NEWS

「2024年度ファカルティ・リトリート」を開催

公開日:2025年3月12日

2025年2月28日、2024年度ファカルティ・リトリートが東ヶ崎潔記念ダイアログハウス国際会議室にて開催されました。

ICU では毎年ファカルティ・デベロップメント(FD)の一環として、全教育職員が一堂に会して行う研修「ファカルティ・リトリート」を開催しています。今年度は完全対面開催とし、司会はエスキルドセン, ロバート学務副学長(VPAA)が務め、約8割にあたる約120名の教職員が参加しました。今年度は「Liberal Arts for Tomorrow」をテーマとし、プレゼンテーション、パネルディスカッション、グループディスカッションが行われました。

 

祈祷、VPAAによる挨拶の後、はじめに岩切学長が基調講演を行いました。

fr20025_02.jpg

学長基調講演の様子

基調講演では日頃学長が、オープンキャンパスなどで伝えているICUの基盤となる考え方について話がありました。まず、ICUの学科名でもある「アーツ・サイエンス」は、未知のものを探求し発見してゆく行為としての「Science」(知ること)と、いまだ形になっていない新しいものを他者と共有できる形にする技術・学術としての「Arts」を示していると説明しました。また、ICUにある31のメジャー(専修分野)や一般教育・語学・保健体育などのプログラムは「リベラルアーツ」という知の集合体を構成するエレメントであると述べた上で、学生を多様な知のネットワークを自分の中に構築する能力を持った「広やかな視座を持った専門家(A Specialist with a Universal Mind)」として育成することを教職員のミッションとして共有しました。最後に、今回のリトリートへの期待を述べました。

 

つづいて、3つのトピックに対して3名の教員がそれぞれ問題提議のためのプレゼンテーションを行いました。

  1. 「学際的なコースを創ろう」(山崎 歴舟 准教授 自然科学デパートメント)
    山崎准教授は、現代社会に生じている複雑な問題の本質を捉えるには、多角的な視点や学際的な学びが求められているとした上で、授業でいかに学際性と学生の知識量を高めるかのヒントを自身の授業の例をもとに述べました。なかにはポストヒューマンをテーマとした複数の教員と開講するチームティーチングの科目や、ゲストレクチャーとして講義を行った授業などの紹介がありました。最後に、ICUには学際性を育むリソースがたくさんあるため、異なる分野、異なる人、異なるトピックを広げていく経験をしてほしいと参加教職員に呼びかけました。
  2.  

  3. 「多様な学生に専門科目をどう教えるか」(ボーランド, ジャネット助教 歴史学デパートメント)
    ボーランド助教は多様な学生が出席する授業において、自身の専門である歴史をどのように教えているか発表しました。学生の好奇心をかき立て、学びをより深めるために、ボーランド先生の授業では、まず最初にある歴史資料に関する簡単な問いかけを行ったのちに、学生に様々な視点による問いかけを考えるブレインストーミングを行ってもらうことで、学生同士の交流を促進し、互いに学びあえるクラスになるよう、工夫している旨を紹介をしました。また、教員自身も個々の学生のことを知ることが大切であると述べた上で、専門的な知識を教えるということだけでなく、卒業後のキャリアや生活に役に立つ基礎的で価値あるスキルを教えることを授業で意識していると語りました。
  4.  

  5. 「学際的な卒業研究の効果的な指導について」ボンディー, クリストファー 上級准教授 社会・文化・メディアデパートメント
    ボンディー上級准教授は、自身の専門分野である社会学を超えて、多岐にわたる分野の卒業研究を指導してきたことから、学際的な卒業研究を指導する際に気を付けていることについて述べました。分野間で異なる知識、方法論や引用方法、そして評価の難しさなどの課題がありつつも、学際的な卒業研究を指導するにあたって重要な教員の役割は、自身の指導経験に基づき、学生が情熱を持って研究に取り組むことを後押し、質問を重ね、学びの喜びを分かち合うことであると強調しました。また、学際的な学びの集大成として、論文だけでなく、インターンシップや卒業制作など様々な形でのキャップストーンプロジェクト(学びの総仕上げとして、実施・実践を伴うプログラム)の可能性を示唆しました。

 

プレゼンテーション後のパネルディスカッションでは、モデレーターとして那須教授を迎え、プレゼンテーションをした3名の教員に加えて、藤井彰子准教授 (教育学・言語教育デパートメント)とカーショー,マシュー F.インストラクター(リベラルアーツ英語プログラム)も登壇し、各トピックに関する質疑応答、意見交換が行われました。

fr20025_03.jpg

パネルディスカッションの様子

 

その後行われたグループディスカッションでは、トピックごとに11のグループに分かれ、自由で活発な意見交換が行われました。グループディスカッションの最後には、ディスカッションから生まれた新しい視点やアイディアを書き込んだポストイットをポスターに貼り、その後のフィードバックセッションでは、それぞれのグループの掲示を見ながら、自由に意見を交わす時間が設けられました。

最後に、生駒教養学部長より、総括として、今回のリトリートで生まれたユニークなアイディアや視点をぜひ参加者のティーチング、アドバイジングに活かしてほしいと話がありました。

 

参加した教職員からは以下のようなコメントがありました。

  • 学際的な授業を組み立てるにも人的ネットワークは欠かせないので、今回のリトリートでは昼食も含めて有意義な時間となった。
  • 先生方によるプレゼンもとても参考になったし、色々な先生方と新しい学際的なコースを作るというテーマでディスカッションして、ワクワクした。
  • 多くの教職員が様々な意見を出して活発にディスカッションができる素晴らしい会だった。

 

今回のファカルティ・リトリートは、参加者ひとりひとりがICUのエッセンスについて一層理解を深め、「Liberal Arts for Tomorrow」について深く考える機会となりました。学生への還元が期待できる、非常に満足度の高い、実り多いファカルティ・リトリートとなりました。