SpotLight

リベラルアーツの明日を照らす

教員発信のICU

メールマガジン Message from ICU, No.13 「ICUの入試改革」

公開日:2024年10月21日

2025年度入試改革のポイント:21世紀に入ってからICU教養学部では、グローバル化に対応した大きな入試改革を3回実施してきました。日本の高校の学習指導要領改訂の完成年度にあたる2025年度入試では、国内の各大学と同様にICUでもそれに対応した改革をしています。
ICUの入学者選抜は、どの方法・方式でもアドミッション・ポリシー(入学者受入れ方針)に示された4つの資質を持つ学生像とICUのリベラルアーツ教育への適性を

全国の中等教育に携わる先生方へ向けてメールマガジンを発行しています。なお、配信を希望される方は、以下よりお申込みください。

メールマガジン登録フォーム


Message from ICU , No.13(2024年10月18日発行)

 

はじめに ~ICUの入試~
ICUの入試は、日本の一般的な入試方式と異なることから、わかりにくい、特殊な対策が必要といったご意見を日頃からいただきます。少人数クラスで対話を重視する環境で、自律的に生き生きと学べるか、ICUの入試では、そのような入学後のリベラルアーツへの適性を測ります。本学に関心のある生徒には、特別な対策を考えるのではなく、まずは高校での授業にしっかり参加し、共通テストなどの受験勉強を行うことで基礎学力を高めることの重要性をご指導ください。ICUが求める学生像は、未知なものを恐れず挑戦する、そういう前向きな学生であり、他大と一線を画する入試を受験すること自体が、すでにICUの求める学生の資質を持っていることに繋がると、生徒の背中を押していただければと思います。
毎年、教員が自分たちの授業を受けることになる受験生をイメージし、分野を超えて協力しながら作成する渾身の入試問題は、ICUが目指すリベラルアーツそのものです。未来のICU生に向けた大学からのメッセージとして、受け止めてもらえればと思います。

ICUの入試改革について

アドミッションズ・センター長 毛利勝彦

2025年度入試改革のポイント
21世紀に入ってからICU教養学部では、グローバル化に対応した大きな入試改革を3回実施してきました。日本の高校の学習指導要領改訂の完成年度にあたる2025年度入試では、国内の各大学と同様にICUでもそれに対応した改革をしています。

ICUの入学者選抜は、どの方法・方式でもアドミッション・ポリシー(入学者受入れ方針)に示された4つの資質を持つ学生像とICUのリベラルアーツ教育への適性を見究める入試問題を作成していることに変更はありません。4つの資質とは、端的に言えば、知的好奇心、論理的思考力・批判的思考力、対話力、チャレンジ精神です。

また、日本の大学として文部科学省から毎年通知される「大学入学者選抜実施要項」の内容を踏まえて中立かつ公平・公正な入試を実施することにも変更はありません。この文科省のガイドラインに示されている入試方法ごとに、今回どのような入試改革が行われたのか、そのポイントを解説します。

 

併願しやすい一般選抜
まずは、指定された試験科目を受験する「一般選抜」。ICUでは毎年2月上旬に実施しています。ICUの一般選抜の試験科目は単なる学力検査ではなく、適性試験です。そのため、特にマニュアル的な受験対策は必要ありません。「総合教養(ATLAS)」、「人文・社会科学」、「自然科学」、「英語(リスニングを含む)」の4つの試験科目があります。それぞれ、ICUの一般教育科目、人文科学・社会科学分野の基礎科目、自然科学分野の基礎科目、リベラルアーツ英語プログラム(ELA)の授業を擬似体験する内容だと考えてください。
表1に示したように、これらのうち3科目あるいは2科目の組み合わせによって、4つの方式を選択できます。入学後のメジャー選択や日英バイリンガル教育のリハーサルだと思って楽しんで受験してください。

4つの方式のうち、3つまで同時併願できるようになったのが今回の一般選抜改革の大きなポイントの1つです。従来よりも各試験科目の試験時間が短縮されたために、1日で3方式の試験科目が受験可能となります。一般選抜の入学検定料は従来よりも引き下げ、併願割引も強化し、受験機会を増やす一方で受験生の負担軽減を図っています。

一般選抜の方式を併願できるだけでなく、出願資格さえ合えば帰国生選抜や総合型選抜との併願も可能です。とりわけ帰国生選抜や総合型選抜と、一般選抜の日英バイリンガル面接利用や英語外部試験利用は併願しやすい試験科目設定となっています。一般選抜の英語外部試験利用が要求する公式スコアはICUが提携している英語圏の大学へのすぐにでも交換留学可能なレベルとしています。日英バイリンガル面接利用は一般選抜の「英語(リスニングを含む)」を利用しますので、日英両語のスピーキング能力を第二次選考の個人面接で確認します。いわゆる「私立大学2科目型」や「私立大学3科目型」というタイプなので、他大学との併願もしやすい一般選抜になっていると思います。転編入を検討されている方も一般選抜のどの方式でも受験いただけます。

