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世界人権デー特別講演・対談「緒方貞子先生が遺されたもの」

2020年12月16日
写真左:緒方先生と吉川教授(2014年撮影) <br>写真右:緒方先生の功績を語る読売新聞・大内佐紀氏

写真左:緒方先生と吉川教授(2014年撮影)
写真右:緒方先生の功績を語る読売新聞・大内佐紀氏

昨年10月に緒方貞子先生が逝去されてから一周年追悼イベントとして、2020年12月10日の世界人権デーに、「緒方貞子先生が遺されたもの」というテーマで、吉川元偉・特別招聘教授(元国連大使)による講演と大内佐紀・読売新聞社調査研究本部主任研究員(元ジュネーブ特派員)による対談が開催されました。

このイベントは、教養学部一般教育科目「国際関係ディベート」(担当:吉川元偉教授、毛利勝彦教授)の一環として在学生を対象に実施され、50名近くの学生が参加しました。

 

"La vida de los muertos está en la memoria de los vivos."
「亡き者の命は生きる者の記憶に留まる」という古代ギリシャの哲学者マルクス・トゥッリウス・キケロの言葉から講演が始まりました。緒方先生は、ICUや上智大学で教鞭をとられた後、在NY日本政府国連代表部公使、国連人権委員会日本代表、国連難民高等弁務官(UNHCR)、国際協力機構(JICA)理事長などを務められ、人道支援と開発支援のリーダーシップをとられました。ICUで緒方先生から外交史を学ばれた吉川教授は、緒方先生は「公への奉仕」の精神に基づいた強い責任感の持ち主であったと語るとともに、誰にでも物怖じせずに発言された緒方さんが初めてUNHCRとして国連安保理で演説された際の「人道問題に人道的解決はない」という言葉が強く印象に残っていると述べました。

読売新聞社ジュネーブ特派員として、緒方さんに同行取材をされた大内さんは、「コンセンサスは自然にできるものではない。リーダーシップがあって初めて生まれる」という言葉が最も印象に残っていると述べました。また、コソボ紛争の激戦地でのスタッフ・ミーティングで、多くの「できない、足りない」との声がある中で、「できないことじゃなくて、できることを教えて」と静かな口調でおっしゃった言葉が現場の空気を変えたというエピソードを披露されました。

こうした一連の緒方先生の行動、学術的な論理でエッセンスをまとめ上げ、現場での事実に裏付けられた発言で人々を説得することは、まさにディベートの授業で学ぶことです。

 

参加した学生からの感想

  • 今夏、難民の人権保護に関する模擬国連の活動で、NGOアクターの役割で参加しました。政策立案ベースの会議だったのですが、いつも「緒方さんだったらどのように考えるだろうか」と考えていました。今回の講演会でそう考え続けることが重要なのだと感じました。また、緒方さんの書籍も読み直します。

  • 恵まれた環境に生まれた者として人々を助け支えるノブレス・オブリージュの信念が強く現れた一例が、イラク国境を越えられずにいたクルド人支援だろう。彼らを支援するために「国内避難民」という言葉で国連を説得し、UNHCRの新しい任務として尽力された。
    *ノブレス・オブリージュ:「高貴なる者の使命」という意味

  • 緒方さんの足跡をたどり、「結婚や出産をしながら積む女性のキャリアは同じ歳の人が何をやっているかでなく、もっと長いスパンで何をやるかだ」という考え方を知ったのは大きな学びだった。

  • ユーゴスラビアでのお話を大内さんから聞き、やはり国連のお仕事はタフさが求められるのだと再認識しました。また、そのような状況の中でお洒落さを常に持ち続けられた緒方先生の姿を一度で良いから生で拝見したかったと感じました。今回の講演・対談をお聞きし、緒方貞子先生に対するイメージがガラリと変わりました。難民を扱うお仕事から、聖母的な「優しいお母さん」の印象を持っていたからです。彼女の語録はどれをとっても針のように本質を突くものばかりで、ディベートのクラスを通し私も少しでも彼女に近づけたらと感じました。