学部・大学院案内(パンフレット)

ICU入学案内「2025」Web特別コンテンツ

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多民族国家で多様な価値観を持つ人々といかに交渉を進めるか。その能力の原点はICUで磨かれた

アフリカ各国の事業開発を支援し、経済発展を促す仕事

阿部 私と都さんは、住友商事でアフリカの事業開発を担う部署に所属し、急速な経済発展が期待されているアフリカ各国への事業開発支援、事業投資に携わっています。アフリカと一口に言っても54もの国があり、まだまだ開発の手が及ばない国もあれば、ケニアのようにお洒落なレストランやコーヒーショップが多数ある国もあります。それと同時に、1,500以上の多数の民族集団が暮らす他民族大陸でもあります。そうした中で、現地政府や事業者と連携を組み、ビジネスで人々の暮らしを豊かにするというのが私たちの役割です。

 アフリカはまさに人種・多様性の坩堝で、基本的なインフラ整備もまだまだ途上の国もたくさんあります。私たちは、「より便利に、快適に、安心して暮らしたい」という現地の方々の思いに応え、国や民族の違いを超えて誰もが豊かな暮らしを享受できるようなサービス・インフラを提供していきたいと思っています。

阿部 私たちが現在取り組んでいるのは、アフリカ諸国における通信事業の拡張と整備です。私の場合は、ケニアにおけるスマートフォンの普及事業に携わっています。事業投資先との共同事業開発では、どのようなサービスを提供すれば、現地の方々に買っていただけるのかを考え、ビジネスプランを構築しています。

 私はエチオピアでの通信サービス事業を担当しています。また、阿部さんがスマートフォン市場の開拓を行っている一方、私の場合は、担当する通信サービス事業会社は立ち上げ期で、携帯電話のネットワーク・通信インフラの整備拡張が主な仕事となります。

日本の常識が全く通用しない多民族国家で、意思統一を促し事業を進める難しさ

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阿部 ケニアとエチオピアは同じアフリカでも、ビジネス環境が異なり、ビジネスの難しさも変わってきますよね。私が担当するケニアは、アフリカでも投資が集中するとされる「ビッグ4」の1国で、大規模なショッピングモールや日本でよく見かけるようなファストフード店が立ち並ぶほどの経済発展を遂げている国です。その反面、安定収入がないために銀行口座を持たず、経済的な信用を必要とする金融サービスを利用できない人々が7割を占めており、日本とはビジネス環境が異なる側面もあります。

私は当初、日本国内で実績のあるビジネスプランを思い描いていたのですが、現地に渡って実情を肌で感じ、それでは全く通用しないことを痛感しました。現在は先進国での成功事例を活かしつつ、現地の実情を学びながら、投資先企業と一緒にその国にそったサービスを構築することに挑戦しています。

 日本の常識が全く通用しない難しさは、市場だけでなく日々の業務においても感じますね。一緒にプロジェクトを進めているパートナーは多国籍企業、各国政府機関で、それぞれ欧州、米国、アフリカに拠点を置き、重視するポイントも異なります。また、エチオピアの事業会社には、様々なバックグラウンドを持つ多国籍プロフェッショナルの他、エチオピア現地人材も数多く活躍しています。さまざまなステークホルダーが関わる会議では発言の一つひとつにも神経を使い、全体の意見をまとめてプロジェクトを進めることには難しさと共に大きなやりがいをいつも感じています。

ICUで学んでいなければ、アフリカに来ることすらなかったかもしれない

阿部 そうした部族の違い、国の違いも含め、バックグラウンドの異なるさまざまな人と意思疎通を図り友好関係を築く力、共に力を合わせてプロジェクトを前に進めようとする力の原点は、ICUで培われたのではないかと思っています。

 本当にそう思いますね。私の高校時代はペーパーテストの成績を上げることしか興味がなくて、自分の人生やキャリアの選択もテストのようなものと捉えていた時期もありました。ところが自分より成績が良かった友人が「ICUに行く」と言い出したのです。理由を聞くと、「ICUでしかできないこと、学べないことがある」ということでした。

そこからICUに興味を持ち、調べてみると他大学にはないユニークな魅力があることを知り、入学しました。ICU入学後は思い切り鍛えられました。何よりもディスカッションベースで行われる授業にはかなり戸惑い、これまで先生から教わったことを覚えるスタイルで学んできたのに、ICUでは「君はこの問題、そして私の考えについてどう考える?」と、先生から問いかけられるのです。先生の考えに対して「自分はどう考えるか」なんて意見したこともありません。なかなか発言できない中、学友たちは議論の応酬をはじめ、私の学ぶことに対する考え方は大きく変わりました。

