WHAT'S
LIBERAL ARTS?
リベラルアーツを体験する。

問い

一瞬とはどのくらいの
長さなのか。

教授陣による 回答③

「アジア通貨危機」 から「一瞬」を考える

「アジア通貨危機」から「一瞬」を考える

時の刻み方の感覚を共有するのは困難であるが、
大きなショックが短期間でもたらされた時、
実際の長さとは関係なく「一瞬」の出来事と
感じるのではないだろうか

時の刻み方の感覚を共有するのは困難である。しかし、大きなショックが短期間でもたらされた時、実際の長さとは関係なく「一瞬」の出来事と感じるのではないだろうか。

1997年、タイの通貨であるバーツをめぐって、タイ中央銀行とヘッジファンドを中心とする投資ファンドとの攻防が繰り広げられた。当初タイは自国通貨を守り抜く見込みを持っていたが、最終的に政策の変更を余儀なくされる。実は、この両者による攻防の最終局面である1週間で、タイ中央銀行が所有していた外貨準備は枯渇したと言われている。タイ中央銀行においては、一瞬の出来事であったに違いない。タイ政府の政策変更、すなわちドルペッグ制から変動相場制への移行は、実質的なタイバーツの切り下げとなり、その影響は瞬く間に派生し、市場は大混乱となった。これは、タイを震源地とし、アジア全体に派生した、アジア通貨危機での出来事である。これには、巨額の資本移動を可能とした金融のグローバル化が背景にある。

各国の経済政策や自国通貨を買い支えられなかったという点に対し、厳しい意見が出されることもある。しかし同時に、人々の日常、長い年月をかけた積み重ねが、一瞬にして奪われたという現実にも目を向ける必要があろう。そして、その影響は特に社会的に脆弱な立場に置かれた人を、より厳しい環境に追いやったのである(UNICEF, 2009)。タイの隣国マレーシアでも経済が大混乱した。当時、マレーシアの首相であったマハティール氏※1は、会合やメディアを通し、このような為替取引は倫理的に問題であり規制をかけるべきだと強く主張した。

アジア通貨危機は短期間に強いショックを与え、それは一瞬の出来事のようであった。しかし、通貨危機がもたらした人々への影響は深刻で、生活が一変した人も多く、それらの人にとっては一瞬ではない、長く困難な時間が続いたのである。

※1 2018年5月にマハティール氏は15年ぶりに首相に復帰し、2020年2月に辞任を発表した。
UNICEF (2009) Impact of the global economic crisis on children in East Asia and the Pacific: a mid-year update on UNICEF policy and program responses, Bangkok: UNICEF Regional Office for East Asia and the Pacific.

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