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Leaders Across Borders 2025に本学学生が参加しました
公開日:2025年8月12日

2025年5月20日~27日の7日間、Leaders Across Borders Workshop(LAB)が開催され、ICU教養学部3年生の相原 葵さんが参加しました。LABとは、Global Liberal Arts Alliance(GLAA)のメンバーであるOhio Wesleyan Universityが主催する平和と和解について考えるプログラムです。
ワークショップは北アイルランドのバリーキャッスル、Corrymeela Centre for Reconciliationで行われました。Corrymeelaとは、1965年に北アイルランド紛争の暴力と分極化で苦しむ個人やコミュニティを支援するために設立されたコミュニティーです。現在は青少年団体、学校団体、地域団体などを受け入れ、平和と和解をテーマにしたワークショップを定期的に行っています。
ICUが加盟しているGlobal Liberal Arts Alliance(GLAA)の加盟校から推薦された24名の学生がこのワークショップに参加し、約2か月にわたる事前事後課題を含むプログラムを通じて、参加学生は1960年代後半に始まった北アイルランドの紛争、特に「アイデンティティの衝突」に焦点を当てながら、対話・議論を深め、リーダーシップと和平について学びました。
【相原 葵さんのコメント】
リーダーとして、他者に働きかけ、共感を呼び起こす力を身につけたいと考え、このプログラムに応募しました。高校時代にはウクライナ支援の募金活動を行いましたが、同世代から十分な共感を得ることができませんでした。その経験から、想いを伝えるだけでなく、他者の心を動かし、行動を促すような「インスパイアする力」を持つ人間になりたいと強く思うようになりました。多様な価値観が共存する現代社会において、課題を解決するためには、人をまとめ、チームとして前進していく力が不可欠であると考えています。その基盤となるのが、信頼と対話に根ざしたコミュニケーション能力だと思いました。
プログラム前半の3日間はベルファストで過ごし、現地のガイドとともに街を歩きながら、今も残る「分断の痕跡」について学びました。実際に、宗教的背景の異なる地区の間には夜間になると閉じられるゲートが存在しており、対立の記憶が物理的に今も日常に残っていることを目の当たりにしました。プログラム後半は、対話と和解のための施設「Corrymeela」で3日間を過ごし、対立を乗り越えるために求められるリーダーシップについて、ワークショップを通じて考えました。特に印象的だったのは、色鉛筆を使ったゲーム型のワークショップです。参加者が赤・青・緑の色を選び、相手チームとの組み合わせで得点が変わるというルールのもと、緑を出した相手の意図を読み違えたことにより、対立的な空気が生まれるという体験をしました。このワークを通して、「相手に敵意がなくても、状況や受け取り方次第で対立は深まる」という構造的な問題の存在に気づかされました。
また、対話や衝突に対する向き合い方は、人それぞれ、あるいは文化ごとに大きく異なるということを、現地の事例と参加者同士の対話を通じて実感しました。発言のしやすさ、「謝罪」や「許し」に対する姿勢、その背景にある社会規範や慣習の違いは、対話の成立そのものに影響を与えるのだと感じました。特に印象的だったのは、宗教的な対立に見える背景に、実は政治的対立が存在していたという事実です。そして、街に残る壁やゲートの存在が、今なおその緊張を象徴しています。それでも、対立を超えた友情に触れる機会を通して、人々が互いに信頼関係を築くことができれば、対立を乗り越えることは可能であるという希望も感じました。
今後は、誰もが安心して声を上げられるような対話の場をつくり、異なる背景を持つ人々の間に信頼関係を育むことができるリーダーを目指していきたいと思っています。そのためには、自らの言葉に一貫性を持ち、相手を理解しようとする姿勢を貫くとともに、自分自身の弱さや未熟さも受け入れることが大切だと感じています。リーダーとは、常に前に立つ存在である必要はありません。むしろ、対話が途切れそうな瞬間にこそ、相互理解の橋を架ける役割を担えるような存在でありたいと思っています。

左:バリーキャッスル近くのコーズウェイにて
右:ベルファストにて、石が投げ込まれた教会の窓。信仰の場さえも、分断と暴力を免れなかったことを静かに物語る争いの痕跡

左:人種間対立を疑似体験するアクティビティで、マイノリティ側の交渉代理人として戦略を練った際の話し合いをまとめたもの
右:ベルファストのプロテスタント地区にて、希望、和解、そして勇気を象徴する、カトリックの芸術家が制作した作品