大学院概要
大学院部長メッセージ
大きく変容する国際社会
広い視野で専門分野を深め、未来を切り拓く人材を育てる大学院
石生 義人
ISHIO, Yoshito
現在の国際社会は大きな変容の波の中にあります。例えば、急速な地球温暖化が人々の環境に影響を与え始め、その対応が喫緊の課題となっています。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、パレスチナのガザ地区におけるイスラエルとハマスの紛争など、平和を構築しようとする国際社会の努力が脅かされる事態も起こっています。そして、米国新政権が打ち出している様々な政策が、世界にもたらす影響は大きく、政治・経済・社会が今後どのように変わっていくのか見極めるのが難しいため、やや混沌としているように見受けられます。このような現況において、平和や人間の尊厳といった普遍的な価値を見失わず、現実の問題をしっかりと見極める姿勢が私たちには求められます。その一方で、様々な文化に根差した多様な価値観を理解・尊重し、十分にコミュニケーションを取ることの必要性も従来以上に求められている時代です。したがって、現在の多種多様な課題解決には、高度に専門化された分野の知識だけでなく、分野横断的な視点を持った学生の育成を目指す大学院プログラムが求められているのです。このように大きく変容する国際社会にあって、ICUの大学院は、直面する諸課題の背景を広い視野で多面的に理解し、高い志と判断力を備えて未来を切り拓く能力を持った人材を育てるプログラムを提供しています。
リベラルアーツ教育の伝統と革新性に根ざし専門知とともに学際性を培う大学院
ICUの大学院は、1 研究科・4 専攻・13専修分野から構成され、リベラルアーツ教育の伝統と革新性に根差し、国際性と教育力に定評のある大学の大学院として、優れたプログラムを提供しています。ICUの大学院では、狭い分野の専門知識を深めることを中心とする従来の大学院プログラムとは異なり、研究科内のどの授業も原則自由に受講することができます。そのため、専門性を深めながらも、学際的な研究を行うことが可能です。また、博士前期課程で全員に課される修士論文では、自分で課題設定を行い、先行研究の知見を学んで研究の問いを深め、研究課題にふさわしい方法論を学び、調査を行い、論文を執筆していきます。こうした学術的営みの全過程を、少人数教育を大切にするICUの大学院だからこそ可能になる、きめ細かい指導でサポートしています。また、学部の授業においてティーチングアシスタントを務める機会もあり、学部授業の運営について学ぶこともできます。 ICUの大学院は、世界中から留学生を受け入れており、海外からの留学生は、希望すれば、日本語の語学プログラム(学部の授業)を履修することもできます。また、国際的な人材交流・育成のため、留学生受け入れプログラムの「ロータリー平和フェローシップ」・「人材育成奨学計画(JDS)プログラム」を実施しています。よって、世界各国からの留学生と共に、国際的な教授陣によって提供される大学院科目を少人数で履修し、議論し、専門知識を身につけることが可能です。このような国際的な教育環境であるため、日本出身の学生にとっては、海外に留学し大学院教育を受けているような経験を得ることが可能です。一方、海外からの学生にとっては、日本や他の国々からの学生と、多様で包摂的な環境で学ぶことが可能です。ICUの大学院には、博士後期課程もあります。また、2019年から新たに、リベラルアーツの素養をもった実務家養成のため、「国際バカロレア(IB)教員養成プログラム」を開始しました。 このように、専門知と学際性を培う、学生にとってはまたとない機会が与えられるのがICUの大学院の魅力です。
研究科概要
授与学位
博士前期課程、後期課程では、次の学位を取得することが可能です。
学位一覧 アーツ・サイエンス研究科
研究科 | 課程 | 専攻 | 専修分野 | 学位 |
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アーツ・サイエンス 研究科 |
博士前期課程 | 心理・教育学 | 教育学 | 修士(教育学) |
心理学 | ||||
言語教育 | ||||
公共政策・社会研究 | 政治・国際研究 | 修士(行政学)または修士(国際関係学) | ||
社会文化分析 | 修士(社会文化分析) | |||
メディアと言語 | 修士(メディアと言語) | |||
公共経済学 | 修士(公共経済学) | |||
平和研究 | 修士(平和研究) | |||
比較文化 | 日本文化研究 | 修士(比較文化) | ||
超学域文化研究 | ||||
理学 | 数学・情報科学 | 修士(理学) | ||
物質科学 | ||||
生命科学 | ||||
博士後期課程 | アーツ・サイエンス | 博士(学術) |
教育システム
学年暦について
入学:入学時期は4月と9月の2回あり、どなたでもいずれかの入学期を選ぶことが可能です。詳細については入学案内ページをご覧ください。
卒業:卒業時期は3月と6月の2回あり、海外留学、就職などの進路に合わせて卒業できます。
3学期制:一年を春、秋、冬の3つの学期に分けて、学期ごとに授業を完結させる3学期制を採用しています。
授業について
1時限は70分授業です。授業科目の単位数が、一週間における授業時間数(実験実習等を除く)を表します。
言語について
日本語開講と英語開講の授業があり、学生はその中から状況に応じて授業を選択していきます。日本人学生と留学生が同じ授業を受ける中で、お互いの語学スキルもアップしていきます。
研究に必要な英語能力を習得する英語科目や、留学生に対する日本語プログラムを、それぞれ用意しています。
なお、公共政策・社会研究専攻については、英語での授業のみで、修士の学位を取得することも可能です。
共通科目について
本学研究科は、基礎知識と専門的な論文作成、コンピューティング、領域研究スキルを育成するため以下の学際的共通科目を導入しています。
研究方法や論文作成、発表スキルの向上を図るため、学生は、少なくともこれらの科目からひとつを履修しなければなりません。
一年次の履修が望まれます。
授業科目名:現場実習による専門学習
自己の研究課題に関わることが、実際の社会の現実の中でどのように活かされているかを、実地で経験することは、研究のモチベーションを強め、また研究の新たな展開を発見することにつながります。このコースでは、研究分野の異なる大学院生が、それぞれに専門を活かした分野で、社会貢献あるいはインターンシップを行うとともに、その経験によって得られた知見を全体で報告し合うことにより、研究分野を超えた異分野間のコミュニケーションの能力を高めることも目標とします。実地経験の場所は、NGO/NPO、政府機関、国際機関、博物館、学校。
授業科目名:研究者のための論文作成法(英語)
このコースでは、それぞれの研究分野に必要な研究論文作成の方法を身につけることを目標とし、各学問分野に共通する学術論文の書き方を学びます。たとえば読み手の想定、必要とされる記述事項の明確化、情報の組み立て、論理的記述、データ分析等を訓練します。また、文例を分析し、専門領域に特有な文体や、内容及び書式を理解します。学習した内容をふまえて、実際に論文を作成します。
授業科目名:研究者のための論文作成法(日本語)
日本語での学術論文の書き方は研究領域や分野で異なる点がありますが、このコースでは代表的な学術論文のフォーマットおよびスタイルも含め、学術論文の基本的な構成を説明します。その後特定の主題を選び、実際に論文を書きながら訂正・修正・削除・加筆などの指導を受け、よりよい論文の書き方を学びます。
授業科目名:研究者のためのデータ活用と分析
コンピュータをツールとして活用し、研究論文作成に必要な基本要素の理解および実技を通してスキルを身につけることを目標とします。膨大な情報から必要な情報を検索・抽出し、それらを必要な形態に変換するデータ処理、データの可視化に必要なグラフ作成のスキルなどを学びます。また、データ分析の基礎を学ぶとともに、実技によって実際の方法を学び、最後に文書整型ツールを利用した、学術論文などの作成を行います。
学位論文審査基準
博士前期課程
- 研究課題が明確に設定されていること。
- 研究の方法が具体的に記載されていること。
- 先行研究を十分に理解、検討し、研究内容の学術的な位置づけが明示されていること。
- 文献が適切に引用されていること。
- 論文の内容が、独自の観点を有していること。
博士後期課程
- 研究課題が明確に設定されていること。
- 研究の方法が具体的に記載されていること。
- 先行研究を十分に理解、検討し、研究内容の学術的な位置づけが明示されていること。
- 研究内容が明確かつ論理的に記述されていること。
- 文献が適切に引用されていること。
- 論文の内容が新奇性を有し、内容が当該研究分野及び社会に対し新しい知見を含むこと。
特徴
日本語と英語のバイリンガル教育を基礎に、世界と日本を結ぶ架け橋としての役割を担う高い専門生を備えた指導的な人材を育成することを目的とした、大学院の特徴を紹介します。

