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メールマガジン Message from ICU, No.5 「ICUの学修支援」

公開日:2021年1月19日

学修教育センター(Center for Teaching and Learning, CTL)は学生の学びを支援する部署で、図書館の中にあります。ICUの教育で書くこと(ライティング)は基本中の基本です。卒業論文は献学以来卒業要件になっています。そのためレポート(作文)課題を課す授業も多いです。CTLではライティングのサポートを提供しています。

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Message from ICU , No.5(2021年1月15日発行) 

ICUの学修支援

学修・教育センター長 小瀬 博之

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ICUに合う生徒
2020年度本学のオープンキャンパスはすべてオンラインでの開催になりました。ICUを志望校として考えている生徒さんにICUを肌で感じ取ってもらう機会がなかったことを非常に残念に感じています。一方で昨今急激に社会に浸透している遠隔会議システムのお陰で遠方にお住まいの方にICUを知って頂ける機会が生まれたことによるメリットは計り知れません。しかし、それでも真剣な眼差しの高校生にお目にかかれないのはやはり寂しいことでした。

2020ml_no5_img04.jpg私はこれまでオープンキャンパスでICUでの学びについて何度かお話しをしてきました。そこでよく冗談半分で、「オープンキャンパスで耳にする『美辞麗句』に騙されてはいけませんよ」と言ってきました。ICUには教育熱心な先生が多いです。熱意溢れるモデル授業を受けた生徒さんの多くがよいコメントを残してくれます。リベラルアーツ、少人数教育、バイリンガリズム、国際性、キリスト教主義などはICUの教育理念を語る上で重要なキーワードですが、これらに魅力を感じて頂けるのは光栄なことです。

もちろんモデル授業を含め大学の広報に偽りはありません。ですが、果たして自分が高等教育を受ける場としてICUは本当に相応しいのか?冷静に再考できる生徒さんは本学に合っていると私は考えます。「そもそも自分にとって大学教育は必要なのか」そこまで遡って、進学について考えたことってありますか。

 

学修支援が目指すもの
学修教育センター(Center for Teaching and Learning, CTL)は学生の学びを支援する部署で、図書館の中にあります。ICUの教育で書くこと(ライティング)は基本中の基本です。卒業論文は献学以来卒業要件になっています。そのためレポート(作文)課題を課す授業も多いです。CTLではライティングのサポートを提供しています。「何を書いてよいのかわからない」「うまく書けたつもりだけど、思ったほど良い成績が取れなかった」「文献の探し方が分からない」など、ライティングに関する学生の悩みが日々寄せられますが、主に大学院生チューターが一緒に頭を抱えて悩みを共有しながら相談に応じてくれます。

2020ml_no5_img03.jpgこのような支援は高校までの補習に近いのでイメージしやすいでしょう。しかし、ICUの学修支援が本当に目指しているのは、すべての学生が自発的に学ぶようになることです。具体的にはアカデミック・プランニング(履修計画)の支援です。ICUでは入学後にメジャー(専攻)を選択します。その際高校までに何を学んできたかはあまり関係がありません。日本では高校で理系文系に分けられてしまうことの弊害がしばしば批判されます。あまりに日常的に使われる言葉ですし、受験システムに構造的に組み込まれているため、文理の枠を越えて考えるとはどういうことか分かりにくくなっているのではないでしょうか。私は生物学メジャーの教員ですが、生物メジャーを選択する学生の中に高校まで文系だったという学生がいます。理由は様々ですが「生物に興味はあったけど、受験数学に自信がなかった。大学で生物の授業を取って改めて学びたいと思った。」という声も聞きます。生物以外でも入学前に考えていなかったメジャーで卒業する学生も珍しくありません。何か新しい学問的関心が芽生えたら、たとえメジャーを決めた後でも、自発的に果敢に挑戦してもらえるような環境を提供したい。それに気付いてもらうためにアカデミック・プランニングがあるのです。

 

キリスト教に基づく学修支援
今はコロナ禍でキャンパスに来る学生は少ないですが、CTLオフィスの目の前にラーニング・コモンズ(自由学修スペース)が広がっていることもあり、普段は学生の様子を文字通り見守っています。

CTLに持ちかけられる学生の相談内容は多岐に渡りますが、自分が悩みを抱えていることを知らずに立ち話から相談に変わっていくケースもあります。時に私たちは学生の問題の根深さに、ただ無力さを痛感します。それでも学生の声に耳を傾けることを大切にしているのは、語ることで気持ちが楽になったり、聞いてもらうことで何か新しいアイデアが浮かんでくるということだけではなく、必ずどこかに答えがあることを信じているからです。

2020ml_no5_img04.jpgリベラルアーツ教育では真理を求めて多角的、自主的に学ぶことが求められますが、そもそも真理は存在すると信じていなければリベラルアーツ教育は成立しないのではないでしょうか。「真理はあなたがたを自由にします」は有名な新約聖書の言葉です(ヨハネによる福音書8章32節)。グローバルな社会の問題も、学生一人一人の問題も、答えは直ぐには分からないかもしれないけれど、解が必ず存在するというキリスト教的な考え方は、コロナ禍のような個人の力ではどうにもならない大きな問題だけではなく、メジャー選択や将来のキャリアに関する個人的な悩みに至るまで、大きな動機、勇気、そして希望を与えるでしょう。

今の時代多様性が重んじられています。学生支援も必然多様な対応が求められていますが、それに応じて要する時間と手間は増えていきます。多様な特性、個性を持った学生を支援していくために、教育環境のユニバーサル・デザイン化を模索しています。すべての学生が心地よく暮らし、学べる場の構築が目標ですが、最後は個と個が交わる個別支援こそがICUの学修支援の根底にあります。

「あなたに書き送りたいことがたくさんありましたが、筆と墨でしたくありません。間もなくあなたに会いたいと思います。そして顔を合わせて話し合いましょう。」ヨハネの第3の手紙13,14節。

同じく新約聖書の言葉です。本当に伝えたいことは遠隔授業や電子メールではしたくない。コロナ禍で失われてしまった、対面での交流の大切さをICUは忘れてはならないと考えています。


2020ml_no5_img06.jpg小瀬 博之 プロフィール
1995年イリノイ大学アーバナ・シャンペン校で博士号(Ph.D.)取得。国立遺伝学研究所、徳島大学医学部附属動物実験施設を経て、2008年ICUに着任。2016年から教養学部副部長(学修支援担当)。2017年より学修・教育センター副センター長を経て2019年より同センター長。


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