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そして私にとって特に大きな転機となったのが、ジェンダー・セクシュアリー研究の授業での出来事です。その授業では、自身の経験も踏まえながらディスカッションをする機会があり、自分には見えていなかった他者の生きづらさや経験に衝撃を受けましたし、同時に自分の視野の狭さを思い知らされました。それから私は、ジェンダー・セクシュアリティ研究に関心を持つようになり、また、政治学の視点からこの問題を捉えようと考え、両者をダブルメジャーで専攻することに決めました。
「自分が知らない多様な考えや、苦しみ、理想が、この世界にはあるのだ」。ICUでの学びを経て得たその気づきと知見は、アフリカで異なるバックグラウンドや主義主張を持つ方々と意見交換しながらプロジェクトを進める上で重要なマインドセットとなっています。
仕事の進め方も含めてこちらの価値観を一方的に押しつけるのではなく、それぞれに文化や考え方、さまざまな事情や損得勘定が異なることを理解し、粘り強く対話を重ねて議論の落としどころを探し求めていく。もしICUで学んでいなかったら、相手を尊重してディスカッションを重ねる訓練をしていなかったら、今と同じように交渉をまとめるのは難しかったかもしれませんし、そもそもこの仕事を選んでいなかったと思います。

今までの価値観にはない数々の出会いが、今の仕事につながっている

阿部 私がICUを選んだ理由は、国際的な仕事をしたかったからです。そのためには英語「を」学ぶだけではなく、英語「で」幅広い領域を学べるICUが最適だと考えました。オープンキャンパスに行ったとき、学生同士、先生同士、あるいは学生と先生が教室や本館前の芝生広場、学食でも、談笑や議論に花を咲かせる光景を目の当たりにしたことも大きかったです。とても自由でエネルギッシュな印象を受けて、強烈な憧れを抱きました。

その印象は、入学してさらに強まりました。都さんが言うように、私の場合も高校までの価値観が変わった体験にICUでの学びの原点があるかもしれません。私も高校生の頃は、「何点取れた?」「どの教科が点数取りやすい?」ということが関心事でしたが、ICUで出会った友人たちは皆「どのメジャーが面白い?」「あの授業が興味深い!」といった話題で盛り上がっていて、とにかく新たな知識を得ることに貪欲なのです。「知識欲のかたまりのようなエネルギッシュな人たちの中に身を置いて、自らを高めていきたい」。そう実感できたことが、アメリカ カリフォルニア大学バークレー校への交換留学につながりました。
留学先には現地の学生だけでなく、アジア、ヨーロッパ、アフリカなどの世界各地から集まった留学生がいて、多国籍な環境の中でさまざまな意見交換を行いました。つい「的外れな発言をしては恥ずかしい」という気持ちで大人しくしていると、授業を受ける姿勢としてはマイナスに評価されてしまいます。クラスメイトたちは競うように自身の考えを率直に述べ、議論をしかけます。日々、まさに脳に汗をかくようなやり取り、作業の連続で鍛えられたからこそ、今の仕事も楽しみながら行うことができているのだと思います。

想像もつかない自己変革と成長の4年間を、ICUで楽しんでほしい

 ICUを一言で表すなら「規格外の出会い」です。私は、高校まではひたすら受験勉強に力を費やし、自分が当たり前と考えていたレールを進むことしか考えていませんでした。しかしICUで、想像もしていなかった出会いや体験をいくつも経て、今はアフリカを舞台に仕事をしています。これからICUに入学する皆さんもきっと、さまざまな「規格外」の衝撃を体験することになるでしょう。その中でつかんだ新しい興味、心から学びたいと思うテーマを追究してほしいと思います。

阿部 私も都さんと同じ意見です。ぜひ、自分の価値観が崩壊する体験をICUでしてほしいですね。今の皆さんでは想像もつかないような自己変革と成長の4年間を、ぜひ楽しんでください。

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阿部えみ子
住友商事株式会社
スマートサービス事業第二部 主任
2016年卒(東京都/カリタス女子高等学校出身)

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都雄飛
住友商事株式会社
スマートインフラ事業第二部 主任
2019年卒(愛媛県/今治西高等学校出身)

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ICU入学案内「2025」(学部)

ICUの特色や学びを中心に、ICUの特徴であるLiberal Artsを体験し、知ることができるパンフレットです。
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