ICUの歩み
第二次世界大戦敗戦直後、「キリスト教精神にもとづく総合大学設立」を願う日本の教育に携わるキリスト者に、アメリカのキリスト教関係者が賛同し、日本とアメリカでICU設立のための募金活動が行われました。そして、1953年4月日本初のリベラルアーツカレッジとして国際基督教大学教養学部は生まれました。また、設立当初からの「大学院教育に重点をおく」という構想に基づき、1957年4月に大学院教育学研究科、1963年行政学研究科、1976年比較文化研究科、1987年には理学研究科を開設しました。そして2010年4月、学際的教育を目指し4研究科を統合し、「アーツ・サイエンス研究科」として生まれ変わりました。
美しく多様性のあるキャンパス
広いキャンパス内に学生寮を完備、海外からの留学生も国内の学生と一緒に生活をともにしています。様々な国籍の学生と教員がキャンパスで出会い、個々の「違い」を受け入れて互いを尊重し、教育・研究できる環境の中で、グローバルな人材を育成しています。
ICU環境宣言
ICUは、その美しいキャンパスにおいて比類なく美しい自然と、貴重な文化遺産を擁しています。ICUはこの環境を天恵の財として、その保全に責を負うことを宣言しています。

日英バイリンガル教育
広いキャンパス内に学生寮を完備、海外からの留学生も国内の学生と一緒に生活をともにしています。様々な国籍の学生と教員がキャンパスで出会い、個々の「違い」を受け入れて互いを尊重し、教育・研究できる環境の中で、グローバルな人材を育成しています。

「対話」を重視した学び
リベラルアーツカレッジとして、ICUが最も重視しているのは、教員と学生の「対話」です。「誰が、何について、どう考えているのか」を互いに共有し、対話の中から新しいアイデアを引き出そうとするスタイルは、教員一人ひとりの「学生の個を尊重し、可能性を引き出そう」とする強い意識の現れです。
多国籍なキャンパス
TA制度
Teaching Assistantとして授業の補助をすることにより、教員から直に教育方法等を学びながら、報酬を得られます。大学院生の研究活動を経済的にサポートするとともに、ICUの学部教育におけるきめ細かい教育の充実・維持に貢献する制度です。
卒業後の進路
ICUでは少人数制を活かして、就職ガイダンス、就職登録者全員対象の個別相談などを実施し、一人ひとりの学生が納得のいく進路を見つけられるようにきめ細やかな就職支援を行っています。就職活動に必要な情報や資料の閲覧はもちろん、OB・OG検索のための専用PCも設置しています。また、働くことについての意識を高めることを目的としたキャリアセミナーをはじめ、業界研究会、会社説明会、公務員・就職マナーなどの各種 セミナー、就職活動体験発表会など数々の行事を開催しています。
近年の進路状況はこちら
詳しくは、キャリアサポート・オフィスのウェブサイトをご覧ください。