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メールマガジン Message from ICU, No.2 「オンライン授業」

公開日:2020年6月24日

ICUは新型コロナウイルス感染防止のために、オンラインでの遠隔授業を一早く取り入れた日本の大学の一つです。Zoomなどのアプリケーションを使った同時双方向型や、事前に収録して学生が好きな時間に受講するオンデマンド型の両方を駆使しながら、授業を展開しています。

通常の対面授業からオンライン授業への移行は、多くのICU教員にとって簡単だったわけではありませんし、対面授業と同様に質の高い授業を提供できるかどうか不安でした。リベラルアーツ教育を自負するICUは対話型の授業を基本にしています。すなわち、教員と学生の対話、学生と学生の対話を通して学びを深めるという方法です。しかし、そのような授業がオンラインで可能なのか、懐疑的になっている教員も少なからずいました。

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Message from ICU , No.2(2020年6月15日発行) 

オンライン授業

- ICUの対話文化が生み出す新たな空間 -

教養学部長 石生 義人

2020ml_no1_img01.jpgICUは新型コロナウイルス感染防止のために、オンラインでの遠隔授業を一早く取り入れた日本の大学の一つです。Zoomなどのアプリケーションを使った同時双方向型や、事前に収録して学生が好きな時間に受講するオンデマンド型の両方を駆使しながら、授業を展開しています。

通常の対面授業からオンライン授業への移行は、多くのICU教員にとって簡単だったわけではありませんし、対面授業と同様に質の高い授業を提供できるかどうか不安でした。リベラルアーツ教育を自負するICUは対話型の授業を基本にしています。すなわち、教員と学生の対話、学生と学生の対話を通して学びを深めるという方法です。しかし、そのような授業がオンラインで可能なのか、懐疑的になっている教員も少なからずいました。

春学期の後半からはっきりしてきたことは、ICUの教員は、オンライン授業をネガティブにとらえるのではなく、オンライン授業で使えるリソースを創造的にフル活用して、リベラルアーツ教育を提供しているということです。つまり、オンライン授業の特性をうまく利用すれば、教育的にポジティブにとらえられる点が少なからずあるのです。

2020ml_no1_img04.jpgまず、オンラインでどのような対話型授業が可能になっているのかを紹介します。Zoomを使った同時双方向型の授業では、教員が学生に話しかけながら講義をしていますし、学生も教員に問いかけることができます。しかし、受講者数が多い授業では、学生が同時に口頭で質問をしてしまうと混乱してしまいますので、多くの場合、チャットというメッセージボードに質問を書いてもらい、その質問に教員が答えるようにしています。多くの教員が今学期の経験から気づいたことは、通常の対面授業よりも、質問の数が多いということです。このことは、オンラインであっても、対話型の授業が成り立っていることを意味し、場合によっては、オンラインの方が学生にとって質問がしやすい環境だとも言えます。

学生間の対話を促すため、通常の対面授業では受講者を小さなグループ(5人程度)に分けてディスカッションをしますが、Zoomを使った授業では、受講者を「ブレークアウトセッション」と呼ばれる別々の部屋に受講者を分け入れ、その小さなグループで、ディスカッションをしてもらっています。したがって、オンライン授業でもグループディスカッションが効果的に行われています。特に興味深いことは、通常の対面授業であれば、授業時間の終了とともにディスカッションはその場で終わり、学生は教室を後にするのですが、オンライン授業では、多くの学生が授業時間の終了後もZoomから退出せずにディスカッションを続けていることがよくあります。自宅にいる時間が長いので他の学生との関係を普通以上にエンジョイしているという側面もあるかと思いますが、オンライン授業の特性が対話を促すことを可能にしていると言うこともできると思います。

ICUは国際性を重視している大学です。しかし、新型コロナウイルスの影響で、来日することができなくなった留学生や留学期間の途中で帰国を余儀なくされた留学生が多くいます。しかし、ICUの国際性は、オンライン授業を通して維持されている側面があります。第一に、留学生が自国に居たままICUのオンライン授業に参加し、国際的な対話が授業中に展開されています。英語で開講されている人類学の一つの授業では、米国、インド、ベラルーシ、英国から学生がオンラインで出席しています。日本語の語学プログラムでは、米国、韓国、英国、中国、台湾、タイ、インドネシア、イタリア、メキシコ、マレーシア、ドイツから学生がオンラインで受講しています。第二に、オンライン授業は、世界にいる専門家や講師をゲストとして招待することを容易にしました。新型コロナウイルスの影響によって国際的な移動が難しくなってしまった現在ですが、ICUではオンライン授業の特性を活かして、国際的な対話・つながりを新たな形で展開しています。

2020ml_no1_img03.jpg この他にも、教室外からの情報をうまくオンライン授業に取り込んでいる教員もいます。オンライン授業では教員は教室にいる必要はありません。ポケットWi-Fiなどを利用して、教員が講義内容に直結する現場に行き、そこからオンライン授業を行うことができます。具体例としては、ICUキャンパス内で発掘調査が行われていて、縄文時代の竪穴式住居跡や旧石器が見つかっているのですが、考古学の先生がその現場に行って、臨場感あふれる中継授業をしていました。この例はまさにオンライン授業の特性を活かした授業だと思います。受講生はこの中継授業に強い関心を示していたということです。

ICUでのオンライン授業が私の予想以上に有効に機能している理由は、教員が工夫を凝らしたからだけではありません。実は、この成果はICU生によるものも大きいと思います。ICUには、もともとコメントシート(授業の終わりに学生がコメントや質問を書いて提出する半ページの紙)を使った教員・学生間の対話文化が存在していて、学生が教員により良い授業の方法に気付かせる傾向があります。オンライン授業の春学期は、この対話の文化が役に立ったと思われます。具体的には、学生たちが一緒にオンライン授業を作ろうという意識を持っていて、様々な提案を教員にしています。したがって、学生は教員任せでなく、建設的にオンライン授業のことを考えています。また、オンライン授業に奮闘する教員に感謝の念を表明する学生が多いこともわかってきました。当然のことながら、学生が表す感謝の言葉は教員を鼓舞して、より一層質の高いオンライン授業を提供する努力につながっています。このように、ICUの対話文化が、オンライン授業においても好循環を形成していると思います。

ICUは 、コロナ禍の中で、以上の通りオンライン授業を導入し、全教職員の協力の下で実施することができました。危機管理に係る的確な判断が求められる中、今後もガイドラインを設定し、最良の教育環境を提供し続けたいと考えています。ICUは、学生・教職員一人ひとりを大切にする大学です。学部長としてこの価値を見失うことなく、学生を育てていきたいと考えています。

ICUのオンライン授業は「対話」を止めません

動画のご案内(各約1~2分)


石生 義人 プロフィール

1991年 ベイラー大学大学院にて社会学修士号(M.A.)取得、1995年 ミネソタ大学大学院にて社会学博士号(Ph.D.)取得。政治社会学を専門とし、アメリカ人の愛国心・政治意識を研究。サービスラーニング・センター長、社会学・人類学デパートメント長、大学院公共政策・社会研究専攻主任などを経て2020年4月から教養学部長。


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