学部 教育方針

ディプロマ・ポリシー
(学位授与に関する方針)

国際基督教大学(ICU)は、キリスト教の精神に基づき、世界⼈権宣⾔のもと、平和を構築する地球市⺠としての教養と責任を身につけ、神と⼈とに奉仕する有為の⼈材を育成することを目的としています。その実現のため、3 つの使命、すなわち学問への使命、キリスト教への使命、国際性への使命を掲げ、文理にわたる幅広い分野で所定の教育課程を修め、以下のような能力を身につけた者に対して学士(教養)の学位を授与します。

  1. 学問の基礎を固め、自発的学修者として主体的に計画を立てつつ、創造的に学んでいく能力
  2. 日英両語で学び、世界の人々と対話できる言語運用能力
  3. 自他に対する批判的思考力を基礎に、問題を発見し解決していく能力
  4. 文理にわたる多様な知識やデータを統合し、実践の場で活用する能力
  5. 自分の考えを的確かつ効果的に、口頭および記述で表現する能力
  6. それぞれの専修分野における学識に基づき、独自の見識や深い知識を生み出す能力

カリキュラム・ポリシー
(教育課程の編成方針)

ICU はその理念と目的に基づき、ディプロマ・ポリシーに示す能力を育成するため、以下のようにカリキュラムを編成します。

  1. "Later Specialization"(専門化を急がず、自分にあった専門を見きわめるべく幅広く学ぶための時間を重視するリベラルアーツ教育の特徴)という考え方に立ち、2年次の終わりに専門とする分野(メジャー)を決定する。
  2. 専修分野の選択方法は、シングルメジャー、2つの専門を深めるダブルメジャー、2つのメジャーを比率を変えて履修するメジャー・マイナーの3通りとする。
  3. 全体のカリキュラムは、語学科目、一般教育科目、保健体育科目と専門科目で構成する。
  4. 語学科目(リベラルアーツ英語プログラムまたは日本語教育プログラム)は1、2年次で履修し、大学での学びの基礎となる⾔語運用能力、批判的思考、対話力という学問の技法を修得する。
  5. 一般教育科目は、キリスト教概論および⼈文科学、社会科学、自然科学の3系統から構成され、さまざまな学問の本質に接することで、専修分野(メジャー)の選択を助ける一方、複数の視点からその分野やテーマを位置付ける機会を提供する。
  6. 保健体育科目は、肉体的、精神的、社会的健康のバランスを取り、全⼈的に成⻑することを促す。
  7. 専門科目は、各メジャーの専門知識を系統的に学ぶ基礎科目及び専攻科目、並びに、全学に共通する科目で構成する。
  8. 英語・日本語以外を学ぶ「世界の⾔語」では、未知の文化や考え方に触れ、より広い視野を養う。
  9. 最終学年では、学業の集大成として、全員が卒業研究に取り組み、多様な学問領域での学びを通して知識の有機的な統合をはかり、卒業論文という具体的な形にまとめることで、知的な成果を発信することを学ぶ。
  10. 少⼈数教育と対話型授業を可能にするため、適切な授業定員に留意する。

アドミッション・ポリシー
(入学者受入れ方針)

ICU は、世界⼈権宣⾔の原則に立ち、「責任ある地球市⺠」として世界の平和と多様な価値観を持つ⼈々との共生を実現するためにリベラルアーツ教育を実践しています。1953年の献学以来、その名に示されるように、国際性への使命、キリスト教への使命、学問への使命を掲げて、リベラルアーツの伝統を築いてきました。グローバル化する現代の社会でこの理念を実現してゆくために、ICU では日本全国および世界各地から次のような資質を持ち、また、それらをさらに高めたいという意思を持つ学生を求めています。

  1. 文系・理系にとらわれない広い領域への知的好奇心と創造力
  2. 的確な判断力と論理的で批判的な思考力
  3. 多様な文化的背景を持つ⼈々との対話ができるグローバルなコミュニケーション能力
  4. 主体的に問題を発見し、果敢に問題を解決してゆく強靭な精神力と実行力

日本あるいは世界各国の教育制度において、文系・理系にとらわれず幅広く学び、各教科・科目の基礎知識を統合して行動する知性へと変革する能力や、外国語によるコミュニケーション能力を備えている学生を求めます。

