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2012年 春季入学式 日比谷潤子学長式辞

公開日:2012年4月3日

「多く与えられた者からは多く求められ、多く任された者からは更に多く要求されるのである。」(ルカ12章48節b)

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。デイッフェンドルファー記念館で、この式の模様をご覧になっているご家族の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

私は一昨日、4月1日付で本学の学長になりました。ですから、学長としてはみなさん同様、1年生です。就任は1度きりなので、この学年のことは、共に新しいスタートをきった同級生として、末永く記憶にとどめることになるだろうと思います。

さて、私が本当のICU 1年生、つまり初めてこの大学に籍を置くようになったのは、今からちょうど10年前、2002年の4月でした。最初の年度は、当然のことながら、未知との 遭遇の連続でしたが、その中でとりわけ強く印象に残っているのは、年が明け、2月初旬に行われた一般入試の説明会です。試験監督にあたって注意すべきこと について説明を聞きました。その冒頭で、「受験生はICUにとって大切なゲストです。」と言われたのです。私はそれまで15年間、別の大学に勤めていまし た。どの大学でも入学試験の前には、さまざまな説明や注意を受けますが、この「受験生は大切なゲスト」ということばには、実に新鮮な響きがありました。さ らに続けて、「特に、不合格となる人にとっては、この日がICUとの最初で最後の接点になるかもしれない。このことを忘れず、受験生全員がそれぞれの力を 最大限に発揮できるよう、十分な配慮をもって監督に臨むように。」とも言われました。

このような説明は、毎年、変わることなく行われています。現在のICUには、特別入学選考、指定校推薦入学試験等合計7種類の選考があり ますが、志願者一人ひとりを大学の大切なゲストとして迎えるという考え方は、すべての選考方式に共通しています。今、このチャペルに集まっているみなさん もまた、ICUの大切なゲストだったわけです。しかしながら、この入学式を区切りに、もうゲスト、お客さんではありません。今日からは、学生として大学に 主体的に関わり、その未来を私ども教職員と一緒に作っていく仲間、つまり国際基督教大学という共同体の構成員です。

ICUは国際協力の下、1953年に献学されました。したがって、来年、みなさんが2年生の年に60周年を迎えます。この60年間、私どもは人類の平和と共存に実践的に貢献できる人材を育成してきました。

先ほど、一般入試前の説明では、不合格となる人への配慮について特別に言及すると言いましたが、今日、この入学式を迎えられなかったのは、みなさんと一緒 に試験は受けたものの、残念ながら失敗に終わった受験生だけではありません。ICUで学ぶことを切望し、その能力も十分に持ちながら、経済的な困難等、自 分の力ではどうすることもできない事情で進学を諦めざるを得ず、受験すらできなかった人もいるでしょう。さらに広く世界に目を向ければ、大学はおろか、小 学校さえ満足に行けない人々がたくさんいることを、決して忘れてはなりません。

このような現状は、国連総会決議により1948年に採択された世界人権宣言の精神に反するものです。みなさんには、先月の初めに、この宣言と学則を送っ て、入学式までに読んでおくようにお伝えしました。これから行われる「学生宣誓」では、この世界人権宣言の原則に立ち、それに従って大学生活を送ることを 誓約します。入学式に先立って行われたリハーサルで、学生部長の清水勇二先生から、学生宣誓の歴史や意味について説明を受けたと思いますが、この宣誓に よって、みなさんは名実ともにICUの構成員となるのです。

この大学の構成員になるにあたって宣誓するのは、学生だけではありません。私ども教員も就任に際して、この大学がキリスト教の信仰に基づき、世界人権宣言 を重んじること、世界の平和と正義に貢献する指導者の養成を目的として設立されたことを確認し、この目的を達成するために、教育と学問に献身することを誓 います。私も10年前にいたしました。

世界人権宣言の第1条には、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」と謳われています。先ほども言っ たように、大学教育を受けられるのは、大きな恵みです。この機会を無駄にせず、ICUでの勉学や課外活動をとおして、すべての人が恐怖や欠乏に苦しむこと なく生きられる世界を実現するには何をすればいいか、よく考えてください。そのために果たすべき役割は、人によって異なるでしょう。私たちは一人ひとり、 みな違います。神がそれぞれに、他の人とは異なる「賜物」を与えてくださったからです。自分の賜物は何か、これを意識することにより、自らに与えられた使 命を自覚できるようになります。これからの4年間(大学院博士前期課程・後期課程のみなさんは2年間/3年間)は、この使命を見出すための期間です。

世界人権宣言第1条にはまた、「人間は理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」とも記されています。これから 始まるICUでの生活では、多様な人々に会うでしょう。さまざまな出会いの中から、自分とは異なる他者を理解し、それによってあらためて自己を認識し、さ らに他者とのつながりを深めていってください。この大学には、自己と他者の支え合いを通じて、「互いに同胞の精神をもって行動する」経験を積む機会が、た くさんあるはずです。

初めに私は、「ご入学おめでとうございます」と申し上げました。これは、試験に合格したことや今日入学式を迎えたことに対するお祝いではありません。既に 「多く与えられ」、やがて「多く任された者」となる、その第一歩を踏み出したことへの祝福です。「多く求められ」、「更に多く要求される」時に備えて、こ のICUでの一日一日を、どうぞ大切に過ごして下さい。特別な恵みを与えられたみなさんに、あらためて言います。入学、おめでとう。

学長 日比谷潤子

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