NEWS
アテネ・デモクラシーフォーラム2025に本学学生が参加しました
公開日:2025年12月15日

2025年10月1日から10月3日の3日間、ギリシャ・アテネにて
アテネ・デモクラシーフォーラム2025(Athens Democracy Forum/ADF)が開催され、戸井彩乃さん(教養学部4年生、ダブルメジャー:平和研究を専攻、メディア・コミュニケーション・カルチャー(MCC)を副専攻)が参加しました。
このフォーラムは、非営利団体Democracy & Culture FoundationとNew York Timesが共催し、民主主義の原則と基本的自由を守り、持続させるための戦略を探るとともに、世界に広がる分断や課題に対して問題提起を行うことを目的としています。
今年のテーマは 「New Visions for Hard Realities」。世界各地で選挙が行われた「選挙の年」を経て、民主主義に対する失望と変革への渇望という二つの潮流が浮き彫りになりました。フォーラムでは、社会の動揺、経済的不安、複数の戦争、急速な技術革新、気候危機の混乱といった現実を直視し、それらに対する政治的対応や民主主義の再生の可能性について議論しました。
ICUが加盟するGlobal Liberal Arts Alliance(GLAA)は、世界30の加盟校から学生をADFに招待しており、今年は22名の大学生が約1週間にわたりアテネに滞在しました。会議前後の準備や振り返りを含め、第一線で活躍する専門家と対話し、ユースならではの視点で議論を深めました。
【戸井彩乃さんのコメント】
アテネ・デモクラシー・フォーラム2025に応募したきっかけは、ICUや留学先で持続的な平和や開発について学ぶ中で、「民主主義」という概念に多く触れる機会があり、その重要性を実感するようになったからです。同時に、各国の歴史的背景や政治体制、経済状況の違いによって、民主主義のあり方や捉え方が大きく異なることにも気づきました。一市民として、また今後のキャリアを考える上でも、この概念に向き合い、世界の人々が考える民主主義の役割やイメージについて理解を深めたいと考え、参加を決めました。
フォーラムでは、人口知能(AI)の急速な発展と倫理・規制の問題、権威主義やポピュリズム、気候変動に加え、それらが外交や貿易に及ぼす影響について、専門家による活発な議論が行われました。今年はイスラエル・パレスチナ紛争も多く取り上げられました。議論を通して、課題が浮き彫りになる一方で、民主主義の可能性も感じました。民主主義には「政府の責任」と「市民の責任」という二つの側面があります。特に印象的だったのは、立憲君主制をとるカタールのMajed Al-Ansari氏が、政府の役割は市民の声を聞くだけでなく、それを形にすることも同様に重要だと述べ、その国にとって一番機能している制度の形をとるべきだと語っていた点です。一方で市民には、制度を理解し、それが自分や他者のために機能しているかを見届ける責任があります。NGOで活動する人々や、市民としての義務感から参加する個人など、世界各地で様々な形で市民の力を発揮している姿に触れ、民主主義の維持には政府と市民双方の継続的な努力が必要であることに気づかされました。私自身、今後市民としての自覚を持ち、市民としての責任は何か問い続けたいと思います。
また、世界中のリベラルアーツ大学から集まった学生との対話も貴重な体験でした。各国の課題だけでなく、今後一緒に向き合う課題についても同世代と話し合いました。意見の違いもある中、異なる考え方も理解しつつ自分の見解も伝えることの重要性を感じました。同時に、このような議論の場において、日本やアジアの視点が少ないと感じる場面もあり、日本やアジアの学生が発信していくことの重要性も改めて認識しました。今後も多くのICUの学生が積極的に挑戦することを期待します。
最後に、このような貴重な機会を与えてくださったICUの先生方、職員の皆様、GLAAの先生方、そして共に語り合った24名の学生に感謝いたします。ありがとうございました。
