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講演会「ミャンマーの現在 -我々にはどのような対応が可能か- 」を開催

公開日:2021年7月7日

6月4日(金)、ミャンマーに造詣の深い本学の高松香奈上級准教授(メジャー:国際関係学、ジェンダー研究、政治学)を講師に迎え、岩切正一郎学長主催の講演会をオンラインで開催しました。本講演会では混迷するミャンマー情勢の現状について解説が行われ、100人ほどの学生が参加しました。

この学長主催の講演会は、「現代社会とリベラルアーツ」と題したシリーズ講演会で、さまざまな分野のフロント・ランナーをお招きし、人は世界と仕事でどのように繋がっているのかを語っていただくものです。本開催が第3回となります。

高松上級准教授の講演は、「我々にはどのような対応が可能なのか」という視座に立って、ミャンマー国内の民主化への動きと、軍の弾圧の激化によって多くの命が犠牲になっている現状を理解するため、ミャンマーの軍政の歴史、2011年の民政移管以降から、今年2月1日に起きたクーデターまでの経緯の説明がありました。NLD(国民民主連盟)政権時代から軍の影響力が強かった、国政構造の変化の可能性については、軍政時代に培われてきた経済構造、軍内部の権威主義的な慣習の浸透や、NLD内部での対立などの観点から解説がありました。また、議会におけるジェンダー課題、COVID-19の影響による貧困の深刻化、特に女性の貧困についても言及されました。

こうしたミャンマー国内の混乱に対する国際社会のリアクションについては、軍による市民の弾圧への激しい非難や制裁といった対応が取られるケースが多いなかで、ASEAN(東南アジア諸国連合)による5つのコンセンサス(暴力行為の即時停止を求めることや、軍民の指導者間での対話の開始要求、そのプロセスを監視するためのASEAN特使のミャンマー派遣、人道支援等を含む)が取り上げられ、不介入の原則があるものの議論が行われた事例が紹介されました。市民レベルでの支援が困難な現状で、政治的安定を達成し、ミャンマー市民の生活を守っていくための対応としてどのような支援が可能か、非難や制裁だけにとらわれない支援のあり方が鍵となることが指摘されました。

参加学生からは、ミャンマー市民の中での軍の支持や、ロヒンギャ問題との関連、和平プロセスへの道のりといった現在行われているクーデターと軍の弾圧、国際社会の対応への質問があがりました。また、日本の一市民として何かできることがないだろうか、という質問に対しては、市民レベルでの具体的な行動を模索する上で、実際に虐殺が行われている地域で市民が生活し、声を上げて戦っている現状への理解が求められるとの意見があがりました。

また講演に参加した学生からは、「ニュースを見ているだけではわからなかった部分が歴史的な流れを含めとてもよく理解できました」、「ミャンマーに関する研究に深く携わられている先生からのお話を聴ける非常に良い機会でした」、「民主主義についての権利や活動の理解を深める必要があると思いました」、などの感想が寄せられました。