大学院 教育方針(3つのポリシー)

学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)

<博士前期課程>

博士前期課程では、学部における一般的並びに専門的教養の基礎の上に学術および応用を教授研究し、専攻で定める教育研究上の目的を踏まえた上で以下のような能力を身につけ、所定の教育課程を修了して学位論文の審査および最終審査に合格した者に修士の学位を授与する。

1.広い視野に立った精深な学識

2.専攻分野における研究能力

3.高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力

 

【専攻における教育研究上の目的】

心理・教育学専攻

教育にかかわる学問諸分野において、人類が平和的かつ創造的な営みのうちに共生するための教育的な諸条件を探求し、国の内外でその実現に向けて指導的な役割を果たす人材を養成する。

 

公共政策・社会研究専攻

学生が修了時に身につけるべき能力と知識 を、学位ごとに以下のように定める。

修士(行政学)
修士(行政学)では、政策学、法学、政治学、および関連する分野についての専門的知識を修得する。また、これらの分野の理論や応用を用いて政策や法を比較分析する能力や、社会における政治や法の規範的意義を明らかにする能力を修得する。

修士(国際関係学)
修士(国際関係学)では、国際関係学および関連する社会科学領域の理論と、現代の地球規模の課題への実践的な応用について、包括的に理解する能力を修得する。

修士(社会文化分析)
修士(社会文化分析)では、他の領域との関連も視野に入れながら、社会学と文化人類学の専門的知識を修得する。また、社会学と文化人類学の観点からの批判的分析力を修得する。

修士(メディアと言語)
修士(メディアと言語)では、社会科学の手法を用いてメディアと言語に関する高度な専門研究を行う能力を修得する。また、メディアと言語および周辺領域との関連も視野に入れた学際的研究を行う能力を修得する。

修士(公共経済学)
修士(公共経済学)では、経済学的、経営学的諸課題を包括的に理解し分析するための専門知識や理論を修得する。また、質的および量的分析に基づく専門的研究手法を修得する。

修士(平和研究)
修士(平和研究)では、グローバル、国内、そして日常レベルで平和の構築に貢献するために必要な能力を修得する。そのために、平和研究の理論的および方法論的な専門知識を修得する。

 

比較文化専攻

広義の文化の諸現象を、問題指向的な方法に基づき深く比較研究し、リベラルアーツの精神と高度の人文学の訓練とを結合した、未来への先見性と責任感とを備えた指導的な役割を果たす人材を養成する。

 

理学専攻

理学の学問的諸分野および関連分野の専門的訓練と研究を行うと共に、科学全体の文脈の中で専門分野を理解し、更には社会的文脈の中で科学そのものを位置づけることのできる指導的な役割を果たす人材を養成する。

 

<博士後期課程>

博士後期課程では、博士前期課程で身につけた学術の理論および応用についてその深奥を究め、文化の進展に寄与するために、以下のような能力を身につけ、所定の教育課程を修了して学位論文の審査および最終審査に合格した者に博士の学位を授与する。

1.研究分野について研究者として自立して研究活動を行う能力

2.専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力とその基盤となる豊かな学識

教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)

<博士前期課程>

博士前期課程では、ディプロマ・ポリシーを踏まえて、文理横断的で幅広く深い学識の涵養を図るべく以下のようにカリキュラムを編成する。

科目の履修については、大学院共通科目から1科目2単位以上、専攻の専門基礎科目から2科目4単位以上、専修の専門教育科目から4科目8単位以上、専攻の専門教育研究科目から3科目6単位以上、各専攻の専門基礎科目、専門教育科目および専門研究科目から3科目6単位以上、その他研究科内の科目から選択科目として2科目4単位以上、合計30単位を履修する。科目の履修とあわせて研究指導を受け、修士論文を提出する。

1. 専門性を深めつつ、豊かな学識を養うための複合的な履修ができる教育課程を編成する。

2. 基礎分野での専門性を維持しつつ、先端技術や新分野まで幅広い分野の開拓が可能な大学院教育を展開する。

3. 基礎科目、発展科目、研究方法に関する科目を系統的に編成し、合わせて学術論文の作成能力の形成および論文指導を行う。

4. 主として第1年次に科目履修、第2年次に修士論文作成を行う。

5. 指導教員は学期ごとに担当学生の学業成績の推移を把握し、修了要件を満たすよう状況に応じて適切に助言する。

6. 個別演習を通じて、研究主題を決定・深化できるように指導する。

 

