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研究プロジェクト

鋼鉄中のわずかな炭素を素粒子で透視する
―ミュオンによる新しい非破壊微量軽元素分析法の開発―

公開日:2024年04月02日
 

国際基督教大学の久保謙哉教授らの研究グループは、量子ビームの一つであるミュオンを用いて、鋼鉄中に含まれる微量な炭素を非破壊で定量する方法を開発しました。

鋼鉄中の炭素は、鋼鉄の性質を決める重要な元素ですが、その分析は化学処理を伴う破壊的な方法で行われています。今回、研究グループは、世界最高強度のミュオンビームを利用して、鋼鉄内部の微量の炭素を、位置選択的かつ非破壊で分析することに世界で初めて成功しました。物質中に捕らえられたミュオンの寿命は、捕らえた元素によって変化します。この性質を巧みに利用することで、鋼鉄に微量に含まれる炭素の量を感度良く検出することができるようになりました。

本研究の成果は、人類にとって最も重要な物質の一つである鋼鉄の品質管理にミュオン分析という新たな選択肢を与えるとともに、文化財などの貴重資料に新たな分析法を提供するものです。例えば日本刀は、鋼鉄でできていますが、その製法は地域や時代によって異なっており、炭素の存在量を調べることは、失われた製法を再現する上で重要な情報を与えます。このように本研究の成果は、ミュオン利用の新たな可能性を拓くものとなります。

久保教授からのコメント

大学時代の同級生である齋藤努さんの日本刀の研究にヒントを得て,素粒子ミュオンを使った鉄鋼の新しい分析法を2018年に思いつきました.うまく行きそうなことはすぐにわかったのですが,磨き上げて論文になるまでにはいろいろな試行錯誤と工夫が必要でした.これから実際に日本刀の分析を行うのが楽しみです.

詳しくはプレスリリースをご覧ください。