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メールマガジン Message from ICU, No.7 「ICUの一般教育について」

公開日:2021年7月9日

ICUの教育は全学的なリベラルアーツ教育が特長です。リベラルアーツとは、専門領域の壁を超えて学際的な知識を育み、幅広い知識に裏打ちされた創造的発想力や人間性の発達、人格の成熟を目指す教育です。技術修得や資格取得のためではなく、人生をより良く、より豊かに生き、地球市民として活躍するための教育です。

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Message from ICU , No.7(2021年7月9日発行) 

ICUの一般教育について

教養学部副部長(カリキュラム担当) 生駒夏美

リベラルアーツの核としての一般教育
2020ml_no7_img01.jpgICUの教育は全学的なリベラルアーツ教育が特長です。リベラルアーツとは、専門領域の壁を超えて学際的な知識を育み、幅広い知識に裏打ちされた創造的発想力や人間性の発達、人格の成熟を目指す教育です。技術修得や資格取得のためではなく、人生をより良く、より豊かに生き、地球市民として活躍するための教育です。現代社会において起きている問題の多くが地球規模です。環境問題、人種間の対立、貧困問題、ジェンダー差別など、社会が抱える問題は複雑化し、一つの学問的アプローチで解決することは難しいでしょう。ですから、領域を超えて複数のアプローチ、様々な価値観から、問題を俯瞰的に観察できる人材を育てるリベラルアーツ教育が必要なのです。

2020ml_no7_img01.jpg学際性を育むリベラルアーツという言葉は近年でこそ複数の大学で取り入れられ、耳馴染みのあるものになっているかと思います。本来は全学的に展開してこそのリベラルアーツ教育ですが、他大学では一部の学部や学科で取り入れられているケースがほとんどで、ICUのように本来のリベラルアーツの理想に沿って全学的に展開されているケースはまだまだ少ないと思います。ICUではすべての学生が文理の枠を超えてバイリンガルで学び、幅広い知識を得た後で専門性を深め、それをさらに広く応用するという方針を採っています。

現代社会において地球規模で起こっている様々な問題に取り組む力を身につける、そのようなリベラルアーツ教育の核となっているのが一般教育プログラムです。専門領域の学習の前段階に位置づけられた「一般教養」とは異なり、ICUにおいて一般教育プログラムは必修で、卒業までに取得すべき単位数が決められていて、1年生から卒業を控えた学年まで、学生生活を通じて履修することが勧められています。内容的にも、初歩あるいは初級とは位置づけられない深さと広がりを持っています。1年生が履修すると、その学問領域の発展性や未来を垣間見ることができるでしょうし、4年生が履修すると、自らの学んできたことを総合してどのような研究が可能かつかむことができます。

 

面白い「ジェネエド」
一般教育プログラムは通称「ジェネエド」(General Education)と呼ばれて親しまれています。そこで提供される授業は、メジャー1)の内容にとどまらず、広く社会に関連づけられる内容であったり、他の分野との複合的な内容であったり、各教員の創意工夫によって独創的な内容となっています。卒業生からはICUの授業で印象的だったものとして、しばしばジェネエドが挙げられるのですが、それほど特長的な授業だと言えるでしょう。例えば過去には「自転車」をテーマとしたジェネエドがありました。自転車の歴史や文化など、様々な観点から思考するという授業です。

2020ml_no7_img03.jpg私が開講している「文学の世界(ジェンダー)」という授業では、古くから語り継がれている物語をいくつか取り上げて、原作と改作の比較や、変遷の背景となった歴史的な出来事、世界情勢、また思想的な背景などを考察しています。文学や映画といったテクストを材料にしながら、文学以外の学問領域、たとえば社会学や歴史学、ジェンダー・セクシュアリティ研究などの知識を総動員します。文学研究について学ぶだけではなく、この授業を通して他の学問領域とも出会うことが可能です。ジェネエドを履修した学生たちからは、期待していたこと以上のことを知ることができた、好奇心を満たし、さらに刺激することができた、などの声が届いています。

