サービス・ラーニング

サービス・ラーニング
-生涯にわたって他者と世界平和のために批判的に考え行動するための経験的学修-

サービス・ラーニングは、サービス(または、自発的な社会貢献をめざすボランティア)活動を通した学びを意味しています。社会の中のさまざま課題に対して人びとと共に共通の目的を持ち、それに対して自分事として取り組み、さらにはそうした課題に関する既存の知と自らの経験から得られた学びを結び付けることによって、新たな考え方、行動の仕方、自分自身のあり方を省察(リフレクション)しながら発展させる意図を持った経験的学修プログラムです。

サービス活動をするに当たって課題意識や自らの立ち位置(ポジショナリティ)を意識することで、批判的思考力、行動力を養い、多様性、相互性、寛容性を心がけたコミュニケーション能力をつけることで地球市民としてのアイデンティティを身に付け、自らが社会と関わっていくことの意味を見出します。学術的な知と経験的な知を分けるのではなく、その間をつなぐことは、学生一人ひとりが能動的に自らの視点を得ていくことにもつながります。リベラルアーツ教育は、個々の専門的な知を大切にするだけではなく、それを統合することの大切さを強調し、心の教育を通して市民性を育むことにも力を入れます。ICUでは、サービス・ラーニングを通して、学生が生涯にわたり、他者のために、そして大きくは世界の平和のために、批判的に考え行動し続けることのできる生涯学習者(ライフロング・ラーナー)として成長することを目標としています。

サービス・ラーニング3つのステップ

ICUでは、サービスの経験が、単なる体験にとどまらず確実に生きた学びとなるよう、「GE: サービス・ラーニング(一般教育)」(春学期は日本語開講、秋学期は英語開講)、「サービス・ラーニングの実習準備(海外対象)」を履修し(事前学習)、主に夏休みの約30日間に及ぶ実習の後、「振り返り」となる科目を履修(事後学習)するという、通年にわたるカリキュラムでプログラムに取り組んでいます。

サービス・ラーニング関連科目の中心となるのが、「サービス・ラーニング実習」です。これは、活動先により「コミュニティ・サービス・ラーニング」、「国際サービス・ラーニング」に分かれています。国内のサービス・ラーニングは夏休みだけではく年間を通して活動することが可能で、春学期と秋学期に登録するシステムになっています。また、学際的なメジャーの専門科目として履修することもできます。実習コースには活動受け入れ先と学生の間で設計して行われるもの、大学がプログラムとして提携先大学と提供するもの、教員が企画して実施するもの等、多彩なプログラムがあります。また、学修成果ルブリックを導入し、学修目標を可視化しています。

コミュニティ・サービス・ラーニング

コミュニティ・サービス・ラーニングは、国内のNPOや自治体等の公的機関、福祉施設等でサービス活動を行うプログラムで、1999年にスタートしました。コース開設当初からICUと関係の深い機関へ継続的に学生を派遣しています。その他にも、教育や福祉、環境、国際問題、地域社会など学生が自分の興味と関心に合わせて活動先を新しく開拓し、自ら受入の交渉をして決定する場合もあります。そのプロセスや現場を通して、身近な地域社会について深く学べることが大きな魅力です。

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近年の主な活動先機関

※実習先の機関活動内容、期間、派遣人数は年によって変動します。

  • 一般社団法人 ドチャベンジャーズ(秋田県五城目町)
  • 学校法人 アジア学院
  • 長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)/公益財団法人長崎平和推進協会
  • 特定非営利活動法人アジアキリスト教教育基金(ACEF)
  • 特定非営利活動法人 ARUN Seed
  • Glocal みたか
  • 有限会社メノビレッジ長沼
これまでの実績一覧


一般社団法人 ドチャベンジャーズ(秋田県五城目町)

町出身者と移住者からなるまちづくり団体です。 人口減少、高齢化、担い手不足、移住・定住など様々な課題において、行政組織では難しく、かつ個人レベルで担うには荷が重い課題を企業・個人がそれぞれ得意とする分野で解決の糸口を見つけることを目指しています。 コミュニティビルディング、まちづくり、場作り、空き家活用、コワーキングスペース運用、廃校オフィス運営、事業支援、学習するコミュニティ作りなどの活動をしています。

