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日比谷潤子学長 就任のことば

公開日:2012年4月6日

聖書朗読箇所:

「あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。むしろ自分のため、虫も 食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。あなたの宝のある所には、心もあるからである。」(マタイ 第6章19~21節)

本日は、大勢の方々にお越しいただき、ありがとうございます。

3日前の入学式でも申しましたが、私は2002年の4月、当時の語学科に着任いたしました。その時の絹川正吉学長は第8代、次の鈴木典比古学長に続き、本学10人目の学長を拝命したところです。

お気づきのとおり、今日は受難日です。この就任式の日取りは、新入生オリエンテーションのスケジュールを眺めつつ、プログラムが何も入っていないところを 選んで決めましたが、実はその段階では曜日にまで細かく注意を払っていなかったため、受難日にあたることに気付いたのは、しばらく経ってからでした。関係 者の中には、日程を再考した方がよいのではないかとご親切にご助言下さった方もありましたが、他ならぬこの日に就任式を迎えたことは、大学にとっても、私 にとっても、深い意味があると感じております。その理由は2つございます。

第1に、私どもの行く手には、幾多の困難が待ち受けていると思われます。しかしながら、ICUの構成員、就中、学長には、ためらわずに自分の十字架を負う ことが求められています。第2次世界大戦への深い反省からこの大学が献学された時、湯浅八郎初代学長をはじめとする先人は、「永遠に未完成の大学」とし て、「明日の大学」を目指すことを宣言しました。絶えず自己を凝視し、点検・評価・決断・実行を繰り返さなければ、この姿勢を貫くことはできません。第2 代から第9代までの学長もまた、深く祈りつつ、それぞれの任期中の課題に全力で取り組んでいらしたことと思います。人類の平和と共存に実践的に貢献できる 人材を育成するという設立の目的を、さらに高い次元で達成するためであれば、負うべき十字架は喜んで負う、このような志を抱く共同体を目指します。ICU で学び働く者の平安は、苦難の中にこそあります。

第2に、十字架は私どもの希望です。先ほど、賛美歌142の2番でも、「十字架のほかには ほこりは あらざれ」と歌いました。今日、十字架の上で起こる のは、滅びではなく、救いのための出来事です。4番では、「めぐみとかなしみ ひとつにとけあい、いばらはまばゆき かむりとかがやく」と声を合わせまし たが、十字架なしに栄光に至ることはありません。ICUに連なるすべての方々とともに、常に復活の日の喜びを思いつつ、祈り、また感謝の気持ちをもって、 これからの任務を遂行する所存です。

本日の就任挨拶では、私が描く大学像、このような大学にしていきたいという思いを、3点、お話しします。

あらためて申すまでもなく、本学はキリストの福音によって立つ大学です。1人ひとりを大切にするという本学のよき伝統は、我々が皆等しく神の子であるとい うキリスト教の本質の具現化に他なりません。ICUはどのような大学ですか、と問われたら、私は一番に、「1人ひとりの可能性を最大限に引き出す大学」と 答えたい。人間は誰しも、神から、その人だけの特別な賜物を与えられています。自分が授かったものは何か、まず、これに気づくことが大切です。例年、卒業 式の日の午後に、FOI学術奨励賞の授与式を行っています。今年も2週間前にありました。受賞者の挨拶を聞くと、専修分野も卒業論文・修士論文の内容も進 路も実に多様ですが、全員が自分の受け取ったものを意識し、この自覚に導かれて本学での生活を送ったことが、よく分かります。教職員のつとめは、学生が授 かったものに気づき、それを育て、伸ばしていく過程を支援することです。私ども教職員自身も、かつて、どこかの時点で、自分が神から何を受け取ったのかを 考える時を持ち、その結果、現在ここにいるのだと思います。各自の賜物を生かして互いに仕えることが、この大学に勤める者の基本です。しかしながら、日々 の業務に追われ、この基本がおろそかになっている時が、もちろん私自身を含め、ないとは言えません。構成員が持つ可能性を、その立場や年齢にかかわらず、 引き出す大学、ICUをこのような場所にすることが、私の第1の目標です。

次に、最初の項目と密接に関連しますが、「それぞれが自らの使命を見出せる大学」をつくりたいと思います。入学式では、新入生のみなさんに対して、自分の 賜物が何かを意識することによって、果たすべき役割を自覚できるようになること、この大学で過ごす数年間は、与えられた使命を見出すための期間であるこ と、の2点を強調しました。最近、キャリア教育ということばをよく聞きます。言うまでもなく、これは就職活動のことではありません。キャリアとは、社会の 中で、職業を通じて、自分の役割を果たすことでしょう。ICUは、国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成することを目的 として設立された大学です。仕事をする目的は人それぞれでしょうが、本学の学生には在学中に、与えられた賜物に気づき、それを自分自身のためではなく、他 者のため社会のために最大限に生かす道を、ぜひ選んでほしいと願っています。このような選択をするには、強い使命感を持つことが重要です。本学は長年にわ たって、自分の使命を見出すプロセスを促すようなカリキュラムや各種プログラムを提供してきました。これらはICUの特長、強みです。今後もさらなる充実 を図っていきたいと考えています。

3つ目として、初めにも申し上げたように、ICUは常に「明日の大学」を目指してきました。このモットーを堅持し、「理想を求めて成長し続ける大学」であ りたい。着任して10年、この間、私なりに本学の理念や歴史を学んできました。ICUは、戦争直後の荒廃の中、未来を信じた無数の人々からの寄附によって 設立された大学です。このことは、ずっと語り継いでいかなければなりません。より高く、より深い理想の追求、これによってはじめて、「未完の大学」に希望 を託して下さった方々の祈りに応えることができます。

この就任式で宗務部長に朗読していただく箇所を選択するにあたっては、随分迷いました。聖書には、私の話の趣旨に合致するところが、いくらでもあるからで す。曜日に気づいてからは、受難日を念頭に置いて選ぶことも考えましたが、結局、マタイによる福音書から、一番好きなところに決めました。「天に宝をたく わえなさい」。神と人とに奉仕することによってささげられる宝は全部、天にたくわえられ、永遠になくなることはありません。神の栄光のため、私の持てるも のをすべて用いて、これからのつとめを果たしてまいります。

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