ICUならではの帰国生選抜
外国における教育事情の違いを経験した帰国生徒向けの選抜については、他大学では廃止する傾向も見られますが、ICUでは帰国生が持つ教育背景の多様性を包摂することがリベラルアーツ教育の強みになると考えていますので、4月入学帰国生選抜を今後も続けます。
「帰国生」の定義は大学によって若干差異があるのですが、ICUでは「外国の教育制度で中・高等学校を通じ2年以上継続して教育を受けた者」としています。つまり、日本国内に存在する学校でもインターナショナル・スクールやIB認定校など「外国の教育制度」で学んでいれば、その対象となりえます。その一方で、海外に設置された学校でも、日本の教育制度による学校だけで学んだ方は対象となりません。国内外を問わず、日本と外国の教育制度で学んだ経験を持つ方もいらっしゃいますが、「外国の教育制度で中・高等学校を通じ2年以上継続」して教育を受けていれば、最終学年が海外の学校でなくてもICUの4月入学帰国生選抜の対象になりえます。

志願者が増加している総合型選抜
主要私立大学の総合型選抜への志願者は増加傾向にあります。ICUの総合型選抜では、英語外部試験利用と理数探究型とI B認定校対象の3つの方式からいずれかを選んでいただけます。総合型選抜の英語外部試験利用では、一般選抜の英語外部試験利用とは異なり、公式スコアの最低点を設定していません。理数探究型では、校外の各種研究発表会などで発表した自然科学分野での自主研究や理数探究基礎・理数探究の授業で自主的に取り組んだ成果の要約をプレゼンテーションしていただきます。I B認定校対象では、課題論文(Extended Essay)の内容と成果の要約をプレゼンテーションしていただきます。このように理数探究型とIB認定校対象では高校での授業の主体的な取り組みがそのまま入試に活かせる機会となっています。高校の進路指導の教諭の皆さんにもぜひこの点を周知したいと思います。

学校推薦型選抜・社会人選抜の問題公表
毎年11月に実施している学校推薦型選抜の「小論文」の内容と試験時間を変更しました。小論文の資料は、ICUの専任教員が書き下ろした特定トピックについての学術的論文です。それを熟読した上で、2問程度の設問に対して記述式(小論文形式)で解答していただきます。試験時間は70分間です。試験問題の過去問は、大学のホームページ等で公表します。
社会人選抜の受験者にも、学校推薦型選抜と同じ日程で同じ内容の「小論文」が課されます。これまでの社会人選抜は一般選抜と同じ日程と同じ内容の試験を受けていただいていたのですが、年度末に勤務先を退職する手続をとることは必ずしも容易ではないという社会人学生の声もあったため、年内に入試日程を変更しました。もちろんこれまでと同様に、社会人の方が新しい一般選抜を受験いただくことも可能です。

 

多様な言語背景を持つ方向けのELBAとEJU利用選抜
ICUの入試が他大学と異なる点の1つは、日本だけでなく世界各国の多様な教育制度で学んだ方を考慮していることです。文字通り、ユニヴァーサル・アドミッションを実現しています。入学者の多様性を確保する観点から、英語によるELBA(English Language Based Admissions)と英語も日本語も第一言語でない方向けのEJU(日本留学試験)利用選抜も実施しています。いずれも入学時期は4月と9月の両方が可能です。入学後に履修する語学プログラムは、ELBAはJLP(日本語教育プログラム)です。EJU利用選抜は、ELA(リベラルアーツ英語プログラム)かJLPのどちらかとなります。

ユニヴァーサル・アドミッションの3つの方式である4月入学帰国生選抜、ELBA、EJU利用選抜は、入学者選抜のために来日する必要がない渡日前入学許可を実施しています。4月入学帰国生選抜、ELBA Type B、EJU利用選抜の第二次選考では、オンライン面接を実施しますが、ELBAのType A(SAT, ACT plus Writing, IBDP, GCE A Levelのスコア提出が必要)ではオンライン面接はありません。また、これまで実施していた予測スコアによる条件付き合格(Conditional Offer)を廃止しました。その理由は、10月入学が多い他大学と異なりICUの9月入学は9月1日スタートとなりますので、条件付き合格だと在留資格認定証明書(COE)の交付が間に合わない事例が多く発生してしまいました。この問題を解決するため、たとえ予測スコアであったとしても、それによって合否判定がなされるようになります。

狭き門より入りなさい?
ICUでは創立時から日英バイリンガル教育を貫いていますので、それが入試方法にも反映されています。一般選抜、4月入学帰国生選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜、社会人選抜の合格者の卒業要件としての必修語学教育科目はELAで、ELBAの場合はJLPとなります。EJU利用選抜の場合は、ELAかJLPのどちらかとなります。入学後のレイト・スペシャリゼーションでは、入試方法に関わらず、メジャーやマイナーを自由に選択することができます。
ICUは小規模のリベラルアーツ・カレッジであり、それぞれの入試方法の定員は必ずしも多くありません。「狭き門より入りなさい」という言葉もありますが、狭き門は一つではありません。出願要件さえ合えば、複数の狭き門を叩く機会があります。ゲストとしてICUに体験入学すると思って皆さんに合った門を叩いていただければ、きっと門は開かれます。

 


<プロフィール>
アドミッションズ・センター長 毛利勝彦
1994年カールトン大学(カナダ)で政治学博士号(Ph .D.)取得。教養学部教授、社会科学研究所長。専門は国際関係学、グローバル研究。2004年ICU着任。アドミッションズ・センター長、教養学部長を経て、2023年より再びアドミッションズ・センター長。著書・編著書に『グローバル・ガバナンスの世紀』(東信堂)、『ディベートで学ぶ国際関係』(玉川大学出版部)、『ケースで学ぶ国際開発』(東信堂)、Teaching International Relations with Cases (Westview Press)、『生物多様性をめぐる国際関係』(大学教育出版)、『サステナビリティ変革への加速』(東信堂)など。


教員発信のICU 一覧に戻る