参加者の声
サービス・ラーニングは大学で習った知識を実践で活かせることが大きな魅力だと思います。さらに普段の生活では出会えない人と交流し、五城目のゆったりした時間や人の温かさを感じることで、自分の人生が豊かになると思います。活動の中で印象に残っているのは、コミュニティの中に入ることの重要性です。当初は問題意識を持って、問題に関連すること、知りたいことをインタビューすることに集中していました。しかし、中間リフレクションで活動先の方に「それあんまり求められてないんじゃない?」「とりあえず中に入ってみなよ」と言われました。そこからよそ者がどのようにコミュニティの中に入ればいいのかという問いを追及するようになりました。自己開示をアドバイスされましたが、自分のどの部分を開示し相手と交流するために何を聞けばよいか分からず、その「コミュニティの中に入る」という行為が、どうサービスやラーニングに結びつくのかということを考え続けて30日間の活動が終了しました。具体的な見かけのサービスが本質的なサービスではないということ、想定外の行動が受け取り側からしたらサービスになることを学べたと思います。

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長崎平和推進協会

長崎大学との協定によって、2019年夏に新たに加わったプログラム。原爆の悲惨さを伝え、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を目指す長崎平和推進協会の活動をサポートします。「青少年ピースボランティア」や、全国の中高生が集う「青少年ピースフォーラム」の参加を中心に、原爆資料館のボランティアや長崎大学の研修などにも参加します。また、活動の一環として、8月9日の平和祈念式典にも参加することができます。

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参加者の声
さまざまな視点から、平和や原爆、戦争や権力について向き合い、思考するとても良い経験になりました。中でも、長崎平和推進協会の活動を通して、稲佐山平和祈念音楽祭に参加できたことが非常に印象に残っています。平和を音楽という側面から考えることができて、また新たな発見がありました。
活動を始めた当初は、自分がポジショナリティを築いたり、他者と対話できるレベルに成長できるのか、不安しかありませんでした。しかし、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)のセッションで、アーティストやメディア関係者から原爆問題に向き合っている人たちの話を聞く中で、この時代に生まれた、戦争を経験していない私たちも、核兵器のある世界に生きる人々に変わりなく、自分たちの生活に脅威を感じるから、何か働きかけ行動するべきだ、ということにハッと気づかされました。それまでは、どこか遠いような、自分とは関連が薄いと思っていた事柄も、この気づきを得て、自分との距離感が縮まったように感じます。この自分の中での変化を、サービス・ラーニングプログラムに参加していない人たちにも伝播させ、一緒にこれらの問題を考えてくれる仲間を探していきたいと思っています。

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有限会社メノビレッジ長沼

北海道長沼町にある CSA(community supported agriculture)の農場。近隣のメノナイト教会の有志を中心に、地域で支え合う地産地消のシステムを実践しています。学生は農作物や羊の世話に取り組んでいます。

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参加者の声
朝起きて、家畜の世話を手伝い、朝食を食べて農作業をする、昼食後農作業を再開して夕食、就寝、というサイクルで1日が過ぎていきます。生活の殆どを占めていた農業に関しては、未知の分野だったので、実物を目で見て手で触れながら学ぶ経験は新鮮で貴重なもので、農業という新しい分野に自分の興味が開かれていくのを感じました。また、メノビレッジを訪れる様々な方たちとお話ししたり、メノビレッジの方とより深く話をしていくことで、新しい人生の選択肢を知り、「もっと思うままに自由に生きてもいいのではないか」と思えるようになりました。メノビレッジでの、あまり焦らずに今ここにある生活を丁寧に紡いでいく、という生き方がとても気に入り、東京に帰ってきた今も、そのような生き方、時間の捉え方を大切にするようになりました。加えて、メノビレッジの方々は農作業自体を「仕事」としてではなく「生活を豊かにしてくれるもの」として捉えていると感じ、自分自身の労働観も変化しました。お金を稼ぐ手段としての職業という面もあるけれど、生活と深く関わり、生活や、ひいては自分自身の人生を豊かにしてくれるものとして捉えることもできるのだと学びました。
メノビレッジの方が、「私達は、人の命の火をずっと燃やし続けたい、そういう想いで農家をしています」と話していたことがとても心に残っていて、そんな想いを持ったコミュニティに30日間も滞在できたことに感謝しています。

