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2012年度春季卒業式 日比谷潤子学長式辞

公開日:2013年3月28日

教養学部卒業生、大学院博士前期課程、後期課程修了生のみなさん、おめでとうございます。ディッフェンドルファー記念館のスクリーンで、この式をご覧になっているご家族、ご親戚、ご友人の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

在学中に何度も読んだり聞いたりしたと思いますが、ICUはキリスト教の精神にもとづき、世界人権宣言のもと、平和を構築する地球市民としての教養と責任を身につけ、神と人とに奉仕する有為の人材を育成することを目的として、ちょうど60年前に献学された大学です。その実現のため、3つの使命、すなわち学問への使命、キリスト教への使命、国際性への使命を掲げてきました。みなさんは、そのICUから、たった今、学士/修士/博士の学位記を受け取ったのです。

教養学部ディプロマ・ポリシーをみると、学士の学位は、文理を超えた幅広い分野で所定の教育課程を修め、以下の5つの能力を身につけた者に対して授与されます。第1は、学問の基礎を固め、自発的学修者として主体的に計画を立てつつ、創造的に学んでいく能力、第2は、日英両語で学び、世界の人々と対話できる言語運用能力、第3は、自他に対する批判的思考力を基礎に、問題を発見し解決していく能力、第4は、文理を問わず多様な知識を統合し、実践の場で活用する能力、第5は、効果的な文章記述力とコミュニケーション力に基づく説明能力です。

修士の学位は、広い視野に立って深い学識を持ち、専攻分野における研究能力、またはこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を身につけた者に、さらに博士の学位は、専攻分野について自立して研究活動を行い、またはその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な研究能力およびその基礎となる豊かな学識を身につけた者に対して授与されます。

以上の能力を身につけたみなさんが、これから活動することになる知識基盤社会は、常に拡大し越境しています。このような時代にあって、「学部卒業/大学院修了と同時に学びは終わり」と考える人は、一人もいないでしょう。刻々と変化する世界の課題に応える人材となるには、自ら進んで学修を計画し、生涯にわたって学び続ける態度を持っていなければなりません。みなさんは、ICUで受けた訓練によって、自分自身の力で、創造的な学修の道筋をたてることができるようになったはずです。

今日、地球上のあらゆる人々は、強く結びつき、互いに学び合い、直接コミュニケーションをとっています。このような世界を生きていくには、母語以外に少なくとも1つ、できれば2つ、またはそれ以上の言語を習得しなければなりません。本学が60年間堅持してきた日英バイリンガリズムは、21世紀の教育が提供すべき重要な特質の一つです。みなさんがこれから社会に出て、働く場所のほとんどは、単一言語環境ではありません。そこでは、誰の母語でもない言語を用いて交渉する能力が求められるかもしれません。「世界の言語」で、日英両語に加え、3つ目、あるいは4つ目の言語を学んだ人もいるでしょう。ICUは日英バイリンガリズムを重視していますが、これからの世界で地球市民の一人として活躍するためには、それだけでは不十分です。在学中に機会がなかった人は、生涯にわたって学び続ける本学卒業生として、社会人となってから、ぜひ新たな言語に挑戦してください。今日、学位を授与された一人ひとりが、このキャンパスでの学び、課外活動、寮生活等を通して、背景の異なる人々が、互いを尊重しつつ共存すること、共通の目標に向かって進み、多様性を肯定する力を身につけたことを願います。

はじめにICUは60年前に献学されたと言いましたが、本学では開学当初から、「独立の思索能力と科学的批判力の涵養に努める」(「大学設置認可申請書」『大学の目的及び使命』1952)ことを、全教育課程にわたって教育目的の一つに掲げてきました。その達成のため、語学教育プログラムに始まり、卒業論文/修士・博士論文に至る過程のなかで、物事を多角的な視点から見つめ、それらを注意深く論理的・批判的に分析する能力の習得を求めています。みなさんは、このキャンパスで、あるいは留学先で、異質な他者との出会いを通してあらためて自己を認識し、自分と他者を新たな関係に位置づけ直すという体験をしたと思います。社会生活は、このような出会いの連続です。ICUでの経験を、これからの人生の土台としてください。

本学では、学生が教室の中だけでなく外で学ぶことを、積極的に奨励してきました。学修の場は、貴重な動植物や遺跡に恵まれたこのキャンパスから、サービス・ラーニングを行う異国の地にまで及びます。実践の現場に出ることによって、分野の垣根を超えることの重要性に気づいた人は少なくないでしょう。複数分野の交流と統合の能力を養うことは、リベラルアーツ教育の目標そのものです。

このような分野間の交流には、的確なコミュニケーション能力が欠かせません。とりわけ重要なのは、自分の見解や知識を、専門や背景が異なる人にもよく分かるように伝える力です。それには、相手の意見をよく聞き、その問いかけに適切に答えなければなりません。みなさんは、さまざまなコースでのディスカッションやグループワークを通して、その力を養ってきました。伝える力の重要な柱は、口頭表現力に加えて文章記述力です。語学教育プログラムや大学院論文作成法のコースで、初めてライティングの課題に取り組んだ時のことを覚えていますか。あの日から、卒業/修士・博士論文を提出するまで、みなさんはいくつのペーパーを書いたでしょうか。幅広い教養と深い専門性に基づいて自分自身の考えを構築しても、それを発信する力がなければ、地球市民として貢献することはできません。ICUで培ったアカデミック•ライティング能力、書き言葉による表現力は、どのような分野に進んでも、これからのキャリアの基礎となるでしょう。

このように、本学の卒業生/修了生はすばらしい能力を身につけています。これらの力を、どうか自分のためではなく、神と人とに奉仕するために用いてください。持てる力をよりよく使う道を見つけるのは、それほど簡単なことではありません。今日の式の冒頭では、マタイによる福音書第7章の7〜8節が読まれました。根気よく諦めずに、求め続け、捜し続け、門をたたき続けることによって、きっと一人ひとりに道が与えられます。みなさんの行く手に神の祝福が豊かにあることをお祈りしています。

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