【専攻における履修方法】

心理・教育学専攻

教育学専修では、教育の根底をなす人間観や世界観、途上国を含む世界各地の教育制度や教育問題、世界の学校における教育課程や教育法をめぐる根本的な課題を、国際比較の中で取り上げて構造的に分析し、将来に向けた教育施策の根本指針を探る。また、教育工学領域では、e-learningをはじめコンピュータ・視聴覚機器の教授学習過程への活用とその効果および遠隔教育について研究する。教育コミュニケーション領域では、対人コミュニケーションやマス・コミュニケーションの特徴と社会的機能および効果について研究する。教育社会学領域では、教育制度・学校・家族・コミュニティ・社会構造・文化状況の諸特徴と教育の構造・機能・意味および教育施策について研究する。教育研究における質的・量的研究技法についても学習する。

心理学専修では、リベラルアーツの理念に基づき、心理学を幅広い学問分野として捉えた研究および実践に役立つ人材の教育を行う。国際性・学際性に富む柔軟で厳格な実証的研究技法(実験法、調査法、観察法等)に根ざした教育・研究指導を行う。科学性と人間性の総合的視点に立脚する高度な研究を推進する。高度な専門職業人養成という社会的ニーズに対応すべく研究・実践を現場で遂行できる心理職を養成する。

言語教育専修では、英語教育および外国語としての日本語教育の理論と実践に関わる教育として、まずその基礎となる言語学、心理学、教育学における関連知識を学ぶ。さらにそれぞれの目標言語の言語学的知識を修めたのち、より具体的な学問領域、すなわち第一言語習得論、第二言語習得論、外国語教授法、教材・カリキュラム開発、バイリンガル教育、早期外国語教育などの研究に従事する。加えて、実践的学習の一貫として、英語クラス、日本語クラスの各現場においてそれぞれ実習を行い、理論と実践の統合を図る。

 

公共政策・社会研究専攻

修士(行政学)
政治・国際研究専修の行政学分野では、法学、政策学、政治学などの関連する社会科学分野の専門基礎科目を通じ、法や政策とその政治的背景に関する理解を包括的に深める学修を行う。また、専門教育科目の履修を通じて、法律や政策の比較検討や、両者の規範的意義などについての専門的理解を深める学修を行う。また、研究デザインや方法論については、各人の必要に応じ、大学院共通科目や専門基礎科目による学修を行う。

修士(国際関係学)
政治・国際研究専修の国際関係学分野では、国際関係学に重点を置く。専門基礎科目では、国際関係学の基礎概念と理論、ならびに国際法、政治学、公共政策、国際機構論などの関連分野の包括的な学修を行う。専門教育科目では比較政治・行政、政治思想、国際政治・外交、国際世論研究、ジェンダーと国際関係、公共経営や地方自治など政策研究に関連する科目も含め、学際的なアプローチを通じて国際関係学に関する理論的、実証的な理解を深める学修を行う。

修士(社会文化分析)
社会文化分析専修では、社会学や文化人類学のアプローチを用いて社会・文化の諸現象を研究する方法と理論的枠組みの基礎を専門基礎科目を通じて学修する。さらなる発展を専門教育科目を通じて学修する。質的または量的研究法を応用できるように指導する。

修士(メディアと言語)
メディアと言語専修では、コミュニケーションやメディア等に関する専門研究に従事するために必要な理論や研究方法の学修を専門基礎科目で行う。それらの学びの発展を専門教育科目で学修する。研究プロジェクトや修士論文の執筆を通じ、実践的能力を獲得する。専修横断また他専修領域の科目を積極的に活用することで学際的かつ実践的な応用能力も高める。

修士(公共経済学)
公共経済学のカリキュラムは、理論的知識と実践的スキルのバランスがとれた、充実した包括的な教育を提供することを目的としている。当専修は、経済学および経営学に関する質的および量的な調査方法のスキルを専門基礎科目を通じて育成する。さらなる経済学および経営学に関する専門的知識を専門教育科目で学修する。

