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牧島かれんデジタル大臣によるゲストレクチャー開催

公開日:2022年2月22日

2月14日(月)、教養学部専攻科目「行政学」(担当:西尾隆・公共政策メジャー)のオンライン授業で、本学卒業生で現デジタル大臣/内閣府特命担当大臣(規制改革・行政改革担当)の牧島かれん氏を特別ゲストとして招き、日本のデジタル行政の課題や閣僚としての業務を中心にお話いただきました。約115名の学生が参加しました。

牧島氏はまず、ICUでいろいろと関心をもって学んでいくうちに行政学に出会い西尾隆教授のもとで卒業論文や博士論文執筆にいたったこと、そして博士取得後に落選を経て当選したことなど自身の経歴を述べました。選挙では斜に構えられた研究も大臣としては非常に役立っていると述べ、「たくさん迷って挑戦してみてほしい」と参加者に語りました。

つづいて、デジタル庁発足については、牧島氏自らが提案書を書き実現したことを述べました。コロナ禍における10万円給付の遅れに見られるように日本の行政ではデジタル化が進んでいない危機的状況であることを説明したあと、提案書では、行政のデジタル化と行政改革、規制改革について1人の大臣が指揮をとることの必要性を訴えたことを語りました。

デジタル庁の取り組みとしては、抗原検査キットの医療用の規制緩和や学校の連絡体制デジタル化の取り組み、アジャイル型政策形成・政策評価の在り方に関するワーキンググループを立ち上げたことが紹介されました。「行政の無謬性神話」という行政学の概念もとりあげ、先例踏襲、挑戦回避、課題先送りの文化から、機敏で時代のニーズに合わせた意思決定方式に改革中であることも語りました。例えば「時間かけても間違いのないアプリをつくる」よりもバグ修正は後追いで「ニーズがあるうちにアプリを届ける」ことを目標にしたことを挙げました。

牧島氏は、デジタル庁という新しい組織についても詳しく触れました。デジタル庁で働く600人のうち200人は民間出身であり、兼業や他省兼務の方も多く働いているため、牧島氏は「言葉の定義を大切にすることを意識している」と話しました。また、フラットでオープン、透明性の高い組織にし、大臣が責任をとるのでアジャイルでよいと伝えていると述べました。リモートワークが6割で、出勤時も責任者の所在は明確にしつつフリーアドレスであることが紹介されました。

受講者との質疑応答では、大臣の日常や国会でのデジタル化の課題について触れたほか、アカデミックな知見や現場の声を政策に取り入れていること、1741の自治体の基幹業務システム20を統一・標準化する取り組みを紹介しました。メタバース空間における権利の問題は他省庁と連携しながら検討し、抜け穴のない政策づくりを進めていきたい、と話しました。行政学を学ぶ上での統計の重要性も指摘しました。

講義後、参加者からは「メディアのバイアスなしにありのままの行政の現状を知る機会を頂けたのは嬉しく感じました」「意見書が実際に形になり、現在庁のトップについているというのは非常に驚きました」「デジタル政策に関するまとめ役という印象しかなかったが、デジタル庁が包括的にデジタル政策を行うための司令塔として機能していることを認識しました」「世の中が複雑化し意思決定を円滑に進めていかなければならない中、先例の延長線上で意思決定を進めたいという思考が支配的であるというお話は、官僚主義的な意思決定方式の典型であると感じ、非常に興味深く拝聴しました」「とても細かくかつスラスラとお話されており、ご自身の大臣としての仕事だけでなくデジタル庁の仕事全体について熟知されているのだと思い、大臣観が少し変化しました」などの感想があがりました。