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ICU主催プログラム

Japan Summer Service-Learning (JSSL) プログラム

ICUサービス・ラーニング・センターとミドルベリー大学(米国)が協働企画・運営するプログラム。ICU生、ミドルベリー大学生、アジアからのサービス・ラーニング留学生が、農山村地域や三鷹市内での小中学校、高齢者施設、子育て支援事業などで活動を行います。オリエンテーション、チームビルディング、活動後のリフレクションやプレゼンテーションを通して各国の学生と共に、サービスや日本社会について深く考察する機会を持ちます。

参加者の声

 

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国際サービス・ラーニング

ICUの献学精神の一つである国際性を活かした奉仕活動を行うのが、国際サービス・ラーニングです。本学の国際的ネットワークを介して、海外パートナー大学・機関のプログラムに参加し、現地のNGOや公的機関でサービス活動(奉仕/ボランティア活動)を行います。世界をフィールドに、教育、福祉、開発などさまざまな分野でサービス活動を実施しています。ICUサービス・ラーニング・センターでは、アジアを中心とした大学・機関とService Learning Asia Network(SLAN)を作り、長年、学生交換を行ってきたほか、近年は、アフリカや南アメリカにもエリアを拡充しています。参加学生は主に7、8月中の約4週間、受け入れ大学・機関のサービス・ラーニング担当者を介し、現地のNPOや公的機関で活動を行います。

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国際パートナー機関一覧 (2021年現在)

地域 大学名
アジア インド レディ・ドーク大学(女子大)
ユニオン・クリスチャン大学
インドネシア ペトラ・クリスチャン大学
ダリK
フィリピン シリマン大学
中国 愛徳基金会
アフリカ 南アフリカ ケープタウン大学
ガーナ ホー工科大学

ケープタウン大学(南アフリカ)

主なテーマは持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development - ESD) と地球市民教育(Global Citizenship Education - GCE)で、私立および公立小学校、環境関連のNGO、植物園などでサービス活動を行うほか、土曜日はUCTが行っている土曜学校(高校生支援)にも参加します。UCTの学生との交流や、レクチャーを聞く機会、ホームステイなども予定しています。

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参加者の声
1ヶ月の間に、幼稚園、小学校、高校、全ての種類の教育機関に訪問することができてとても充実していました。南アフリカはgrade 7まで小学校で、grade 8から高校です。また、NGOなどの団体が提供しているインフォーマルな教育プログラムにも参加でき、さらに教員を育成するためのワークショップにも参加できました。私としては大学で講義をずっと聞くというよりも、実際の教育現場を見られてとても満足しています。
サービス活動で印象に残っていることは、アルファベットも数字も文字を書けない子供達が私の名前を覚えていてくれたことです。タウンシップと呼ばれる貧しい地域にある幼稚園に行った時に、ずっと"a"の書き方を教えても書くことができない男の子がいました。また他の子供達も、自分の名前を繰り返し書いているうちにアルファベットや数字が左右反転したりして、文字を書いているというよりは絵を描いているという感覚のようでした。私は、教育を受けていないため読み書きができない人に実際会ったことがなかったので、とても衝撃を受けました。しかしそれ以上に、彼らが私の名前を繰り返し呼んで私に丸付けをして欲しがっていたことがとても印象に残っています。私はその幼稚園に3日間訪問したのですが、子供達が3日目になっても私の名前を覚えていてくれたことが嬉しかったです。読み書きはできないながらも、私の愛は通じたように感じ、一生忘れられない記憶になりました。

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ユニオン・クリスチャン大学(インド)

小学校、盲学校で子どもと関わったり、現地の人と共に平和について考察する活動が主体です。大学での講義受講、日本の歴史や制度についてプレゼンテーションをする機会もあります。ヒンズー教の影響が強いインドにあって、複数の宗教が混在し、一般的なインドと異なる雰囲気を持つ土地柄も魅力です。

