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根本かおる氏による講演会「国連創設80年 What can you do to make a difference looking ahead」を開催
公開日:2025年10月21日
2025年10月16日、元国連大使であり卒業生の吉川元偉特別招聘教授が大学院科目「国際関係と外交」において、ゲストスピーカーとして国際連合(以下、国連)広報センター所長の根本かおる氏を招き、「国連創設80年 What can you do to make a difference looking ahead(変化を起こすためにあなたができること)」と題する講演会を英語で行いました。根本氏は1996年に報道記者から転身し国連難民高等弁務官事務所の職員としてネパールのブータン難民等を最前線で支援後、国連広報センター所長に応募し現在に至ります。当日は会場とオンラインあわせて約50名の学部生・大学院生・教員が参加しました。
根本氏はまず会場に「2050年の世界をどのように思い描きますか?あなたはどのような役割を担いたいですか?」と問いかけ、これを念頭に講演を聞くよう促しました。
根本氏は、国連が2025年で創設80周年となり、第二次世界大戦後、悲惨な戦争を二度と起こさない「Never Again」という決意から創立されたと述べました。また、冷戦では安全保障理事会が機能しないなどの限界が見られたものの、アフリカ諸国の独立を支援し、当初の国連憲章には明記されていなかった平和維持活動(PKO)を展開するなどの成果をあげてきたことを述べました。2015年にはSDGs目標が設定され、同年にはより拘束力のあるパリ協定が合意されました。しかし、国連は転換期にきています。ウクライナやガザで人道的な問題があっても国連安全保障理事会で合意に至っていない点、さらに危惧されることは、安全保障理事会の機能不全が表沙汰されることで、総会による決議や、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の懸命な活動、国際司法裁判所(ICJ)のジェノサイドに関する判決などが過小評価されてしまうことだと根本氏は語りました。そして、国連事務総長の提言を起点に加盟国が国連の変革のために採択した 「Pact for the Future」を例示しました。
一方で、国連は加盟国が議決権をもつ組織であり、国連職員はファシリテートや補佐の役割に留まるとも根本氏は述べました。国連は加盟国が強い意志をもって臨むとき調整の場として最適に機能する。今年6月の「国連海洋会議」をホストしたフランスが、「公海の生物多様性のための条約」の批准を各国に強く呼びかけ、発効に必要な数の批准の見込みを取り付けたこともそのよい例として挙げました。また、数カ国が不安定になるだけで世界的に影響が及ぶため、国益と国際的な利益はイコールなのだと語りました。
最後に根本氏は、国連憲章が「We, the people」から始まることを示し、国連は加盟国のためではなく、人々一人ひとりのためにあることを投げかけました。パリ協定はもともとはバヌアツ共和国の若者による提言を政府が吸い上げたことから始まっているという例を挙げました。そして、2025年からPeace Circleという若者による対話を促進する活動が国連で始まったことを挙げ、日本でも2026年から展開予定だと話しました。
講演後の質疑応答では、今後の世界の行方と国連や日本の役割、4万以上ものマンデートを抱える国連の今後の運営、経費負担しない加盟国に関する規程、国連の民間からの募金活動、根本氏が国連に関わるようになったきっかけ、安全保障理事会の改革の実現性など多様な質問があがりました。吉川教授からは安全保障理事会の構成を改革するためには国連憲章の改正が必要であるが、国連総会での改正案採択には満場一致ではなく加盟国の2/3の賛成票があればよく、その際常任理事国は拒否権を持っていないこと、その後の各国議会での批准では、常任理事国を含む2/3の賛成票を集めれば改正できる点を補足しました。
多面的な機能をもち、全人類の平和のためにある国連の転換期において、国連をどのようによきものにしていくか、考えを深める貴重な機会となりました。