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ICUの教育は少人数教育が特長ですが、一般教育プログラムの授業の定員は150名で、ICUのカリキュラムの中ではもっとも大きな授業です。これは卒業要件に一般教育の単位が含まれていることにも由来するものです。しかし大人数だからといって、ICUが大切にしている双方向のきめ細やかな教育が疎かにされることはありません。ディスカッションやグループワークなどを利用して、色々な分野を専攻する学生同士が授業内で出会い、異なる視点や考えを持ち寄って思考できるように工夫されています。メジャーの授業では出会わない学生や教員との出会いは、ICUの学生の考え方に幅を持たせ、また狭くなりがちな視野を広げる効果も持ちます。

新型コロナの影響でほとんどすべての一般教育の科目が現時点ではオンラインで開講2)されています。各教員、対面と同じ教育効果を担保するために創意工夫を凝らしています。未知なものや異質なものとの知的な出会いを、オンラインでも提供できるように努めています。

入学後、学際的な学びというもののイメージがつかめないという学生には、一般教育の授業を積極的に受講してもらいたいと思います。 ICUでは一般教育科目は、専門を教える専任教員が原則担当し、質の高い授業を目指しています。各教員がそれぞれの深い専門知識に裏打ちされた、応用的で発展的な授業を展開していて、こういう考え方もできるのか、こんな風に学問的な知識を使うこともできるのか、と思わせてくれる知的に面白い授業が揃っています。

 

2020ml_no7_img05.jpg人生のためになる「ジェネエド」
来年度からはさらなる文理の枠を超えることを目指して数理データに関する授業が一般教育の科目として増設される予定です。これらの授業では、文系の教員と理系の教員がタッグを組んで、データや数式が私たちの社会でどのように使われていて、どのような役に立つのか、といったことを学びます。データは日常的に目にするものですが、しっかりしたリテラシーがないと、ともすれば情報に操作されてしまいます。現代人の基礎的な能力として、データリテラシーは文理の別なく学ぶ必要があるでしょう。

このコースに限らず、ICUの一般教育プログラムは特定のメジャーのための学びではなく、大学卒業後の人生に役立つ学びの「視点」を提供するものです。ですから、これまで学んだことのない領域の授業や、苦手意識のあるトピックなどであっても、あるいはそのようなものだからこそ、ぜひICUでは積極的に履修してもらいたいと思います。思いもしなかった発見があって、その後の価値観が180度変わったり、人生の糧になるタネがそこにはあるでしょう。

メジャーの学びで専門性を深めながら、同時に一般教育の授業で広い視野を持つというICUの教育は、地球規模の問題に立ち向かう卒業生の生き方の指針となるでしょう。地球市民として世界的に活躍するICU卒業生の礎となっているのが、ICUのリベラルアーツ教育であり、その核である一般教育プログラムなのだと思います。

 

  1. 本学は、1学部1学科制をとっており、教養学部の中に31のメジャー(専修分野)がある。文学、物理学、心理学などの伝統的な学問分野と、「平和研究」「アメリカ研究」などの問題解決型や地域研究型といった様々な分野を網羅している。どの分野も、他大学の学部に相当する科目群を配し、専門を系統的に学ぶことができる。
    メジャー:https://www.icu.ac.jp/academics/undergraduate/major/
    4年間の学び:https://www.icu.ac.jp/academics/undergraduate/curriculum/

  2. コロナ感染症拡大防止の視点から、現在、受講者数が60名を超えるコースについては、オンラインで実施している。


教養学部副部長(カリキュラム担当) 生駒夏美
2002年ダラム大学博士号(Ph.D.)取得。国際基督教大学ジェンダー研究センター長、同文学研究デパートメント長を歴任。専門分野はジェンダー、ヨーロッパ文学、文学一般、日本文学、思想史。


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