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創立記念大学礼拝を挙行

公開日:2023年6月15日

6月14日(水)、本学礼拝堂にて創立記念大学礼拝が執り行われました。

この創立記念大学礼拝は、1949年6月15日、静岡県御殿場のYMCA東山荘に集まった日本と北米のキリスト教界の指導者たちによって開催された大学組織協議会で、「国際基督教大学」が正式に創立され、同日に理事会および評議員会が組織され、大学設立の基本方針、教育計画の原則が決定されたことを記念して毎年執り行われています。

そして、今年はその創立から4年後の1953年に、文部省(当時)より学校法人として設立認可を取得。国籍、人種、宗教、文化の違いを超えて誰にでも開かれた大学として献学されてから70周年を迎える年となります。

オルバーグ, ジェレマイア宗務部長代行の司式のもとに始まった礼拝では、『讃美歌 21』第57番「ガリラヤの風かおる丘で」の合唱、そして「マタイによる福音書 28:16-20」が朗読され、本学岩切正一郎学長が「謙虚さと奉仕のうちに」と題したメッセージを述べました。

以下、岩切学長メッセージ全文

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みなさん、こんにちは。ICUは創立74年目を迎えました。今日のチャペルアワーは、この創立を記念する礼拝です。今から74年前の1949年、6月13日から16日にかけて御殿場で行われた会議で、大学の名称や設立の目的が正式に決定されました。実際に大学の授業が始まったのは、その4年後の1953年です。ですから今年は開学70周年にもあたります。

最近、理事の富岡さんが、今年のC-Weekのイベントのひとつである『ICU創設の歴史に刻まれたICUの理念』 の講演部分をYoutubeにアップしました。
そこには、ICUが、どのような歴史的状況のなかで設立されたのか、そしてキリスト教徒だけではなく、どんなに多くの市民の期待を一身に集めていたのかが、とても分かり易く示されています。まだの方は、ぜひ、ご覧になってください。
【Youtube】2023 C-Week レクチャー&対談『ICU創設の歴史に刻まれたICUの理念』(富岡徹郎)

ICUは献学の理念がはっきりしています。世界における平和構築の人材を育てる、という理念です。その平和への思いには、戦争で破壊される日常を知ったあとの人々が、信者であるか否かにかかわらず、キリスト教へ寄せていた新しい希望があったのです。それは何だったのでしょうか。
目指されていたものが、単に学問の成果をあげること、科学技術を発展させること、文化を変革し創造すること、それだけに留まっていたら、大学の名前にChristianと入れる必要はなかったでしょう。
Christianという形容詞がついているのは、大学で研究され身につける学問や知識の根底に、良識、良心があること、魂の謙虚さと誠実さがあること、それを大切にしようとしたからではないでしょうか。神ではない人間の身で、他人を支配し、殺し合い、国家を独裁する、そのような思い上がりは、もうこりごりだと、身に染みて感じていたからではないでしょうか。キリストが人間にしてくださったように、私たちは、苦しむ者や差別されている者、貧しい者を、神に愛されているひとりの人間として、隣人愛のうちに、敬い、ともに平安と幸福を求める、そのような精神で大学を営みたい。その思いがこのキャンパスを生んだのだと思います。

今年は、トロイヤー記念アーツサイエンス館の運用も始まり、このあと、旧N館の改修や本館の改修も行われます。ICUは常に変化していますが、この変化も、たくさんの可能性のなかから生まれてきます。何を壊し、何を残し、何を新しく作るのか。私たちは賢明に決定して行かなくてはなりません。歴史や伝統の継承、意義付け、そして新しいものへの挑戦。キャンパスで人生の基礎を築いた同窓生の思いも養分にして生きているICUが、創立の理念のうえにしっかり立って、ますます発展するように祈念いたします。

最後に、少し個人的な話をさせてください。
私が3年前に学長に就任したとき、モンテーニュの『エセー』に書かれている一節を印刷して、執務室の机の上に置きました。紙切れ一枚ではモンテーニュに失礼な気がしてきたので、最近それをフォトフレームに入れて飾ってあります。
その一節というのは、第2巻第12章に書いてある、こういう文章です。

私は、大学の学長などよりも賢く幸せな多くの職人や百姓たちに会ったが、どちらかというと、こういう人々にあやかりたいと思う。(『エセー』、第2巻第12章、原二郎訳)

モンテーニュの考えでは、人間を評価するときの基準は行為や行動にあり、たとえ学問があろうとも、優れた行為が伴っていなくては価値がないということになります。優れている(excellent)というのは、徳(virtue)において優れている、という意味で、それとつながっている性質には、潔白(innocence)、素朴さ(simplicity)などがあります。

私もまたシンプルでエクセレントな働きができれば良いのだけれど、と思っています。

祈りましょう。
神様、創立74年を迎えた国際基督教大学が、献学の思いに忠実に、行為と行動によって、御心に適うものでありますように。そして、謙虚さと奉仕のうちに、私たち皆が、御心に適うかたちで、賢く幸せでありますように。父と子と聖霊の御名によって、アーメン。