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講演会「カカオを通して世界を変える」を開催

公開日:2020年11月2日

10月9日(金)、カカオを通して社会に変革を起こしている、京都のチョコレート専門店「Dari K」の代表取締役の吉野慶一氏を招いて、岩切正一郎学長主催の講演会を開催しました。本講演会は、コロナウィルス感染症拡大予防の観点から、対面とオンライン併用のハイブリッドで行われました。

この学長主催の講演会は、「現代社会とリベラルアーツ」と題したシリーズ講演会で、さまざまな分野のフロント・ランナーをお招きし、人は世界と仕事でどのように繋がっているのかを語っていただくもので、本開催が第1回となります。

講演会で吉野氏は、大学時代から「カカオを通して世界を変える」を企業理念とするDari K創業に至るまでの経緯、そして「努力が報われる社会を作る」を人生の目標と決めた理由などを、そのターニングポイントとなった出来事を紹介しながら語りました。

最初に語られたのが、大学生時代に訪れたラオスのルアンパバーンのマーケットで働いていた日本語を話すモン族のある少女との出会い。その少女は、住む地域に学校もなく、日本語を学ぶ機会がないにもかかわらず、マーケットに訪れる日本人との出会いを、言語を学ぶチャンスと捉えて前向きに生きていました。この生きる姿勢に吉野氏は衝撃を受け、それまで自分の生き方を問い直し、学校にも行けない子供たちの現状を解決しなければならないと、国際機関での勤務を目指すことになったと紹介されました。

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そして、その後国際機関での勤務を目指し、金融機関で働いている最中、Dari Kの創業のきっかけの一つとなる、世界の国別カカオ豆の生産量が記載された世界地図との偶然の出会いとその後の自身の行動が紹介されました。

この地図には、カカオ豆の生産量世界1位はコートジボワール、2位はガーナ、3位はインドネシアであることが示されていました。これを見た吉野氏は、ある疑問を持ちます。「インドネシアのカカオ豆は生産量世界3位。地理的にも近いにも関わらず、なぜ日本に輸入されないのか」。この問の答えを見つけるべく、吉野氏はインドネシア・スラウェシ島のカカオ農家をめぐり、現地調査を実施しました。その結果、インドネシアでは良質なカカオ豆を作るのに欠かせない豆の発酵工程が省かれていて、低品質な豆が生産されていることを突き止めました。では、なぜ発酵させないのか。それは、インドネシアのカカオ豆は低品質なため、国際価格よりも低い取引価格で買い取られることが暗黙のルールになっていて、たとえ発酵させたとしても発酵させていない低品質な豆とほぼ変わらない価格で買い取られるからでした。カカオ農家が手間暇をかけて発酵させた良質の豆を生産したとしても、買取価格はほぼ変わらない。こうした努力をしても、それが認められない環境があることを知った吉野氏は、この現状を変え、「努力が報われる社会を作る」という目標を掲げ、Dari Kの創業に至ったことが述べられました。

そして講演の最後に吉野氏は、モン族の少女の例、カカオ豆の生産量と輸入量の疑問から行動した自身の例などから、「同じ環境でも、その人の行動次第で人生は変わる。置かれた環境を言い訳にせず、挑戦して欲しい。行動しないと世界は変わらないし、自分も変わらない」と、学生を激励しました。

講演後には、在学生から「挑戦することのリスクには、どのように向き合っているのか」という質問があがりました。吉野氏からは、「挑戦をする前は、リスクばかりを考えるが、一方で挑戦して得られる成果などを考えることはない。走りださないとわからないことはあるので、直感を信じて、やらないと後悔すると感じるのであれば、それに挑戦した方がいいと思っています」と、回答がありました。

この講演の様子は、以下から視聴できます。