NEWS

メールマガジン Message from ICU, No.6 「COVID-19の時代における国際性への使命と留学プログラム」

公開日:2021年3月17日

COVID-19の感染が深刻な様相を呈し始めた昨春、私を含む国際交流プログラムに関わる学内の多くの責任者は、変化する状況への対応に追われていました。「国際」を大学名に冠するだけでなく、真にグローバルな市民育成を設立当初からその使命として掲げるICUでも、短期的には全学生の安全確保、また、長期的には「国際性」のヴィジョンを維持し続けるという2つの課題の両立に直面していたのです。

人が人とのclose contactを避けなくてはならない。この異常な状況のなかでも、皆様とコンタクトを取り続けていきたい。そのような思いから、全国の中等教育に携わる先生方向けのメールマガジンを発行しています。なお、配信を希望される方は、以下よりお申込みください。

メールマガジン登録フォーム


Message from ICU , No.6(2021年3月17日発行) 

COVID-19の時代における国際性への使命と留学プログラム

国際学術交流副学長 ウィリアムズ・マーク

2020ml_no6_img01.jpgCOVID-19の感染が深刻な様相を呈し始めた昨春、私を含む国際交流プログラムに関わる学内の多くの責任者は、変化する状況への対応に追われていました。「国際」を大学名に冠するだけでなく、真にグローバルな市民育成を設立当初からその使命として掲げるICUでも、短期的には全学生の安全確保、また、長期的には「国際性」のヴィジョンを維持し続けるという2つの課題の両立に直面していたのです。

2020ml_no6_img02.jpg状況が悪化するにつれ、交換留学生全員が必要な情報を得て、そに基づいた適切な判断ができるよう配慮することは容易ではなくなりつつありました。当時は200名近いICU生を海外の提携先に派遣(他に個人で留学を手配した学生も数名存在)しており、一方で、2020年春には134名もの一学期及び一年本科生(海外からの留学生)をICUで受け入れることも決っていたのです。派遣・受入学生の多くはプログラム半ばで帰国を余儀なくされましたが、今は、それぞれ可能な限りオンラインで履修を継続し、単位編入もかなっている状況です。

2020ml_no6_img03.jpgしかし大学の使命でもある「国際性」を維持することは課題として残り、海外留学の機会を提供する方法を(たとえバーチャルでも)継続して模索してきました。一つの例としては、文部科学省に採択された東京外国語大学との5か年協働プロジェクト COIL (コイル、国際協働オンライン学習プログラム)があげられます。当初の計画は学生を中心とした協働プロジェクトをいくつか立ち上げ、ICU生がカリフォルニア大学提携校と南カリフォルニア大学の学生と特定の教育テーマのもとに連携しながら実施するというものでした。その成果が出始める頃、オンライン授業が主流となり、様々な方法を通じて、学生のグループに協働する機会をもたらすことができるようになってきました。これは、一人の教員が複数の学生グループに向け行う「共同授業」に限りません。こういった機運に乗じて発展させた取組としては、'Language buddies' (語学パートナー)プログラムという、80名以上のICU生が世界中の提携校の学生と組んで日本語と英語での交流機会や、ICUの「日英2言語+1言語」ポリシーに沿って日本語・英語に限らず、特定の言語での交流の場を希望する学生に提供する'Language table' (語学テーブル)プログラムも実施しています。現在、提携大学の教員がICUの授業で講義する機会を増やすことも計画中です。

他にも各国でのロックダウン以降、ICU生が日本で海外大学の授業の履修・単位取得を可能にする取組も二つの方法で実施しています。海外大学の本科生として日本に居ながらリモートで留学プログラムに参加する方法と、ICUの本科生として、本学の授業に加えて提携先大学が提供する授業をオンライン履修する方法です。後者については、パンデミックの初期にHong Kong Baptist UniversityがICU生に対し、オンライン履修で単位取得が可能なコース一覧を提供してくれたことがきっかけでした。ICUでも同じようなプログラムを構築中で、オンライン教育を最大限に活かす方法を模索しているところです。

2020ml_no6_img04.jpg

他にも現況に対応すべく、米国の大学に留学で籍を置いている日本人学生で留学先大学に戻れず、日本からのオンライン授業に不適応を起こしている他大学の学生にもICUの授業が履修できるようにしました。彼らの留学先の大学との交渉し、ICUで履修した単位を留学先大学への単位編入が認められ、学修が途切れることなく継続することを可能にしたのです。

パンデミックと向き合う中で私たちは考え方を変え、各種プログラムを新たな方法で提供していくことを迫られています。新たな挑戦や可能性を試みながら、ICUが創立時から掲げる国際性への使命にふさわしい教育を提供し続ける道を模索することは、海外のパートナー校と協働する絶好の機会であるとも捉えています。

「日英2言語+1言語」ポリシー:バイリンガル・リベラルアーツ教育の土台である日本語と英語の他、「世界の言語」(ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語、韓国語、アラビア語、イタリア語、インドネシア語)の9言語を通して、国際社会で必要とされる「日英2言語、プラス1言語」を習得した人材の育成を積極的に進めています。


国際学術交流副学長 ウィリアムズ・マーク プロフィール
オックスフォード大学卒業(日本研究)。1991年カリフォルニア大学バークレー校博士号(日本文学)取得。1988年から2017年までリーズ大学に在籍し、助教授、准教授、教授を務める。この間、2008年から2011年まで英国日本研究協会の会長、2011年から2014年まで国際教養大学学務副学長を歴任。2017年9月より国際基督教大学国際学術交流副学長。専門は日本文学。遠藤周作をはじめとする戦後のキリスト教の作家を研究。


メールマガジンバックナンバー