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ICU・上智大学共催シンポジウム「高等教育における国際的な深い学びの実現に向けて」を開催

公開日:2025年1月16日

2026年1月11日、本学のトロイヤー記念アーツ・サイエンス館において、「高等教育における国際的な深い学びの実現に向けて―学修成果の可視化と学びのデザイン」を開催しました。

冒頭、岩切正一郎学長の開会の辞において、本学が上智大学とともに、日本から唯一の大学としてOECDの「高等教育における学生の創造的で批判的な思考のスキル」と題した国際プロジェクトに2019年から2023年まで参画したこと、その後も、上智大学・杉村美紀学長が代表を務める研究プロジェクトに2大学の研究者が関わり、環境研究、多文化教育、サービス・ラーニングの分野で学際的、国際的な学びの深化を実証的に検証してきた経緯が説明されました。

続いて、基調講演者として、名古屋大学教育発達科学研究科の渡邉雅子教授より「論理的思考の文化的基盤ー日本の大学における国際的な深い学びへの示唆」と題した講演、および東北大学国際交流担当副理事・高度教養教育・学生支援機構グローバルラーニングセンター長の末松和子教授により「東北大学における国際共修のデザインと成果」と題した講演が行われました。渡邉教授より、日本、アメリカ、フランス、イランの論理的思考の4つの型について具体的な事例を基に丁寧に説明され、これらの思考方法によって創造性と批判的思考力は異なる意味を持つこと、これらには社会文化的な背景が深く関わっていること、こうした思考の型を理解することによって多元的思考法を学び、国際的・学際的で深い対話と学びを実現できる可能性について話されました。末松教授からは、東北大学が実現した包括的国際共修の背景にある理念と意図、さまざまなアクター間のインタラクションを可能にする制度の構築、国際共修ルーブリックの開発プロセスについて明快に説明され、留学という典型的な国際的な学びを超えて、国内において多様性を包摂する方法論が提示されました。

基調講演を受けて、基調講演者に加え、上智大学学長の杉村美紀教授、上智大学グローバル教育センターの杉浦未希子教授、国際基督教大学の藤沼良典教授によるパネルディスカッションが行われました。司会は国際基督教大学の西村幹子教授が務めました。

まず、基調講演とOECDプロジェクトを通して2大学が行ってきた実証研究を踏まえ、国際的な深い学びの実現を実現するための鍵となるポイントについて議論されました。藤沼教授からは、学生自らが、自ら能力の変化を実感できる振り返りの機会の重要性が指摘されました。また、杉浦教授は、多様な他者と議論することにより、自己相対化し、他者とともに「つながり」を発見することが学びを深化させるとの実証研究結果が共有されました。杉村学長からは、多様な文化的背景をもつ学生の集団においては、教育の意義や制度自体を問うような根本的で深い問いが出されることがあり、学生も教員も共に当たり前を疑うことができる教授法と環境を整えることの重要性が指摘されました。

また、今後の高等教育にどのような変革が求められるか、という観点について議論されました。渡邉教授からは、多様な思考法を理解し、多元的な思考に敏感になることによって、場面や文脈に応じた対話力や課題解決能力を身につける教養教育の重要性が指摘されました。末松教授からは、教室内、研究室内といった狭い範囲で学びを捉える視点を変え、学生自身のさまざまな経験知を共有しながら、学生生活全体で学びを包摂的、包括的に捉えていく学習者中心の視点が鍵であると提案されました。杉村学長は、今後の高等教育を「量から質」であり、持続可能な開発等、広い視野で学びの意味を捉える変革的な教育の実現が必要になると指摘されました。杉浦教授は、ある留学生が批判的思考は「感謝」であると話したエピソードを共有し、批判的思考というのは、自分を知る思考のプロセスであり、深い思考が自らと関連付けられるような場を共有することの重要性が提案されました。藤沼教授からは、体系的知や技術的な知に基づいた正解ではなく、当たり前とされている考えに挑戦し、自らの考えを他者に伝わる形で提示できるような場を学修プロセスにおいて保障することが、創造性を高めるとの発言がありました。

100名以上が集った会場からも、さまざまな文化的な背景をもつ学生を指導する上での難しさや、経験的学修法が制度化された場合の課題などが共有され、制度化する際の課題を克服する方法や多元的思考の汎用性について、活発な議論が展開されました。

最後に、上智大学の杉村美紀学長による閉会の辞において、これまでの研究を振り返り、創造性や批判的思考力といった能力を国際的・学際的に深めていくという本シンポジウムの課題の重要性が強調され、本シンポジウムに集った基調講演者・パネリスト・参加者とともに、不確実な時代の中でも理想的な教育を追求していくことが呼びかけられました。

本シンポジウムにおける議論に共通したテーマとして、高等教育における国際共修や学修の振り返りは、学習者のエージェンシーに働きかけること、経験知を共有し、多元的思考を身に付けることにより、自己発見、自己効力感、自己相対化、文化摩擦の緩和(納得感を持って違いを受け入れる)につながること、多様性を包摂性につなげる意図の継続的な共有とその効果の可視化によって大学における制度文化が醸成されること、高等教育における課外活動を含む多様な個人間の意味のあるインタラクションは、さらにはより大きなレベルで社会に対する自らのポジショナリティや学びの意義の再発見につながること、が確認されました。高等教育の今後の方向性として、意図的に多元的思考に触れる機会を増やしていくことが重要であることも認識されました。