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2017年春季卒業式 日比谷潤子学長 式辞

公開日:2017年3月24日

教養学部卒業生、大学院博士前期課程、後期課程修了のみなさん、おめでとうございます。ディッフェンドルファー記念館のスクリーンで、この式をご覧になっているご家族、ご親戚、ご友人の方々にも、お祝いを申し上げます。

昨年の12月17日、国際基督教大学は日本の国連加盟60周年を記念して、「持続可能な開発目標達成に向けたアクション対話」を開催しました。本日の卒業生・修了生の中にも、この催しに参加した人がいるかもしれません。その目的は、2015年9月に国連総会で採択された持続可能な開発目標(以下SDGs: Sustainable Development Goals)を2030年までに達成するために、世界はどう変わるべきかを議論し、国連グローバル・コンパクトと大学がどのように貢献できるかを探ることでした。「国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、企業や団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組みです。」(http://ungcjn.org./gc/index/html)
SDGsは合計17ありますが、その中には、貧困や飢餓の撲滅といった途上国の課題に加えて、気候変動に対する緊急対策など途上国・先進国に共通するものも含まれています。教育もその一つで、「質の高い教育をみんなに」というスローガンのもと、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」ことを目標とし、2030年までに達成すべき「質の高い教育」の一つとして、「グローバル市民教育」を挙げています。

この12月の催しで私は、国連グローバル・コンパクトボードメンバー/グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事の有馬利男さんと、「責任あるグローバル市民を育む」をテーマに、トークセッションを行いました。有馬さんは、今からちょうど50年前、1967年のICU卒業生です。

セッションではさまざまなことが話題になりましたが、その中から、今日このICUを巣立っていくみなさんには、有馬さんに深い影響を与えた学生時代のエピソードをご紹介します。ある時、有馬さんは、西洋古典学・新約聖書学の教授、神田盾夫先生から「君の夢は何だね」と訊かれたそうです。みなさんなら、何と答えますか。当時の有馬さんの答えは、「海外で働いて豊かな生活をしたい」でした。神田先生に「けちな夢だね」と反応されたことをきっかけに、けちではない夢とは何かを考え続けたのが、これまでの人生だったそうです。「神田先生の真意は何だったとお考えか」との私の質問に対して、有馬さんは、「人の役に立つ仕事という意味だったのではないか」とおっしゃいました。

2030年までの達成を目指すSDGsの合言葉は、「誰も置き去りにしない」。実現にはすべての国と地域、すべての人による行動が必要です。それに向けた活動は、世界各地で既に始まっており、私たち全員が、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに、自発的、積極的に取り組むことを求められています。私がこのことを具体的に実感したのは、「アクション対話」からほぼ1ヶ月後に出席した、科学技術振興機構ダイバーシティアドバイザリー委員会でした。この委員会は、「様々な経験と考えを持つ多くの人と協力しながら、様々な問題に柔軟に対応して新しい未来を切り拓く」ことを目指していますが(http://www.jst.go.jp/diversity/message/shitsutyo.html)、私たちは、SDGsが掲げる17の目標を、ダイバーシティの観点から一つひとつ見直した資料を見ながら、さらに野心的な取り組みを始めるにはどうしたらいいかを、議論しました。

みなさんは、今日、このキャンパスでの生活を終え、広い世界に飛び立っていきます。国際基督教大学の卒業生として、どこにいても、社会の良き一員として行動し、けちでない夢、つまり人の役に立つ仕事とは何か、を追い求め続けてください。半世紀前に、みなさん同様、このチャペルで卒業証書を受け取った有馬さんは、その後、富士ゼロックス株式会社に入社、それから35年後の2002年に代表取締役社長に就任なさいましたが、今、神田先生のお言葉を思い起こして、国連グローバル・コンパクトでSDGsの達成に向けた活動を推進していることで、少しは人の役に立っているのかもしれないとおっしゃっていました。

SDGsの内容は、これまでに言及した項目に加え、健康と福祉、エネルギーへのアクセス、レジリエントなインフラの整備、不平等の是正、生物多様性、平和と公正など、極めて多岐にわたっています。みなさんの進路はさまざまですが、これからどのような道に進んだとしても、これらの中に、職業人として、また一人の市民として、人の役に立つ仕事をするヒントがあるはずです。それが何であるか、すぐには分からないかもしれません。あるいは、本当にこれでいいのだろうかと、自ら選択した道に迷いが生じる日がくるかもしれません。そのような時には、今日の式の最初に朗読されたマタイによる福音書第7章の第7節と第8節を思い出すことをお勧めします。必ず、求めれば与えられ、捜せば見いだし、門をたたけばあけてもらえるでしょう。有馬さん同様、本学卒業・修了から半世紀経った時に、人の役に立っていることを実感できるような人生を歩んでいってください。

みなさんの行く手に神の豊かな祝福があることをお祈りしています。

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