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2019年春季入学式を挙行

公開日:2019年4月3日

4月2日(火)、満開の桜のもと、2019年春季入学式を大学礼拝堂で執り行ない、国内外から551人の新たな学部生・大学院生に加えて、本学と交換留学協定を締結している大学からの留学生40人を迎えました。

式では、1953年の献学以来、60年以上にわたり引き継がれている伝統に則り、新入生一人ひとりの名前が紹介されたほか、世界人権宣言の原則にたち大学生活を送る旨を記した誓約書に、入学生全員が署名を行いました。

式辞を述べた日比谷潤子学長は、本学の理念と日本とアメリカで行われた大規模な募金活動で集められた寄付によって献学された本学の歴史を紹介しました。また、日本の大学(学部)への進学率が53.3%(2018年度)と過去最高を記録する中、経済的な困難等、さまざまな事情で進学を諦めざるを得ない人、世界には高等教育はおろか、初等・中等教育段階で学校に行けなくなってしまう人がいることに触れました。そして、新入生に向けては、「幸運にもこれまで教育を受けてきた皆さんには、求められているものがある」と語り、本学でさまざまな力を修得する目的は、入学式冒頭の聖書朗読で読み上げられた使途行伝第20章33節―35節の『受けるよりは与える方が、さいわいである』ことを忘れず、自分に課せられた務めを忠実に果たすことによって、他者や世界に貢献するためであると伝えました。

さらに、式辞の最後には、「多くの方々の無償の善意によって建てられた大学に入学した皆さんには、本学創設に協力して下さった方々の大きな期待に十二分に応えていくことが求められています。常にこのことを念頭に置いて、これからの毎日を過ごしてください」と、新入生への激励の言葉を贈りました。

日比谷潤子学長 式辞(全文)

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教養学部、大学院博士前期課程・後期課程新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ディッフェンドルファー記念館で、この式をご覧になっているご家族、ご親戚、ご友人のみなさまにも、心よりお祝いを申し上げます。

皆さんが今日入学した国際基督教大学は、「国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資する」ことを目的としています。この大学が正式に創立されたのは、今からちょうど70年前、1949年の6月15日でした。1945年秋、すなわち第二次世界大戦終結直後に始まった精力的な計画立案の作業を経て、この日、日本と北米のキリスト教界の指導者が静岡県御殿場のYMCA東山荘に集まって開催された大学組織協議会で、理事会および評議員会が公式に組織され、大学設立の基本方針が採択され、教育計画の原則が決まりました。本学はこの日を創立記念日としています。

皆さんの勉学、課外活動、そして寮生にとっては日常生活の場ともなるこのキャンパス用地を購入するための資金は、アメリカと日本で行われた大規模な募金活動によって集められたものです。アメリカ側では、キリスト教諸教会、その外国宣教部、その他の方々にご協力いただきました。日本側では、当時の日本銀行総裁、一万田尚登氏が後援会長となり、政界・財界・学界をあげて過去に例を見ない募金運動が展開されました。その呼びかけに応えたのは、それぞれの分野で指導的な立場にあった方々だけではありません。戦争直後の貧しさの中、数多くの一般の方々が、浄財を寄付してくださいました。その中には、他の大学の学生や小学生も含まれていたそうです。その結果、1950年7月20日には目標の1億5000万円を達成、翌年夏には、募金総額は1億6000万円と発表されました。この大学を開設するために、自らの厳しい生活にもかかわらず寄付して下さった方々の行為は、まさに本日の入学式の冒頭で朗読された『受けるよりは与える方が、さいわいである』という主イエスの言葉そのものと言えるでしょう。図書館の1階にある歴史資料室には、この時の寄付者、お一人お一人のお名前などを記録したカードを収めた木箱が設置されています。皆さんはこれから始まる大学生活で、たびたび図書館を利用することになりますが、勉学の合間には、是非この歴史資料室に行ってみてください。スタッフに声をかければ、木箱の中のカードを見ることも可能です。また、この歴史資料室には献学時からの写真や文書など約10,000点の資料が収蔵されており、これらの閲覧もできるので、ぜひ折に触れて立ち寄り、自分が入学した大学への理解を深めてください。

ところで、皆さんは「学校基本調査」を知っていますか。これは文部科学省が教育行政の基礎資料を得ることを目的として1948年度から毎年実施しているもので、対象は学校教育法に規定されるすべての学校、および市町村教育委員会です。学校数、在学者数、教員数、卒業者数、進学者数、就職者数等さまざまな調査項目がありますが、本日の入学式にあたって注目したいのは、4年制大学学部の進学率です。1962年度は10.0%、1972年度は21.6%、1994年度は30.1%、2002年度は40.5%、2009年度は50.2%、そして昨年度は53.3%で過去最高となりました。つまり、今の日本では、ほぼ2人に1人は4年制の大学に行くわけです。このような時代に学生生活を送ることになる皆さんの中には、大学、とりわけ学部に進むのは、ある程度当然と思っている人もいるかもしれません。しかし現実には、経済的な困難等、本人の能力とは関係のないさまざまな事情で進学を諦めざるを得ない人も少なくありませんし、広く世界に目を向ければ、高等教育はおろか、初等・中等教育段階で学校に行けなくなってしまう人々も、残念ながら、少なくありません。幸運にもこれまで教育を受け、今日大学院に入学した人を含め、さらに進学する機会を与えられた皆さんには、一体何が求められているのでしょうか。

はじめにも述べたように、ICUは、国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成することを目的としています。教養学部では、学問の基礎を固め、自発的学修者として主体的に計画を立てつつ、創造的に学んでいく能力、日英両語で学び、世界の人々と対話できる言語運用能力、自他に対する批判的思考力を基礎に、問題を発見し解決していく能力、文理を問わず多様な知識を統合し、実践の場で活用する能力、効果的な文章記述力とコミュニケーション力に基づく説明能力、博士前期課程では広い視野に立った深い学識と各専攻分野における研究能力や専門性が必要とされる職業に就くための力、さらに博士後期課程では、豊かな学識を基礎に、研究者として自立するため、またはきわめて専門的な業務に従事するための卓越した能力を修得することが求められます。このような力を身につけるのは、神と人とに奉仕するため、言い換えれば、「受けるよりは、与える方がさいわいである」ことを忘れず、自分に課せられた務めを忠実に果たすことによって他者や世界に貢献するためです。多くの方々の無償の善意によって建てられた大学に入学した皆さんには、本学創設に協力して下さった方々の大きな期待に、十二分に応えていくことが求められています。常にこのことを念頭に置いて、これからの毎日を過ごしてください。実り多い学生生活となることを、お祈りしています。

参考: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001021812&second2=1