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泰山荘 一般公開
公開日:2022年11月18日
2022年10月28日(金)と翌29日(土)、湯浅八郎記念館主催で、大学構内に保存されている国の登録有形文化財「泰山荘」の一般公開をおこないました。両日ともに秋晴れの澄んだ青空が広がる好天に恵まれ、事前に往復はがきで予約をした来場者は、学生ガイドによる説明に耳を傾けながら、一つひとつの建物をゆっくり見学されました。

とある実業家が昭和初期に、茶室付き別荘としてここ三鷹の地に建設した「泰山荘」は、幸運にも太平洋戦争の空襲の戦火を免れ、1953年の開学以降はICUが保全管理を担ってきました。その存在は長らく研究者や愛好家の間で知られるにとどまっていましたが、大学が所有する文化財としての周知の効果もあって、近年は取材や見学の問い合わせが相次いでいます。しかしながら建物の保護と見学者の安全に鑑み、学外に向けての公開は限定せざるを得ず、例年、東京文化財ウィークへの参加企画として年に一度、ICU祭にあわせて見学会を実施してきました。
一昨年と昨年はコロナ禍のために開催を断念したため、実に3年ぶりの一般公開となった今回、入場制限を設けるICU祭とは日を分け、定員を例年の1/3に絞り見学希望者を募ったところ、再開を待ち望んでいた方から多くの申し込みがあり、急きょ受入れ枠を増やして対応することとなりました。最終的に2日間で100名ほどの来場者をお迎えしました。
定期的な清掃や点検を通して、泰山荘の保全活動をおこなっている学生団体「泰山荘プロジェクト」を中心に、学芸員課程を履修する学生が有志として加わり、受付や誘導、そしてガイドツアーを分担。あらかじめ10人前後のグループに分けられた来場者は、11時から16時までの毎時間スタートするツアーに参加して、泰山荘内を小一時間ほど見学します。学生たちはこの日のために勉強を重ね、表門、車庫、待合、高風居(一畳敷)、蔵、書院を順にまわり、パネルで資料写真を見せながらグループを案内しました。
幕末から明治期に活躍した松浦武四郎が晩年に建てた奇妙な書斎「一畳敷」が、不思議な運命の巡り合わせで泰山荘内に移築され現在に残っていることをはじめとする、各建物の建設の歴史的な経緯や、大学が苦心して継続してきた改修工事などについての分かりやすく丁寧な解説に、参加者からは時おり拍手が起き、「貴重な建造物であることが分かった」「がんばって保存してね」「来年も公開してほしい」といった嬉しい声が聞かれました。
また、ツアー締めくくりでの募金の呼びかけに賛同して寄付をする方も少なくなく、一畳敷のクリアファイルや、書院など泰山荘の建物の写真で揃えたポストカードセットの返礼品をお土産に、学生たちと楽しい会話を交わしつつ満足の面持ちでキャンパスをあとにされました。
来年は例年どおりの規模で見学会が実施できることを願うとともに、このような公開事業を地道に継続していくことで、学内のみならず学外からの支援者が増え、文化財としての泰山荘が万全な維持管理のもとで今後も保存されていくことを期待しています。