修士(平和研究)
平和研究専修は、平和、紛争、安全保障に関する分野の幅広い授業科目を提供している。学生は、専門基礎科目の履修が求められ、この分野の概観を学ぶ。その上で、分野に関する専門教育科目を履修し、指導教員の研究指導を受けながら実証的な研究を進める。

 

比較文化専攻

比較文化専攻の日本文化研究専修および超学域文化研究専修においては、学部段階の専門分野についての知識を、比較文化の視点からいっそう深めるため、まず共通基礎科目「比較文化研究方法論」(必修)および各分野に関する専攻基礎科目を履修したうえ、専修領域とテーマに即して科目を履修し、広い視野からの問題の正確な理解を目指す。「専門研究」においては個別的な研究指導をおこなう。

専修共通科目群は、専修分野を超えるような根底的、基幹的な文化の諸構造に即して比較研究の方法を実際に学び、それに習熟し、一層広く確かな比較の立脚点を構築しえるよう設けられている。

 

理学専攻

数学・情報科学専修では、数学および情報科学においては、問題を抽出し、理論を適用し、計算機科学を応用することにより、実際の問題を解決するプロセスを意識しながら、それぞれの専門分野を学ぶ。さらに、その内容を、専門分野外の人にも、日英両語で伝えることのできるコミュニケーション能力も養う。

学部専門教育の上にたち、さらにそれぞれの分野の基本理論と手法を身につけるとともに、最新の研究にふれ、自らその問題に取り組む経験を通して、研究者のみならず、問題解決能力をもって社会のあらゆる分野で活躍しうる人材を育成することを目的とする。

物質科学専修では、実験と理論研究を行う。実験的分野においては、基礎的な実験スキル、さらに、実験結果から物質の理解に到る論理的展開、理論においては物質科学、理論科学、計算機科学の連携と統合を目指す。

生命科学専修では、植物学、動物学および微生物学の3つの分野の研究がなされているが、これらの専門的なテーマに加え、科学的なものの考え方、基本的な研究の進め方についての指導を行う。

 

<博士後期課程>

博士後期課程では、ディプロマ・ポリシーを踏まえて、高度の専門性と学際的・学融合的視点をともに備えた人材の育成を目指し、以下のようにカリキュラムを編成する。

1. 「特別専門研究」では、学生に応じて、文献の講読や学生の研究計画に基づく討論などを通じて個別指導を行う。

2. 年次研究報告書の作成にあたり、適切に指導や助言を行う。

3. 博士候補資格取得のため、トピックやデータを掘下げ、精度を上げるための課題や研究に取り組ませる。

4. 博士候補資格取得後、少なくとも3学期間研究指導を行う。

5. 博士論文計画書作成にあたり、博士論文提出までの段階を踏まえて指導や助言を行う。

6. 博士論文最終草稿を作成するにあたり、学生の状況を踏まえて適切に指導や助言を行う。

7. 博士学位論文を提出するまでに、原則として外部学術雑誌に当該論文に関連した論文を一編以上掲載するよう指導や助言を行う。

8. 博士論文作成にあたり、最終草稿の審査で指摘された内容を踏まえて指導や助言を行う。

入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー)

国際基督教大学は「神と人とに奉仕する」ことを理念として、三つの使命である国際性への使命、キリスト教への使命、学問への使命を掲げて、学問分野間の境界を超えたリベラルアーツ教育を実践している。

本大学院は、これら三つの使命に基づき、学部で養われた学術知識の上に、諸分野の研究を通じて教育・研究両面におけるさらなる発展を目的として設置された。本大学院は、日本語と英語のバイリンガル教育を基礎に、世界と日本を結ぶ架け橋としての役割を担う高い専門性を備えた指導的人材を育成するため、専門分野の知識に加え、、主体的研究能力や問題解決能力を備えた学生を求めている。

このような学生を受け入れるために、入学選考においては4月入学と9月入学の制度を設けており、日本語または英語で提出される書類の精査(書類選考)および十分な時間をかけた面接を行うことによって、入学志願者の学問的資質や適性、関心や意欲を多角的に評価し判定する。

 