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参加者の声
今回の活動内容で特に良かったのは、宗教理解に関する活動です。ケララ州は他の宗教が互いに寛容であることを事前学習で学び、何故寛容でいられるのか、他の州との違いは何かという自らの問いを、フィールドワークを通して考察することができました。具体的には聖職者養成学校の見学に行ったり、日曜礼拝に参加したりと、主にはクリスチャニティの文化にたくさん触れました。中でもMusical Eveningという音楽を通したサービス活動では、たくさんのUCC生や聖職者の方、音楽に優れた方とコミュニケーションを取る機会がたくさんあり、音楽が持つ力や宗教のあるべき形について、自分の意見だけでなく現地の方々がどのように捉えているのかを深く考えることができました。また寮に住むことでインドの本当の現状や生の声を聴くことができました。
活動内で印象的だったことは、誰もが何か自信のあるものを持っていることです。現地の小学校や盲学校では、子どもたちが自身の得意な歌や絵や点字などを恥ずかしいという表情を一切せずに披露してくれました。同様に、UCC生もたくさんの得意なことを自信をもって見せてくれました。UCC生にどうしてそんなにも多くの人々が自信を持って披露できるのかを聞くと、「たとえ完璧でなくても自分の好きなことを他の人にも共有することで、自分も見ている人も幸せになるじゃない。」と言われて、自分自身、ある程度完璧でないと人に見せてはいけないとどこかで固定概念に縛られていることに気付きました。人が幸せに生きるためには、経済発展や国家開発等のみではなくて、自分らしさを認められる社会の存在が不可欠なのだと再認識することができました。

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シリマン大学(フィリピン)

1週間ごとに孤児院、DV被害者支援団体、シェルター、小学校での教育サポートなど異なる団体を訪れて活動をするため、さまざまな社会問題について学ぶ機会があります。現地学生がバディとして常に付き添ってくれるので心強く、学生間の絆も深まります。

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参加者の声
このプログラムで特によかったのは施設で貴重な体験をたくさんすることが出来たことです。3つの施設を一週間ごとに訪ね、1つの施設を除いてはその施設内に宿泊したので、子供たちと朝から夜までともに過ごすことが出来ました。3回お別れをするのはつらかったですが、とても濃い一週間を毎週過ごすことが出来ました。どの施設もとてもよかったですし、施設同士のつながりなどもありとても勉強になりました。
活動の中で最も印象に残っているのは、施設で子どもたちと話している時間です。多くの子どもが、英語がネイティブでないのにも関わらず自分の過去や家族のことなどを積極的に伝えてくれて、とても胸が痛くなるようなこともありましたが、伝えようとしてくれる気持ちがとても嬉しかったです。そのほかにも、ほとんどの子がとても人懐っこくフレンドリーなので、すぐに打ち解けられて、たくさん話したり歌ったりする時間はとても楽しかったです。
また、七夕のお話を伝えて、子どもたちに装飾とお祈りを書いて飾るという活動も印象に残っています。日本文化をたくさん伝える活動をし、数人の子どもは日本にいつか行くためにこれから一生懸命勉強して働きたいと書いていて、とても嬉しかったです。 フィリピンでのサービス・ラーニング活動は、本当に自分にとっていい刺激となり、また、価値観を大きく変える経験ができました。

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サービス・ラーニングに関するお問い合わせ

国際基督教大学 サービス・ラーニング・センター

2002年10月に設立され、2003年よりアジア地域の高等教育機関とネットワークを形成して、積極的にサービス・ラーニングを通じた学生交流を行っています。プログラムの説明会やオリエンテーションの実施、履修に関するサポートのほか、パートナー機関との交渉や渡航準備のフォローアップ、渡航先視察や安全対策など、学生が安心してサービス活動を行えるよう、日々支援しています。また、モノグラフ・シリーズを発行し、国内外の学術的な視点も取り込みながら、日々進化するサービス・ラーニングの教授法や実証研究にも取り組んでいます。2020年度からはオンライン・モジュールを整備し、より多くの学生や教員がサービス・ラーニングについて学ぶことができるような体制も整え、さらにアジア以外のパートナー機関とも提携を進めています。

〒181-8585 東京都三鷹市大沢3-10-2 東ヶ崎潔記念ダイアログハウス2階
Tel: 0422-33-3687 Mail: slc@icu.ac.jp

サービス・ラーニング・センターWebサイト