自己と世界の変革に挑戦するさまざまな可能性に満ちた学生を受け入れるため、教養学部では多様な選抜方法と多元的な評価尺度による入学者選抜を実施しています。

 

アカデミック・インテグリティー
(学問的倫理基準)
に関する本学の方針

学問の卓越・真理の探究を目指すリベラル・アーツの構成員として、本学の学生は、すべての学問的活動において、きわめて高い学問的倫理基準を維持することが期待されています。学問は、当然の事ながら、過去の研究業績の蓄積の上に成り立っています。従って、他人の研究に使われている考え方や言葉、文章や調査研究をあたかも自分自身のものであるかのように偽ることは、学問的倫理基準を侵すことになります。教員の評価を受けるための学生の提出物(レポート、試験の答案など)は、自分自身のもの(オリジナル作品)でなければなりません。学生は自分自身で考え、調査研究したものでない情報の出典は、明らかにし、正しく引用することが求められます。

学問的倫理基準を侵す行為は以下の三つに分類されます。

1.カンニング

カンニングは、以下のように定義されます。

  1. 試験において、他の学生の解答を写すこと。
  2. 試験の最中に、他の学生と情報交換をすること。
  3. 試験にノートやカンニングペーパーを持ち込むこと、また、試験の前に机の上に解答を書いておくこと。
  4. 試験中に、担当教員から使用許可の下りていない電子機器(例えば、携帯電話、電子辞書、小型ノートパソコン等)を使って、解答のために不正なアクセスをすること。

2.剽窃(ひょうせつ)・盗作

剽窃は、他人の作品・考え・研究成果を自分自身のものとして偽ることと定義されます。剽窃は、主にレポートや論文において起こり得ます。一般的に次のような場合があげられます。

  1. 他の作者によって書かれた著作や記事から、その出典を明らかにしないで文書を写すこと。
  2. インターネットから、その出典を明らかにしないで文書や情報を写すこと。

3.オリジナルでないものをオリジナルであるかのように見せかけること

このような学問的倫理基準の侵害は、以下のような場合に発生します。

  1. 他のコースで単位取得済みの自分のレポート・課題・実験結果報告書などを自分が登録している別のコースのために利用して提出すること。
  2. 他の学生があるコースのために提出し、すでに単位取得済みのレポート・課題・実験結果報告書を自分が登録している別のコースのために利用して提出すること。
  3. レポートや実験結果を購入し、その出典を明らかにせず提出すること。

ICU のすべての教職員学生は、学問的倫理基準に関するICUの方針を学び理解することが求められます。この方針に関して何か疑問がある場合には、レポートなどを提出する前に、担当教員に確認をしなければなりません。学問的倫理基準の方針を、学生が理解しているという前提のもとに、担当教員は成績評価を行います。

学生は学問的倫理基準に関する方針を侵して、論文等を提出した後に、その方針を知らなかったと言い訳をすることは許されません。

学問的倫理基準の方針を侵した者への罰則は、不正行為の程度や内容によって決定されます。最も軽い罰則の場合でも、不正行為を起こしたコースが不合格となります。

以上

教養学部長
大学院部長
学生部長

学生の生成系AIの使用に関する本学の考え方

1. はじめに

最近話題となっている生成系AIについて皆さんもご存知だと思います。加速度的に進化する人工知能の一形態で、便利なツールとして注目されていますが、同時に様々な潜在的危険性が指摘されています。ここでは、生成系AIを利用することに対する国際基督教大学としての基本的な考え方について示します。

国際基督教大学は、自由で独立した思索力と批判能力を身につけ、真理と自由のもとに理性的な決断を行ない、この決断にともなう責任を引き受けることができる人を世に送り出すことを使命としています。すなわち学生の皆さんには、自らの力で考え、それを批判的に吟味し、高い学術性と倫理性を追求し、それらを社会の中での実践に結びつけることが期待されています。

2. 生成系AI(Generative AI)とは

このような本学の学問的倫理基準において、生成系AIの使用はどのように位置づけられるでしょうか。生成系AIはインターネット上あるいはその他のデータベース上にある既存の文書や画像などの大量データを機械学習し、ユーザーの入力する質問(プロンプト)に対する回答を自然言語やその他の形で出力することのできるプログラムです。

