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2017年度春季入学式 日比谷潤子学長 式辞

公開日:2017年4月3日

教養学部、大学院博士前期課程、後期課程新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。ディッフェンドルファー記念館のスクリーンでこの式の様子をご覧になっているご家族、ご親戚、ご友人の方々にも、心よりお祝いを申し上げます。

みなさんが今日入学した国際基督教大学が正式に創立されたのは、1949年6月15日。この日、日本と北米のキリスト教界の指導者が静岡県御殿場のYMCA東山荘に集まり、大学組織協議会を開催しました。この会議において、理事会および評議員会が公式に組織され、大学設立の基本方針が採択され、教育計画の原則が決定されましたが、その実現に至るまでには、第二次世界大戦終結直後の1945年秋に始まった関係者による精力的な計画立案の作業がありました。

みなさんがこれから学び、課外活動を行い、また寮生にとっては日々の生活の場ともなるこのキャンパス用地の購入、および大学開設に必要だった資金は、当時、太平洋の両側で始まった募金活動によって集められたものです。

アメリカ側では、キリスト教諸教会、その外国宣教部、その他の方々の地道な協力がありました。一方日本側では、その頃日本銀行の総裁であった一万田尚登氏が後援会長となり、政界・財界・学界をあげて未曾有の募金運動が展開されました。その呼びかけに応えたのは、各界のいわゆる指導者だけではありません。戦後、貧しくきびしい生活をおくっていた多くの一般の方々から、それにもかかわらず、浄財をいただきました。記録によれば、小学生は飴玉を我慢して10円、20円を捧げ、他の大学に通う学生数名はアルバイト収入から100円ずつ寄附して下さったそうです。その結果、1950年7月20日には当初の目標だった一億五千万円を達成、翌年夏には、募金総額は一億六千万円と発表されました。本学はこの資金を、ここ三鷹のキャンパス用地の購入に充て、1953年4月には1期生を迎えています。先ほど、新入生のみなさんを一人ひとり紹介しましたが、これは64年前に最初の学生を迎えた時から今日まで、変わることなく続けられてきました。

教派を超えたキリスト教大学創設のために日本で寄附して下さった方々は、みなキリスト教徒だったのでしょうか。そうではありません。全国からの寄附者の実に95%は、非キリスト教徒でした。それでも戦後の荒廃のなか、「国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資する」という新しい大学の目的に賛同し、期待とともにその創設に協力したいと考えて、寄附をして下さったのです。この式の冒頭で読まれた『受けるよりは与える方が、さいわいである』という主イエスの言葉を、これらのキリスト教徒ではなかった方々が知っていたかどうかは分かりませんが、その行為はこの言葉そのものであり、受けることではなく、与えることこそさいわいだと思っていなければ、決してなされなかったと言えるでしょう。残念ながら、この逆、つまり与えることよりも受けることの方がさいわいだと考えている人々は、少なくありません。人から何かを受け取って嬉しいと思うのは、もちろん自然な感情ですが、私たちに本当の喜びをもたらすのは、むしろ与えることではないでしょうか。本日の聖書朗読箇所は、一人ひとりがそれぞれ自分に課せられた務めを忠実に果たし、報いを望まず、惜しみなく与えよと説いています。

みなさんはこの後、「学生宣誓」を行います。これも最初の入学式から、途切れることなく続いてきました。宣誓では、国連総会決議により1948年に採択された世界人権宣言の原則に立ち、それに従ってこれからの大学生活を送ることを誓約します。世界人権宣言の第1条には、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」と記されています。しかし、現実の世界を見ると、社会は対立や敵意に満ちており、人間は理性と良心とを授けられているはずですが、互いに同胞の精神を持って行動しているとは言い難い状況です。

今日はご入学にあたり、国際基督教大学が多数の方々の無償の善意によって建てられたことをお話ししましたが、このような大学に入ったみなさんには、本学創設に協力して下さった方々の大きな期待と深い祈りに、十二分に応えていくことが求められています。これからの数年間は、世界人権宣言第1条に謳われているような、あらゆる人の尊厳と権利が尊重され、人間が互いに同胞の精神をもって行動する世界を作るために、自分には何ができるかをじっくり考える時期です。「与える方が、さいわいである」ことを忘れず、このキャンパスでの学び、課外活動、友人や教職員との交わりの中から、一人ひとり自らに課せられた務めを見つけていって下さい。実り多い学生生活となることを、お祈りしています。

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