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時枝正スタンフォード大学教授によるNSフォーラムを開催
公開日:2026年1月19日

2025年12月15日より3回にわたり、スタンフォード大学 時枝 正教授を招いてNSフォーラムがトロイヤー記念アーツ・サイエンス館で開催されました。NSフォーラムは、自然科学デパートメントが学外の研究者の最新の技術や研究を紹介するセミナーシリーズです。
今回は「紙ひとえからの世界」「数も式もない計算」「切ったり貼ったり手品ショー」という題目でそれぞれ講演されました。司会は山崎歴舟准教授が務め、会場にはオンライン含めて各回学生・教職員 約200名が参加しました。一般教育科目「N1:物理の世界(A)- 科学的な考え方」の履修生も受講しました。
時枝教授は、AIMS (African Institute for Mathematical Sciences) やYouTubeチャネル Numberphile などを基点に啓発活動も行っており、4 年に1 度の国際数学者会議 (International Congress of Mathematicians)でも過去2回講演しており、2026 年にも講演を予定しています。
12月17日に開催された「数も式もない計算」の講演では、紙の帯とそれをS字型に留めたクリップ2つと帯にぶらさげた輪ゴムを利用したマジックショーを実演しながら、紙の帯の両端をゆっくり引っ張った場合の結果を参加者に予想してもらい、結果がなぜそうなるかを考察しました。また、紙の帯に留めるクリップや絡めるゴムの数を増やした場合、向き付けを変えた場合、これらを組み合わせた場合、結果がどのように異なるかも検討しました。講演では、実験の前後を毎回注意して見ること、その結果をもとに次の実験の結果を予想することが大切であると強調されました。
クリップやゴムが見事に短系列や長系列に連結するショーに関連して、講義ではボロメオの絡み目も紹介されました。2つのリングは絡まっていないのに3つあわせると絡まっている不思議なこの絡み目は、1つを外すと全てのリングが外れてしまいます。岩登り中にカラビナの位置を変えることにより絡み目が解け落下する事故が数学的に解説されました。
最後に、時枝教授は「初めて遭う現象なのにその結果をいったいどうやって予測できたのか」と会場に問いかけました。時枝教授は以下の3つの過程があったことを示しました。
- 1)研究材料が実験者や道具に依らず、決定論的かつ抽象的であること
- 2)理屈を追求すること
- 3)形式的パターンが新しい発見への手引きになること。
そして、この過程こそが「計算」であることを伝え、講演を締めくくりました。
講義後の質疑応答では数学の教え方や究者としての姿勢など、学生との活発な意見交換がなされました。時枝教授からは、未解決の研究に集団で取り組むプログラムに参加することも必要な一方で、そのプログラムの外にある「科学の芽」を自ら見つけ育てることが科学の美しさを解き明かすことになること、社会の要請に応えることも生きていくには必要だが現在の社会構造が唯一だと思わなくてよいこと、今回の実験は群構造などの計算にも応用できる可能性があること、十進法や二進法、十二進法のそれぞれのメリット・デメリット、などが挙げられました。
参加した学生からは以下のようなコメントがありました。
- 堅苦しい物理の話ではなく、折り紙や紙などの私たちの身近にあるものを使い面白くまた、日常に潜む"なぜ?"を解決してくれる面白い講義でした。少し物理に対する堅苦しいイメージがなくなりました。日常に溢れている物理、私ももう少し勉強して普段無視しがちな疑問を少しずつ理解していけたらいいなと感じました。少しお茶目な一面も垣間見えて素敵でした。
- 講義全体を通じて、実験から学ぶことの重要性を実感しました。今の時代、なんでもAIに頼ってしまい、一旦自分で手を動かして、トライアンドエラーすることの重要性を忘れかけていましたが、今回改めて、それだけでは未知の問題に取り組むことができないと感じました。
- 三浦折りが特に印象に残っています。
今まで、物理とは見えないモノを計算するような学問だと思っていました。三浦折りに限らず、時枝先生の講義全体を通して物理が見えるモノでもあるのだと感じることができました。 - 今週の授業を通して机の上で知識を詰め込むことだけが学びではないということを改めて実感しました。先生が実際に紙を使って実験しているのを見て、学びを可視化する、実際に試す、それこそが物理だけではなく学びの真骨頂なのかなと強く感じました。
- 物理が苦手な私にとっては、こんな私が果たして理解する事ができる講義なのか少し身構えていました。しかし、教授の講義は、実際に目の前で実践しながら、視覚的にも問題の内容を理解させてくれるプロセスで構成されており、とても興味深く、楽しい時間でした。物理が苦手な私でも、自分の中に数学の扉がある事を教えてくれる貴重な講義だったと感じています。
- 時枝先生のレクチャーを聞き、マジックショーを見て数学を肌で体験し、数学とは本質的に楽しいものだと気付かされた。私は数学の授業を多数受講しているが、内容を理解したかや計算があってるかに注目しがちだ。それも大事だが、時枝先生を通して、それ以上に数学の閃きの面白さ、数学や物理をする楽しさに気づいた。例えば、最後のレクチャーは紙一枚から考えられる数学だった。数学は堅苦しい式の羅列ではなく、紙とクリップからの自然法則を見つける楽しさだと気付かされた。数学や自然法則の本質は世界の秘密を自分で切り開いていくことだと感銘を受けた。
- 3回すべての講義を聞き、数学が好きになりました。私は高校の時に文系であまり数学が何をしているのか、何のためにしているのか理解できず、数学があまり好きではありませんでした。しかし、時枝先生の講義は自然現象を数学で説明していて、数学はこの世界の自然現象のなぞを解明するためのツールであることを実感し、数学を初めて面白いと感じることができました。先生の隣で昼食をとったときは、錯覚など非常に興味深い話をしていただき、とてもうれしかったです。また、私の「得意」と「好き」の違いの質問にも真摯に回答していただきました。「数学は音楽と違い、得意から好きになる」という言葉は、私の記憶に深く刻まれています。
数や式も使わなくても立派な計算ができること、そもそも計算とは何かを発見する貴重な講演となりました。