生成系AIは今後、インターネット検索のように日常生活の中に組み込まれていく可能性がきわめて高く、21世紀に生きる皆さんには、今後これらのツールを使いこなし、功罪を検討し、解決策を模索し、言語や文化の違い・障がいの有無などの差異を超越した新しいコミュニケーションのあり方や、文明における人間のことばの重要性を検討するなど、プログレッシブな利用を試みていくことが必要となるでしょう。

3. ICUのアカデミック・インテグリティーの方針について

上述したような生成系AIの今後の発展や社会利用の可能性を鑑みると、「明日の大学」を標榜する本学として、生成系AIの使用を全面的に否定するものではありません。一方で、生成系AIが作成したものを本学における成績評価のための提出物に使用し、あたかも自分自身が作成したかのように振る舞うことは、本学アカデミック・インテグリティーの方針が定義する「剽窃」すなわち「他人の作品・考え・研究成果を自分自身のものとして偽ること」に相当します。アカデミック・インテグリティーについての本学の方針には以下のように記載されています。

「他人の研究に使われている考え方や言葉、文章や調査研究をあたかも自分自身のものであるかのように偽ることは、学問的倫理基準を侵すことになります。教員の評価を受けるための学生の提出物(レポート、試験の答案など)は、自分自身のもの(オリジナル作品)でなければなりません。学生は自分自身で考え、調査研究したものでない情報の出典は、明らかにし、正しく引用することが求められます」

さらに、生成系AIには以下のように、学問的客観性や倫理面、安全性の点での懸念もあります。

  • 生成系AIが使用しているデータは、他人の著作物や発表物、調査結果から成り立っているため、AIが出力する回答自体が、著作権侵害や剽窃である可能性がある。
  • 出力される回答の不正確性が指摘されている。
  • 蓄積されているデータの狭さ・偏り・誤りが出力に反映され、人種・ジェンダー・言語・宗教上の差別を再生産してしまう可能性が指摘されている。
  • 入力した内容はサーバに保存され、回収や削除ができないため、プライバシーやセキュリティ上の危険性がある。
  • 開発・利用法についての世界的な共通ルールが確立されていない。

生成系AIを適切に使うためには、細心の注意と専門的な知識が必要であり、出力された回答を批判的に検討し、問題点を修正することが必要です。また、生成系AIに頼ることは、他者に伝えるために自らことばを紡ぐという人間の営為を放棄することにもなり、皆さん自身の創造力や批判的思考力、さらに情報収集・整理・議論・作文・語学などの能力の修得を妨げ、学び育つ機会を自ら奪うことになります。

4. 本学の方針

これらを踏まえ、本学では学生の創造性や批判的な思考過程を重視する立場から、学生が課題に取り組むにあたり、自ら考え、調査し、反芻し、自らのことばで回答を作成することを求めます。生成系AIが作成した文章は、多少の改変を加えたとしても、自身で作成したものとは認められず、アカデミック・インテグリティーの方針に抵触すると判断されます。また自身で行うことが求められたタスクを、生成系AIに行わせることも認められません。これらの方針に違反した場合は、アカデミック・インテグリティーの方針に違反した場合と同じ扱いとします。

ただし、担当教員からAI使用について特に指示がある場合は、この限りではありません。
各自の履修する授業でのAI使用方針については、担当教員に確認してください。特別な指示がない場合には、本方針が適用されます。

5. 生成系AIを使用する場合に気をつけること

生成系AIを使用する際には、自分や他人の個人情報、他人の著作物、未公開の研究成果、秘密にすべき情報などを入力しないように細心の注意を払ってください。入力した情報をシステムに学習させないオプトアウトを選択することは最低限必要です。ただし、オプトアウトした場合でも予期せぬプライバシー侵害の懸念が残ることに留意してください。

6. 最後に

本学では、課題成果物そのものよりも、成果物へ到達する思考過程を問うています。その過程を経て初めて「自由で独立した思索力と批判能力」を修得できるからです。課題などへの回答に際しては、自ら考え、作文し、推敲し、批判検討し、大切にことばをつむぎ出してください。皆さんの創造力と批判的思考力に期待しています。

教養学部長
大学院部長
学生部長