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地球市民社会論シリーズ「気候危機とシステムチェンジ」

公開日:2021年2月25日

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2月19日(金)、教養学部専攻科目「地球市民社会論」(担当:毛利勝彦教授・国際関係学メジャー)の第4回学内公開講演を開催しました。国際環境NGO FoE Japanの深草亜悠美さん(気候変動・エネルギー担当)に「気候危機とシステムチェンジ」というテーマでお話いただき、80名ほどの学生が参加しました。

講演では、新型コロナ感染症、生物多様性、民主主義、気候変動など複合的な危機に直面していることが指摘された上で、気候危機に対するFoE(Friends of the Earth)の取り組みが解説されました。「気候正義」を重視するFoEは気候変動を単に科学や環境だけの問題としてではなく、貧富格差や人権侵害や民主的なプロセスとして捉えており、市民が主体となってグローバル正義や次世代への責任を果たすシステム・チェンジこそが必要だと強調されました。

こうした観点から、昨年10月に菅首相が表明した2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標についても、高効率石炭火力発電所の輸出が完全に停止されていないことや、国内でも石炭火力発電や原子力発電がなお「重要なベースロード電源」とされていることが批判されました。また、再生可能エネルギーやそれを支える政治社会システムへのシフトが時間との闘いになっていることも言及されました。

講演会に参加した学生からの感想

・行き過ぎた開発により人と動物に共通するパンデミックが増えるなど、新型コロナ感染症も人間の行動が環境に及ぼした影響の一つなのかと思うと悲しくなった。海外では、環境正義や社会正義に向けて声を上げる環境人権擁護者が殺害されていることもあまり理解していなかった自分がいた。

・2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、日本はなお火力発電と原子力発電を重視しようとしている。公的資金を利用した開発援助や輸出信用においても、日本国内のエネルギー政策においても、市民社会は政府や企業に対して再生可能エネルギー分野で遅れた現状を少しでも早い改善を継続的に指摘・批判する必要があるだろう。

・「環境NGOが環境保全だけを扱っていればいい時代ではない」という言葉が印象的でした。人権、環境、差別、貧困、格差など様々な問題が複雑に絡み合っている事実を頭に入れ、俯瞰的に物事を見る視座はとても重要だと思った。ICUのリベラルアーツの学びはこのような場面にも生かされると思う。有機的に他分野との関連について意識できるように学びたい。