NEWS

2022年春季入学式を挙行

公開日:2022年4月1日

4月1日(金)、満開の桜のもと、2022年春季入学式を大学礼拝堂で執り行ない、国内外からの新たな学部生・大学院生、本学と交換留学協定を締結している大学からの留学生、合計約627人を迎えました。式典は、コロナウィルス感染予防として会場内が密になるのを避けるため、午前と午後の2部制で行いました。

式典では、1953年の献学以来、60年以上にわたり引き継がれている伝統に則り、新入生一人ひとりの名前が紹介されたほか、世界人権宣言の原則にたち大学生活を送る旨を記した誓約書に入学生全員が署名を行いました。また、学生宣誓への深い理解とともに大学生活をスタートさせてほしいという願いから、ICU生が英語翻訳を手掛けた『ビジュアル版世界人権宣言』が新入生全員へ配布されました。

そして、岩切正一郎学長が、コロナ禍の中、新たに集った新入生へ激励の言葉を贈りました。

 

岩切正一郎学長 式辞(全文)

2204011500_img02.jpg

聖書朗読:ヨハネによる福音書 第8章 31-32節

 


教養学部ならびに大学院博士前期課程・後期課程新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、オンラインでご参加くださっているご家族、ご親戚、ご友人のみなさまにも、心よりお祝い申し上げます。

この2年間、コロナ禍のもと、ICUは、始めは全面オンライン、それから少しずつ、主にハイブリッドの形で対面形式を組み入れながら、授業を継続してきました。この4月から、ようやく、一部の大人数のクラスを除いて、対面方式の授業へ戻ります。

戻るといっても、以前とおなじ形ではなく、オンラインの良さも採り入れながら、時代に合った新しい学びのスタイルを探っていくことになります。

皆さんも良くご存じのように、私たちの大学は、約70年前、第二次世界大戦にたいする反省のうえに立ち、平和の構築に寄与する人を育て、世の中へ送り出すために献学(創立)されました。1ヶ月前、突然、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まりました。ついこの前まで穏やかな日常を生きていた人々が、今は、わずかな身の回りの品だけを持って国の外へ逃れ、あるいは破壊された町に取り残され、あるいは武器を手にして敵に立ち向かう、その姿を見て、私たちはあらためて、平和を作るためには、何と戦い、何を守り、何を大切にすべきかが分かります。

私たちには、自由を享受し、幸福に生きる権利があるのです。それを脅かすもの、不当に人を支配するもの、生きる喜びを奪うものに与することはできません。大学での学びや研究を通じて、私たちは、対話と多様性に満ちた世界をどのように作って行けば良いか、生きる喜びとなるものをどのようにしていっそう確かなものとしていけば良いのか、問いかけ、見出していくことになるでしょう。

 

入学式にあたり、皆さんは、一人ひとり、学生宣誓にサインします。そこには、「世界人権宣言の原則に立ち」法を尊ぶ、と書かれています。

今日、皆さんの手元には、一冊の本が置かれています。『日英仏3言語 ビジュアル版世界人権宣言』という本です。

これは、コロナ禍のなかで、去年、ICUの学生たちが、みなさんのために作った本です。

伝統的に、新入生は全員、学生宣誓にサインしてきました。けれども、世界人権宣言には何が書いてあるのか、そこにはどのような理念が反映されているのか、実際に目を通して知っている人は、献学当初と違い、それほど多かったとは言えません。

この本は、もとはフランス語で書かれ、日本語の翻訳も出ていました。ICUは日英バイリンガルの大学ですから、そこに欠けていた英語への翻訳を自分たちで行い、人間の権利についての理解を助ける本を、4月入学の学生にも、9月入学の学生にも読める形にしたのです。在学生からみなさんへの贈り物です。どうぞ大切にして、そして、平和や人権について考えるときの参考にしてください。

この先、世界はどのように変わっていくのか、誰にも分かりません。けれども、どのような変化が起ころうと、ICUのリベラルアーツが掲げている理念、平和を希求し、人を隣人として愛し、真理を探究すること、そしてそのために対話と多様性と批判的精神を大切にすること、それらはゆるぎなく常に私たちのミッションでありつづけます。

聖書朗読にもあったように、真理は私たちを自由にします。

真理の探究は、つねに快適なものとは限りません。ときには難しさを感じることもあるでしょう。フランスの或る詩人は、ギリシャ語の諺を引いて、「難しいものは美しい」と言っています。時間のたっぷりある学生時代に、ぜひ、難しいものに、じっくり取り組んで欲しいと思います。

今年は、学生食堂も新しくなり、文理融合型の新しい建物も竣工します。その新しさのなかで皆さんを迎えることができて、とても嬉しく思います。

美しいこのキャンパスで、学びを通じて真理とつながり、広やかなものへと自分を解放しながら、豊かな学生生活を送ってください。明日は今日よりも一段と深く世界を理解している、その学びを共に深めていきましょう。