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NSフォーラム「2022:A Quantum Odyssey-量子の時代に生きる,量子を知らない皆さんへ」開催

公開日:2022年11月4日

10月25日(火)、NSフォーラム*が開催され、本学の山崎歴舟准教授(メジャー:物理学、専門:量子力学)が今年のノーベル物理学賞を受賞したクラウザー、アスペ、ツァイリンガーの量子力学に関する研究を解説する講演を行いました。今回の講演は、自然科学・人文科学・社会科学など多様な分野につながる学びを目的に開催しました。会場の理学館大教室には、自然科学メジャーだけでなく自然科学メジャー以外の学生や教職員、約50名が参加しました。

*NSフォーラム:本学の自然科学デパートメントが主催するイベントで、主に学外の研究者を招き、最先端の技術や研究を紹介をしていただくセミナー。

講義では、量子特有の「重ね合わせ」や「量子もつれ」という現象、その現象を実験で実証するまでの長い道のり(EPRパラドックス、ベルの不等式、不等式を実証する実験装置の開発、量子を使ったテレポーテーション技術の実証)について解説がありました。

量子とは、原子や電子、素粒子を総合する名称で、「重ね合わせ」とは、量子が2つの性質をあわせもつにもかかわらず測定されるとどちらか一方の性質になってしまう現象です。「量子もつれ」は、ペア関係になっている量子が、どんなに距離が離れていても、片方の性質が特定されれば、もう一方の性質が確定するという現象です。もつれは「つながり」を表しています。

アインシュタインらが量子力学の理論を疑い1935年に問題提起したEPRパラドックスは、約30年間、実験で確かめる方法がありませんでしたが、実験的な検証を可能とする不等式をベル(故人)が提案し、その不等式を実験的にはじめて明らかにしたのがクラウザーとフリードマン(故人)、そしてアスペが実験装置のさまざまな「抜け穴」を改善しました。これらの研究により、量子における物質は確率的に存在するという量子力学の立場が証明され、量子レベルでの実在論が否定されました。しかしながら、アインシュタインの問題提起は、間違っていたが重要な発見につながったCreative Errorであり、重要な問いかけであったことが強調されました。ツァイリンガーは量子もつれ状態という特殊な状態を用いて「量子テレポーテーション」を実証し、量子の道具としての有用性を示しました。

最後に、山崎准教授は、量子のテクノロジーを使った未来が近いことを示しました。すでに量子は通信、センサー、遺伝解析などの分野で実用間近であり、なかでも、2019年にGoogleの開発した量子コンピューターが、スーパーコンピューター富岳では1万年もかかる計算を200秒で解いた量子超越性の実験検証を例にあげました。日本でも量子コンピューターの研究はさまざまなプロジェクトで急ピッチに進められています。

講演の後に行われた質疑応答では、学生から観測の定義などについて質問がありました。

セミナーに参加した学生からは、「身近なものをつかって理論の説明がありわかりやすかった」「面白かった」、量子力学の「研究内容、歴史について深く話があったので、知らないこともたくさんありとても面白かった」「量子の可能性を知ることができ非常に興味深かった」、今後はさらに「実際の実験で何が使われていたか」「量子コンピューターの仕組みについて学びたい」という声が寄せられました。

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