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ミドルベリー大学とICUの学生が、日系アメリカ人強制収容の歴史を訪ねる"History In Translation" プログラムに参加

公開日:2022年11月11日

2022年7月25日から8月5日にかけて、アメリカ、ロサンゼルスにて、翻訳を通して第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容の歴史を探求するプログラム、"History In Translation" が、ミドルベリー大学主催のもと行われました。

プログラムにはICUの学生団体であるICU Time Travelers* のメンバーとミドルベリー大学生が参加しました。およそ2週間にわたるプログラムでは、Go for Broke National Education Center への訪問、スタッフを含むメンバーや実際に日系2世として強制収容を体験された方との対話、歴史の持つ力や翻訳についてのワークショップ、実際に戦時中に使用されたマンザナー強制収容所跡へのフィールドトリップ、そして今回の活動を伝えるウェブサイトの作成を行いました。プログラムには、多様なバックグラウンドを持った学生が集まり、参加者たちは対話を通して自らのアイデンティティを再考したり、「違い」とどう向き合うのかについて考えを深めました。
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ICU Time Travelers 代表 浅香桃杏さんのコメント:

私たちに大きな衝撃を与えたものの一つが、実際に11,000人以上が収容された、マンザナー強制収容所跡への訪問でした。炎天下の中訪れたマンザナーは一面が砂漠の砂に覆われ、砂漠の中にぽつんと立つ慰霊塔は太陽の光を浴びて、異様なほどに力強く輝いていました。プライバシーのない洗面所や木造のバラックは当時の日系アメリカ人が強いられた生活を生々しく映し出していました。参加者は「マンザナー強制収容所跡に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わった」「今まで学んできた歴史が急に現実味を帯び、言葉にできなかった」と振り返ります。

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ロサンゼルスに戻ってからは、強制収容を経験された日系2世の方とお話をする機会に恵まれました。そこでは歴史を語り継いでいくことの過酷さ、重要性を再認識することができました。「自身に降りかかる不条理を気づくことができても、向き合うことはなかなか難しいと感じます。不条理に向き合うということは、自身の社会的弱さを認めることと等しいからです。(中略)自身の過去に向き合い、自身の物語を語ることを決意した方々の勇気に敬服します。」(参加者のリフレクションより)

2週間にわたるこれらの貴重な経験は私たちにとって、これまで学び翻訳してきた第二次世界大戦中の日系アメリカ人差別の歴史への理解を深め、自分自身も歴史の一部であることを再認識し、それを語り継ぎ発信していくことの大切さに気づくきっかけとなりました。活動の一環として作成した、活動の様子や参加者のリフレクションを記録したウェブサイトがありますのでぜひご覧ください。

History in Translation 2022

 

Kristen C. Mullins, Assistant Director, Intercultural and Global Programs and Assistant Director, Projects for Peace, Middlebury College Center for Community Engagement:

History in Translation programに参加した学生(およびスタッフ)は、大統領令9066の事実、影響、および拡大した結果について、より複雑で深い理解を深めることができました。また、より公正な現在と未来のために歴史的不正義を理解し、共有するために何が必要なのか、新たな視点を得る機会になりました。そして、なぜこのことが非常に重要なのか、ということを。これらのできごとはすべて実際に起きたことです。大統領令9066号の影響を受けた日系アメリカ人のオーラルヒストリーを翻訳するために2年以上前から協力を始めたミドルベリーとICUの学生に対し謝辞を述べたいと思います。

2022 History in Translationは、学生たちの継続的な取り組みと努力、そしてこの歴史をより広く知らしめることの重要性に対する認識によって実現したものです。今夏のプログラム参加者は、このオーラルヒストリー翻訳の活動を引き継いでくれました。私は、個人的にも仕事上でも、学生たちの努力と献身、そして素晴らしいコミュニティパートナーであるGo for Broke National Education Centerとマンザナー強制収容所跡に感謝をしています。そしてもちろん、Kathryn Wasserman Davis Collaborative in Conflict Transformationにも感謝します。これからもたくさんのICUやミドルベリー大学の学生に、この活動に参加してもらいたいと願っています。

 

ICU Time Travelersの活動について

ICU Time Travelers は第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容の歴史を学習、関連資料の翻訳をしているICUの学生団体です。2020年に実施したコミュニティサービス・ラーニング「日系人収容所共同研究プロジェクト」の成果として生まれました。主な活動として、ミドルベリー大学、ミドルベリー国際大学院モントレー校との共同プロジェクトの Service Translation に参加しています。このプロジェクトでは、Go for Broke National Education Museum と提携し、強制収容を体験した日系アメリカ人の方へのインタビュー映像を日本語話者へも届けるために、翻訳を行っています。

強制収容は、1942年、大統領令9066号の発令によって始まりました。当時大統領であったフランクリン・ルーズベルトがアメリカ西海岸に住む日系アメリカ人のスパイ行為を疑い、その結果、10万人以上もの日系アメリカ人が強制収容所に送られたのです。収容された者の多くはアメリカ市民権を保持しており、この大統領令は、日系アメリカ人に対する永続的かつ残酷な人権侵害として、認識されるようになりました。

ICU Time Travelersでは、この差別の歴史を、教科書だけでは学ぶことのできない、インタビューというリアルな形で多くの人に届けること、そしてこの歴史を二度と繰り返さないように、多様性のあるより良い社会形成のための対話のきっかけになることを理念に活動しています。