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池田理知子教養学部教授が日本コミュニケーション学会奨励賞(論文の部)を受賞

公開日:2013年9月17日

この度、日本コミュニケーション学会第43回年次大会において、本学の池田理知子教養学部教授(メディア・コミュニケーション文化、日本研究、ジェンダー・セクシュアリティ研究)が日本コミュニケーション学会奨励賞(論文の部)を受賞した。

■受賞論文

水俣病/水俣病事件を語り継ぐための模索―対話形式の語りの場の可能性―

1994年10月から、水俣市立水俣病資料館(熊本県水俣市)では「水俣病の苦しみに負けずたくましく生きることの尊さと、水俣病に対する認識を深めてもらうための、患者および患者家族から体験を直接聴講する」ための「語り部」の講話が行われている。今回の論文で、「対話形式」と呼ばれる講話の場から生まれる意味構築のプロセスを描写し、その講話の場が参加者全員が関与することによって豊かな「学びなおし」の場に変容する可能性を模索した。

池田教授は、狭義の「当事者」に戦争や公害といった「負の遺産」を語ることを担わせている現状を放置していては、いずれ記憶の継承という行為自体が成り立たなくなることを指摘し、そうした事態を回避するためには、その問題に関わる一人ひとりが「当事者性」を育んでいくことが重要である、と考えている。講話の場においては、その場に参加する者すべてが自分の問題としてそのことを捉えられるかどうかが試されることになる。「語り部」そのものに焦点をあてるのではなく、それを補佐する役を担うとされている「語り部補助」と講話に参加する聴衆を含めた関係性に着目した今回の研究では、三者がつくり出す場に「当事者性」獲得の可能性を見出したという。

池田教授に、今回の受賞について話を聞いた。

―― どのようなきっかけで、今回の論文を書いたのですか

これまでも、狭い意味での公害の「当事者」ではない人たちが語ることとはどういうことなのか、「当事者性」を育むとはどういったことなのかについて研究していました。今回の論文は、その延長線上にあるものです。対話形式の講話を聴くなかで、「語り部」だけが主役であるという「思い込み」があるのではないか、「語り部補助」の方や参加者も「主役」になりえるのではないか、あるいは誰が主役かなどあらかじめ考える必要はないのではないか、といった疑問がわいてきたことが、今回の研究の始まりでした。

―― 受賞されたお気持ちはいかがですか。また今後は、どのような研究を続けるのですか

当初、投稿の締め切り直前まで手直しを重ねており、まだ書ききれていないところがあるような気がして、投稿を断念しようかとも思ったほどです。しかし、査読者からの意見を聞いてみたいという思いもあり、ギリギリのところで提出を決意しました。掲載決定後に、推敲を重ねていくなかで新たに気づかされた部分もあり、こうした経緯を考えると、今回の受賞は本当にうれしく思います。

水俣病資料館が力をいれていることの一つとして人権教育がありますが、講話に参加するうちに、これまでの人権教育の限界が見えてきたような気がします。それらを明らかにし、これから考えていかなければならない課題とは何かについて研究していきたいと思っています。

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