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2014年春季入学式 日比谷潤子学長 式辞

公開日:2014年4月2日

教養学部、大学院博士前期・後期課程新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。デイッフェンドルファー記念館で、この式をご覧になっているご家族の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

みなさんが今日入学した国際基督教大学(ICU)は、日本で初めて大学名に「国際」を冠し、1953年に献学されました。以来60年にわたり、国際的教養と社会人としての良識とを有する指導的人材の養成を目指しています。ICUには開学当初から、世界各地で生まれ育ち、異なる文化的背景を持つ学生と教職員が集まって、多様性に富んだコミュニティを形成してきました。みなさんはこれからこのキャンパスで、さまざまな人に会うでしょう。自分とは異なる他者との出会いの中で、あらためて自己を認識し、自分と他者を新たな関係に位置づけ直すという体験をするに違いありません。さらに、本学学生となったみなさんには、在学中に世界各国の高等教育の場で学ぶ機会も与えられます。

現在ICUでは、夏休み中の3週間、香港の大学で集中的に授業を履修するものから、世界21か国66大学との協定による1年間の交換留学まで、さまざまな海外留学プログラムを提供しています。これらをすべて合計すると、年間の派遣学生数は約460名です。留学プログラムに参加すると、授業に出て、ディスカッションを行い、試験やレポートで成績評価を受けます。こうして取得した単位は、所定の審査を経て、ICUの単位として認定されます。今日ここに集まっているみなさんの中には、入学前から、今私が説明したような情報を収集し、既に具体的な留学の計画を立てている人もいるかもしれません。

学生時代に海外に出て学修するのは、何のためでしょうか。外国語の運用能力を高めたい、異文化を体験したい、見聞を広めたい、専門分野の学びを深めたい等々、いろいろな動機があるかと思います。中には、就職に有利だから、と考えている人もいるのではないかと推察します。

私は昨年の秋、本学からの交換留学生として、米国のある大学で学んでいる学生からメールを受け取りました。海外滞在は、この交換留学が生まれて初めて、という学生です。9月に新学期が始まり、1か月経過した時点で様子を知らせてくれたのです。そのメールは、留学先で多くの人と交わることによって、日々いろいろなことを考え、ひと月前とは違う自分を発見すると同時に、変わらない自分も再確認しているとの感想から始まっていました。これはまさに、先ほどお話しした「自分とは異なる他者との出会いの中で、あらためて自己を認識し、自分と他者を新たな関係に位置づけ直すという体験」と言えるでしょう。

さらに続けて、初めて大学生であることの幸いを認識したとも書いてありました。一緒に授業を履修している学生の中には、軍隊生活を終えてから入学した人、経済的な理由からかなりの年齢になって大学生になった人、人種間の抗争で親友を失った人、入学前にアフリカでHIV/エイズに苦しむ子どもたちのために働いていた人等がいるとのこと。高校を卒業してすぐ大学に進学するのは当たり前と考え、幸い第一志望だったICUに入れたので、大喜びで学業に課外活動に充実した毎日を送っていたけれども、日本にいた時の自分には想像もできなかった経験を持つ学生とともに学ぶようになって、大学で学べることがどれほど恵まれているか、強く感じる毎日だと記されていました。私はこのような気付きこそ、留学の最大の収穫だと考えます。もちろん、大学に入るだけでも環境が変わるので、これから毎日新しい発見はあるでしょうが、海外に滞在して、それまでの常識が根底から覆される体験をすると、当然だと思っていたことが当然ではなくなります。

ところで、みなさんは「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」を知っていますか。これは、2000年に開催された国連ミレニアムサミットで出された「ミレニアム宣言」と、1990年代に主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、共通の枠組みとしてまとめたものです。2015年を達成期限として、8つの具体的な目標が掲げられています。その2つ目に挙がっているのが、「初等教育の完全普及の達成」です。このゴールのターゲットは、「2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」ことで、指標として「初等教育における純就学率」、「第1学年に就学した生徒のうち初等教育の最終学年まで到達する生徒の割合」、「15〜24歳の男女の識字率」が設定されています。国連が発行している達成状況の進展度合いをまとめた報告書を見ると、2010年に学齢期で小学校に通っている子どもの割合は、先進国では97%でしたが、サハラ以南のアフリカでは76%でした。この数字は、1999年には58%、2004年には68%だったので、かなり改善されてきてはいますが、依然として世界には、大学教育はおろか、この地域のように、初等教育すら満足に受けられない子どもが4人に1人もいるのです。

交換留学中のICU生が気付いたとおり、大学や大学院で学ぶことは、大きな恵みです。今日ここに集められた一人ひとりは、既に十分に「多く与えられ」ているのです。「多く求められ」、「多く任された者となって更に多く要求される」時に備えて、今日から始まるこの大学での日々を、決して無駄にすることなく過ごしてください。本学での生活が実り多いものとなることをお祈りしています。ご入学おめでとう。

2014年4月3日
学長 日比谷潤子

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