<博士前期課程>

心理・教育学専攻

本専攻では、過去の研究や先人たちの営みをあらゆる角度から相対化し、自らの問題意識を確立させ、安易に結論を出さず考え抜く姿勢を学生に求めている。学際的に知の探求と実践に取り組み、複眼的視野を保ちつつ、確かで豊かな専門知識を獲得し、創造的提案という形で社会へ貢献しようとする意欲をもった学生を受け入れる。個々の問題意識を尊重し、その学生にしかできない個性ある研究を完成する努力を惜しまない学生の育成を目指している。

 

公共政策・社会研究専攻

修士(行政学)
政治学・国際研究専修の行政学分野では、既存の学術的な枠組みにとらわれない知的柔軟性があり、自らの専門研究を追及しながら多角的に学んでゆく意欲のある学生を求めている。多くの授業が高度な学術英語を用いて開講されているため、英語能力が十分にある学生を求めている。

修士(国際関係学)
政治学・国際研究専修の国際関係学分野では、優れた分析力と国際関係学や関連する社会科学領域の基礎的な理解を有する学生を求めている。国際色豊かな教員の指導のもとで、主に英語を教学言語として、国際関係学の研究を行うことができる学生を求めている。また、異なる国籍や文化的背景を持つ教員や学生との刺激的な議論を通じ、現代の地球規模の課題に対する広い視野を養うことができる学生を求めている。

修士(社会文化分析)
社会文化分析専修は、社会学または文化人類学領域の研究を追求しようとする学生を求めている。多くの授業が英語で開講されるため、高度な英語運用能力を持っていることが求められる。国際性豊かな教授陣および様々な国々からの学生との刺激的議論を通じて、自分の専門的研究を深めたいと考える入学者を求める。

修士(メディアと言語)
メディアと言語専修では、メディアと言語に関する高度な専門研究を学ぶために基本となる学術的知識及び能力を有し、既存の枠組みにとらわれず学際的に自らの研究を追求する志向を持つ学生、また世界の多様な価値観の中で起こる誤解や偏見にグローバルな視点で柔軟に向き合うことができる学生を求めている。また多くの授業が英語で開講されるため、高度な英語運用能力を持ち、国内外出身の多様なバックグラウンドを持つ学生また教員との交流を通じ、自らを高めていくことができる学生を求めている。

修士(公共経済学)
社会文化分析専修は、社会学または文化人類学領域の研究を追求しようとする学生を求めている。多くの授業が英語で開講されるため、高度な英語運用能力を持っていることが求められる。国際性豊かな教授陣および様々な国々からの学生との刺激的議論を通じて、自分の専門的研究を深めたいと考える入学者を求める。

修士(平和研究)
平和研究専修は、平和研究に関心を持ち、国際機関、政府機関、非政府組織での活動を目指す学生を求めている。この専修では、平和、紛争、開発に関する地球規模の課題について、活発な議論を通じて英語でのコミュニケーション能力を向上させることも目的としており、多くの英語開講科目を提供している。そのため、優れた英語能力と、国際関係学、法学、開発学、政治学などの関連する社会科学分野の学術的背景があることが望まれる。学生には優れた分析能力と、指導教員による研究指導のもとで実証研究を行う能力が期待される。

比較文化専攻
本専攻では、世界に存在する多様な分野の文化研究を幅広い視点から比較・検証し、国籍や文化の既存の壁を越えて自立的で独自の学びや研究を深めていくことができる学生を求めている。本専攻で得られた学びを、人間そのものの深い理解へと昇華させ、リベラルアーツの精神と高度な人文学の訓練との結合を通じて、人類の未来に対する先見性と倫理観を備えた指導的役割を担う人材を養成する。

理学専攻
本専攻では、少人数制の特徴を生かし、教授陣と学生の密接なコミュニケーションを通じて、高度な理学分野の研究環境を実現している。また、国内外の大学・研究所との協力関係を通じて、学生に多様な最新の理学研究大学院への門戸を開き、最適な研究環境を提供することで、専門的な能力と実践的な英語力をも培うことができる。専門分野の知識や技能の修得にとどまらず、高いコミュニケーション能力を獲得し、社会との関わりのなかで理学研究の方向性や社会に対する多様な貢献の可能性の道筋を探ろうとする学生を求めている。

 

