ターゲット4「2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、メンタルヘルス及び福祉を促進する」には、心血管疾患・癌・糖尿病・慢性呼吸器系疾患死亡率と自殺率の2つ指標があり、このグループの中で、前者は2位でしたが、後者は100,000人当たり18.5人で、下から2番目となっています。

平均寿命に関連する指標にはこの4つの他にも、妊産婦死亡率、安全でない水・安全でない公衆衛生及び衛生知識不足による死亡率、道路交通事故による死亡率、大気汚染による死亡率、15歳以上の喫煙率、10万人当たりの災害による死者数・行方不明者数・直接的負傷者数、10万人当たりの殺人行為による犠牲者数、10万人当たりの紛争関連死者数等、さまざまなものがあります。さらに、WHOが2000年に提唱した健康寿命も重要です。こちらは単なる寿命の長さではなく、日常的・継続的な医療・介護に依存することなく、自分自身の心身で生命を維持し、自立した生活ができる生存期間を表します。採択された各指標の数字を全体的に向上させて目標やターゲットを達成すると同時に健康寿命を伸ばしていくには、言うまでもなく、学問分野の境界を超えた総合的なアプローチが不可欠です。

本日の式辞では平均寿命についてお話ししてきましたが、みなさんがこれから出ていく広い世界は、これに限らず、解決しなければならない数多くの問題を抱えています。さらに、新たな課題も次々に生じてくるでしょう。本日学士号を取得したみなさんは、ここICUで、文理を問わない多様な知識、日英両語の運用能力、批判的思考力、問題解決力、文章記述力を獲得し、主体的に計画を立てつつ創造的に学ぶことのできる自発的学修者になりました。また、修士あるいは博士の学位記を受け取ったみなさんは、深い学識とそれぞれの分野における高度な研究能力を身に付けました。在学中に修得したこれらの力を、どうか賢明に、そして惜しみなく、世界が直面する課題の解決に果敢に取り組むために用いて下さい。そうすれば、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、永遠に価値のある宝がたくわえられることでしょう。
 
みなさんのうえに、神の豊かな祝福がありますように。

参考:
World health statistics 2018
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/272596/9789241565585-eng.pdf?ua=1

持続可能な開発目標 (SDGs) 指標仮訳
http://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

Page top