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本館の改修プロジェクト 起工式を執り行いました
公開日:2024年4月23日

この度、本学の主要な教室棟である大学本館の改修工事が行われることになり、4月19日(金)に起工式を執り行いました。
大学本館は、1944年に中島⾶⾏機三鷹研究所の設計本館として建設され、1953年に著名な建築家ウィリアム・メレル・ ヴォーリズによる全面改修を経て完成。その後、現在まで70年以上にわたりICUの中⼼的な建物として、在学生、教職員、同窓生などから大切に使われてきました。
しかし、長年の使用で建物・設備の随所に経年劣化が見られるため、耐震改修、快適な学生生活が送れる環境を整備するための設備更新、歴史的建築としても高い評価を得ている建物の価値を残しながら学生の安心安全を守る内装・建具更新などを行います。
具体的には、個別空調設備の新設、照明器具の交換・新設(LED化)、窓(サッシと窓ガラス)の更新による断熱性能の向上、外壁部分への断熱材の設置、教室扉の内開きへの変更および一部引き戸化の実施、正面入口・西側入口への自動ドアの新設といった教育・学修環境の向上を図ります。また、1階エントランスホールにおいては、1953年の開学時に存在していた階段室間のサッシの復元、中島飛行機時代の天井の補修・復元などを行い、開学当時の面影を呼び起こします。

式には、本学関係者並びに工事関係者約40名が列席しました。北中晶子大学牧師の司式で執り行われ、起工の辞では、大成建設株式会社常務執行役員東京支店長中村 有孝氏が、本学を代表して計画責任者である中嶋隆財務理事が感謝の言葉と本館改修プロジェクトへの思いを述べました。中嶋理事からは2013年からのキャンパス整備計画の締めくくりとして本館改修プロジェクトがあることに触れ、すべての同窓生が学んできた本館、大学の献学理念を具現化している本館の改修プロジェクトが無事に進行し、学生・教職員にとって喜ばしいものとなることを祈念しました。
つづいて、式辞において北中牧師は、戦争のための建物だった本館が教育・平和のための建物として用いられ、改修により使い続けられる意義について、イザヤ書2章4節を引用しながら述べ、お祈りいたしました(全文は以下参照)。
礼拝後、本学の岩切正一郎学長と竹内弘高理事長が挨拶に立ちました。岩切学長は、学長就任前の本館での20年以上にわたる授業の思い出に触れ、時間を感じさせる歴史的な建物を残す意義について語りました。また、竹内理事長からは自身の学生時代を振り返りながら学びの場でもあり出会いの場でもある本館を次世代にバトンタッチできることへの歓びと改修への期待を述べました。
本館の完成は、2025年2月末の予定です。
北中晶子牧師 本館改修プロジェクト起工式 式辞
本日は二名の方に起工の辞としてお話して頂きました。このプロジェクトに関わってこられた方々は他にもまだまだ大勢いらっしゃいます。たくさんの方々の力が合わさって、本館改修は段階的に、一歩一歩、実現に近づき、今ようやくその時を迎えています。

振り返ればこの本館の改修は、それ自体が物議を醸すこととして数年前まで真剣に議論されました。建物の強度・安全性はどこまで保てるのか、学生数が増し、大学の規模が変化するにつれ、この建物を使い続ける意義はあるのか、などなど、理事会、教職員、学生、さらに同窓生まで、多方面の関係者を巻き込んで、方針が決まるまで実にさまざまな意見が飛び交ったことを思い起こします。
その難しい議論を経て現在の方針が決まるに至り、まずは新しいトロイヤー記念館(T館)の建築、その次に旧理学館の改修、その次にようやく本館の改修が実現可能となりました。新しいT館の建築の頃はまだコロナ禍の真っ最中で、「教育を止めてはならない」という学長先生のお言葉があちこちで繰り返されました。まさに、大学が授業を止めるわけにはいかないからこそ、たくさんの教室を抱えた本館を改修するということは、知恵と工夫を要する大変な計画であったことは想像に難くありません。
そして、それだけの大変な労力と、時間と、また費用とをかけて、なぜ本館を使い続けるのか、何のために残すのか、ということが、この計画において、やはり重要な鍵となっていたことを感じずにはいられません。理学館の時も、ディッフェンドルファー記念館の時もそうでした。なぜ、取り壊さないのか、なぜ、手間暇をかけて使い続けるのか、と問うことは、これらの判断が、常に大学のよって立つ価値観を十分に反映したものであってほしいという、願いから出てくるものと思います。そして、ここ本館においてこの願い、この問いは、ICUキャンパスの他のどの教育施設よりも、一層切実であったと言って良いように思います。なぜなら、この建物は大学の創立以前から、第二次世界大戦下の日本で戦争に貢献するために作られ使われた、戦争のための建物であった歴史を持っているからです。戦争が終わり、本学の創立が実現し、その時この建物は、教育のため、平和のために用いられるものへと生まれ変わりました。このような象徴的な建物は、キャンパスの中でここ本館をおいて他にありません。以来、約70年間にわたり、本館はICUの教育の場であり、大学の顔であり続けてきました。70年余りの月日の間、ICUの学生たちは、ここで過ごして参りました。
先ほどお読みした聖書の箇所は、このような本館の特別な意義を忘れないように、2011年12月「本館誕生70周年」を記念する式典で、正面入り口の柱に埋め込まれた記念板に刻まれたものです。世界の平和を示す聖書の言葉として、ニューヨーク国連広場に刻まれていることでもよく知られています。
「こうして彼らはそのつるぎを打ちかえて、すきとし、
そのやりを打ちかえて、かまとし、
国は国にむかって、つるぎをあげず、
彼らはもはや戦いのことを学ばない。」

剣や槍は戦いの道具ですが、同じこれらを打ちかえて、鋤や鎌など、農具とする―旧約聖書のイザヤ書が語る預言は、国と国とが互いに戦うために槍や剣を研ぐ日々はやがて終わりを迎え、大地を耕し、命を繋ぎ、生きるための平和の道具としてこられが使われる日を描いています。戦いのことを学ばないとは、戦争の歴史を学ばないという意味ではありません。戦争の方法を研究し、殺すため、勝つために学ぶことは、やめるということです。研究と学びを通して求めるべきことは、もっと他に、限りなくたくさんあるからです。
ICUの本館は、このようなイザヤの預言と響き合う特別な歴史を歩んできました。もちろん、これが現実のこととして実現されるためには、たゆまぬ努力と探究とが不可欠です。21世紀を担う若者たちが学ぶ場として、さらに未来へと命を繋いだ本館が、そのような努力と探究の場であり続けますようにと心から願ってやみません。国際基督教大学の献学の理念を常に表す建物として、二度と戦争のために使われることなく、いつまでも平和のために使われますように。
この改修工事が、そのための一歩となりますように。
お祈り致します。
主なる神さま、悲惨な戦争のただ中に誕生した建物が、御心によって、平和の道具として、国際基督教大学本館となりました。建物の使命がこれからも豊かに実現されますように、改修工事のすべての工程を守り、そこに携わるすべての方々の安全をお守りください。このプロジェクトがあなたの祝福を受け、やがて工事の完成後、新たにここに学生達を迎える大きな器として、用いられますように。
主イエス・キリストの御名によってお祈り致します。アーメン