<博士後期課程>

本大学院博士後期課程では、日本語と英語のバイリンガル教育を基礎に、より高い専門性を備えた指導的人材を育成するため、主体的研究能力と問題解決能力を備えていることに加え、研究者として自立的に研究活動を行い、その基盤となる豊かな学識を獲得しようとする意欲をもち、学会活動など学外での学問活動を活発に行い、研究者としての努力を惜しまず続けられる学生を求めている。

 

アカデミック・インテグリティー
(学問的倫理基準)
に関する本学の方針

学問の卓越・真理の探究を目指すリベラル・アーツの構成員として、本学の学生は、すべての学問的活動において、きわめて高い学問的倫理基準を維持することが期待されています。学問は、当然の事ながら、過去の研究業績の蓄積の上に成り立っています。従って、他人の研究に使われている考え方や言葉、文章や調査研究をあたかも自分自身のものであるかのように偽ることは、学問的倫理基準を侵すことになります。教員の評価を受けるための学生の提出物(レポート、試験の答案など)は、自分自身のもの(オリジナル作品)でなければなりません。学生は自分自身で考え、調査研究したものでない情報の出典は、明らかにし、正しく引用することが求められます。

学問的倫理基準を侵す行為は以下の三つに分類されます。

1.カンニング

カンニングは、以下のように定義されます。

  1. 試験において、他の学生の解答を写すこと。
  2. 試験の最中に、他の学生と情報交換をすること。
  3. 試験にノートやカンニングペーパーを持ち込むこと、また、試験の前に机の上に解答を書いておくこと。
  4. 試験中に、担当教員から使用許可の下りていない電子機器(例えば、携帯電話、電子辞書、小型ノートパソコン等)を使って、解答のために不正なアクセスをすること。

2.剽窃(ひょうせつ)・盗作

剽窃は、他人の作品・考え・研究成果を自分自身のものとして偽ることと定義されます。剽窃は、主にレポートや論文において起こり得ます。一般的に次のような場合があげられます。

  1. 他の作者によって書かれた著作や記事から、その出典を明らかにしないで文書を写すこと。
  2. インターネットから、その出典を明らかにしないで文書や情報を写すこと。

3.オリジナルでないものをオリジナルであるかのように見せかけること

このような学問的倫理基準の侵害は、以下のような場合に発生します。

  1. 他のコースで単位取得済みの自分のレポート・課題・実験結果報告書などを自分が登録している別のコースのために利用して提出すること。
  2. 他の学生があるコースのために提出し、すでに単位取得済みのレポート・課題・実験結果報告書を自分が登録している別のコースのために利用して提出すること。
  3. レポートや実験結果を購入し、その出典を明らかにせず提出すること。

ICU のすべての教職員学生は、学問的倫理基準に関するICUの方針を学び理解することが求められます。この方針に関して何か疑問がある場合には、レポートなどを提出する前に、担当教員に確認をしなければなりません。学問的倫理基準の方針を、学生が理解しているという前提のもとに、担当教員は成績評価を行います。

学生は学問的倫理基準に関する方針を侵して、論文等を提出した後に、その方針を知らなかったと言い訳をすることは許されません。

学問的倫理基準の方針を侵した者への罰則は、不正行為の程度や内容によって決定されます。最も軽い罰則の場合でも、不正行為を起こしたコースが不合格となります。

以上

教養学部長
大学院部長
学生部長

学生の生成系AIの使用に関する本学の考え方

1. はじめに

最近話題となっている生成系AIについて皆さんもご存知だと思います。加速度的に進化する人工知能の一形態で、便利なツールとして注目されていますが、同時に様々な潜在的危険性が指摘されています。ここでは、生成系AIを利用することに対する国際基督教大学としての基本的な考え方について示します。

国際基督教大学は、自由で独立した思索力と批判能力を身につけ、真理と自由のもとに理性的な決断を行ない、この決断にともなう責任を引き受けることができる人を世に送り出すことを使命としています。すなわち学生の皆さんには、自らの力で考え、それを批判的に吟味し、高い学術性と倫理性を追求し、それらを社会の中での実践に結びつけることが期待されています。

2. 生成系AI(Generative AI)とは

このような本学の学問的倫理基準において、生成系AIの使用はどのように位置づけられるでしょうか。生成系AIはインターネット上あるいはその他のデータベース上にある既存の文書や画像などの大量データを機械学習し、ユーザーの入力する質問(プロンプト)に対する回答を自然言語やその他の形で出力することのできるプログラムです。

