NEWS

NEWS

2013年度春季入学式 日比谷潤子学長式辞

公開日:2013年4月5日

9cc040385b25ae2d559f6bdfbc9783d71.jpg

学長 日比谷 潤子

教養学部、大学院博士前期・後期課程新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。デイッフェンドルファー記念館で、この式をご覧になっているご家族の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

みなさんが今日入学したICUは、キリスト教の精神にもとづき、世界人権宣言のもと、平和を構築する地球市民としての教養と責任を身につけ、神と人とに奉仕する有為の人材を育成することを目的として、今からちょうど60年前の1953年に献学された大学です。

その頃、日本の4年制大学(学部)進学率は、約8%でした。この数字は、私が大学に入ったほぼ35年前には25%強、そして2009年には初めて50%を超えました。一方、大学院への進学率は、2000年にようやく10%に達し、その後も少しずつ増えています。このような時代に大学・大学院生活を始めるみなさんの中には、進学、特に学部に進むのは、ある程度当然と思っている人もいるかもしれません。しかし、現実には、このICUで、あるいは他の大学・大学院で学ぶことを切望し、その能力も十分にありながら、経済的な困難等、自分の力ではどうすることもできない事情で進学を諦めた人もいます。

さらに広く世界に目を向けてみましょう。みなさんは「ミレニアム開発目標(Millennium DevelopmentGoals: MDGs)」を知っていますか。これは、2000年に開催された国連ミレニアムサミットで出された「ミレニアム宣言」と、1990年代に主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、共通の枠組みとしてまとめたものです。2015年までに8つの具体的な目標を達成することを目指しています。

ゴール1は「極度の貧困と飢餓の撲滅」で、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」、「女性、若者を含むすべての人々の、完全かつ生産的な雇用、適切な雇用を達成する」、「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」という3つのターゲットが掲げられています。

これに続くゴール2は「普遍的な初等教育の達成」で、「2015年までにすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」ことが、具体的な目標です。ユネスコが毎年発行しているレポート(Education for All Global Monitoring Report)の2012年度版によると、2010年に学齢期で小学校に通っている子どもの割合は全世界で91%、低所得国で81%、サハラ以南のアフリカで77%でした。2015年は再来年に迫っていますが、この地球上でいまだに小学校にも通えない子どもは、10人に1人、その割合は、サハラ以南のアフリカではさらに悪く、4人に1人なのです。

みなさんはこれから、「学生宣誓」を行います。この「宣誓」では、1948年に国連総会決議により採択された世界人権宣言の原則に立ち、それに従って大学生活を送ることを誓約します。この宣言を、今日までに読んでおくようにお伝えしました。先ほど行われたリハーサルでは、学生部長の清水勇二先生から、学生宣誓の意味について説明を受けたと思います。60年前の4月、最初の入学式に出席した本学1期生も、みなさんと同じように、一人ひとり紹介され、誓約書に署名しました。以来、「学生宣誓」は毎年必ず行われています。東日本大震災によりやむなく入学式の式典を中止した2011年4月に入学した現3年生も、学生生活オリエンテーションのなかで、2つの会場に分かれて誓約しました。

世界人権宣言の第1条には、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」と謳われています。先ほども言ったように、世界には、大学はおろか、小学校さえ満足に行けない人々がたくさんいますが、このような現状は、この条項の精神に反するものです。大学や大学院で学ぶという大きな恵みを与えられたみなさんは、この特別な機会を無駄にせず、ICUでの勉学や課外活動をとおして、すべての人が恐怖や欠乏に苦しむことなく生きられる世界を実現するには何をすればいいか、よく考えてください。

「ミレニアム開発目標」には、既に述べた2つに加えて、「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」、「乳幼児死亡率の削減」、「妊産婦の健康の改善」、「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止」、「環境の持続可能性の確保」、「開発のためのグローバルなパートナーシップの推進」の6つのゴールが掲げられています。ICUでは、全教育課程を通して、物事を多角的な視点から見つめ、それらを注意深く論理的・批判的に分析する能力の習得が求められます。みなさんは、このような力を身に付け、地球市民として、ぜひこれらのゴールの達成に寄与してください。

世界人権宣言第1条にはまた、「人間は理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」とも記されています。みなさんはこれからこのキャンパスで、あるいは留学先で、さまざまな人々に会うでしょう。異質な他者との出会いの中で、あらためて自己を認識し、自分と他者を新たな関係に位置づけ直すという体験をするに違いありません。これらの出会いをとおして、「互いに同胞の精神をもって行動する」経験を積む機会が、ICUにはたくさんあるはずです。

先ほど私は「大学や大学院で学ぶことは大きな恵みだ」と言いました。今日の式の冒頭では、ルカによる福音書12章48節の一部が朗読されましたが、ここにいる一人ひとりは、既に多く与えられているのです。みなさんの先を歩んだ卒業生は、多く任された者となり、世界中で更に多くの要求に応えています。その後に続けるよう、ICUでの一日一日をどうぞ大切に過ごしてください。これからの数年間が実り多いものとなることを祈ります。ご入学おめでとう。

ページTOP