生成系AIは今後、インターネット検索のように日常生活の中に組み込まれていく可能性がきわめて高く、21世紀に生きる皆さんには、今後これらのツールを使いこなし、功罪を検討し、解決策を模索し、言語や文化の違い・障がいの有無などの差異を超越した新しいコミュニケーションのあり方や、文明における人間のことばの重要性を検討するなど、プログレッシブな利用を試みていくことが必要となるでしょう。

3. ICUのアカデミック・インテグリティーの方針について

上述したような生成系AIの今後の発展や社会利用の可能性を鑑みると、「明日の大学」を標榜する本学として、生成系AIの使用を全面的に否定するものではありません。一方で、生成系AIが作成したものを本学における成績評価のための提出物に使用し、あたかも自分自身が作成したかのように振る舞うことは、本学アカデミック・インテグリティーの方針が定義する「剽窃」すなわち「他人の作品・考え・研究成果を自分自身のものとして偽ること」に相当します。アカデミック・インテグリティーについての本学の方針には以下のように記載されています。

「他人の研究に使われている考え方や言葉、文章や調査研究をあたかも自分自身のものであるかのように偽ることは、学問的倫理基準を侵すことになります。教員の評価を受けるための学生の提出物(レポート、試験の答案など)は、自分自身のもの(オリジナル作品)でなければなりません。学生は自分自身で考え、調査研究したものでない情報の出典は、明らかにし、正しく引用することが求められます」

さらに、生成系AIには以下のように、学問的客観性や倫理面、安全性の点での懸念もあります。

  • 生成系AIが使用しているデータは、他人の著作物や発表物、調査結果から成り立っているため、AIが出力する回答自体が、著作権侵害や剽窃である可能性がある。
  • 出力される回答の不正確性が指摘されている。
  • 蓄積されているデータの狭さ・偏り・誤りが出力に反映され、人種・ジェンダー・言語・宗教上の差別を再生産してしまう可能性が指摘されている。
  • 入力した内容はサーバに保存され、回収や削除ができないため、プライバシーやセキュリティ上の危険性がある。
  • 開発・利用法についての世界的な共通ルールが確立されていない。

生成系AIを適切に使うためには、細心の注意と専門的な知識が必要であり、出力された回答を批判的に検討し、問題点を修正することが必要です。また、生成系AIに頼ることは、他者に伝えるために自らことばを紡ぐという人間の営為を放棄することにもなり、皆さん自身の創造力や批判的思考力、さらに情報収集・整理・議論・作文・語学などの能力の修得を妨げ、学び育つ機会を自ら奪うことになります。

4. 本学の方針

これらを踏まえ、本学では学生の創造性や批判的な思考過程を重視する立場から、学生が課題に取り組むにあたり、自ら考え、調査し、反芻し、自らのことばで回答を作成することを求めます。生成系AIが作成した文章は、多少の改変を加えたとしても、自身で作成したものとは認められず、アカデミック・インテグリティーの方針に抵触すると判断されます。また自身で行うことが求められたタスクを、生成系AIに行わせることも認められません。これらの方針に違反した場合は、アカデミック・インテグリティーの方針に違反した場合と同じ扱いとします。

ただし、担当教員からAI使用について特に指示がある場合は、この限りではありません。
各自の履修する授業でのAI使用方針については、担当教員に確認してください。特別な指示がない場合には、本方針が適用されます。

5. 生成系AIを使用する場合に気をつけること

生成系AIを使用する際には、自分や他人の個人情報、他人の著作物、未公開の研究成果、秘密にすべき情報などを入力しないように細心の注意を払ってください。入力した情報をシステムに学習させないオプトアウトを選択することは最低限必要です。ただし、オプトアウトした場合でも予期せぬプライバシー侵害の懸念が残ることに留意してください。

6. 最後に

本学では、課題成果物そのものよりも、成果物へ到達する思考過程を問うています。その過程を経て初めて「自由で独立した思索力と批判能力」を修得できるからです。課題などへの回答に際しては、自ら考え、作文し、推敲し、批判検討し、大切にことばをつむぎ出してください。皆さんの創造力と批判的思考力に期待しています。

教養学部長
大学院部長
学生部長