Every Day is “Global” at ICU.

-日常に息づくICUの「グローバル」-

Global ICU

卒業生の声

*肩書はインタビュー当時のものです。

*肩書はインタビュー当時のものです。

高野 誠大 
AWAKENS, Inc. Co-Founder & CEO
2011年 教養学部社会科学科(当時)卒業
2013年 ICU大学院アーツ・サイエンス研究科公共政策・社会研究専攻公共経済学専修修了

だれもが自分の遺伝情報をフル活用できる未来へ

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アメリカでの起業は、現状への問題意識から始まった

2017年、私はアメリカ・シリコンバレーを拠点とするスタートアップ企業を3名の共同創業者と共に設立しました。遺伝情報(ゲノム)データを活用した新しいサービスの開発・提供を行う会社で、現在CEOを務めています。

今から5年後、10年後には、誰もが自分のゲノムデータを持って生きる時代になります。そのデータを医者に提示すれば、その人固有の病気リスクを踏まえた診療を受けられたり、スポーツジムであれば、体質に合った効果の高い運動メニューを組んでもらえたり、そんな時が来ると思います。

しかし、既存の遺伝子検査サービスは、検査キットを購入し、唾液などのDNAサンプルを提出、特定の項目のみ分析した結果レポートが届き、そこで終了です。採取されたDNAにはもっと多くの情報が入っているにもかかわらず、本人は、それ以上に活用することができず、またそうしたサービスが生まれるインフラも用意されていません。

そこで私たちは、一度取得したゲノムデータを人生のさまざまな場面で、何度でも活用できる仕組みをつくろうと考えました。最初は、ゲノム関連サービスの立ち上げ経験があり同様の興味や問題意識を持っているメンバーとの週末プロジェクトでしたが、プロジェクトが現実味を増してきたところで、起業するのが最も合理的だと判断しました。

アメリカで起業したのは、ゲノムデータ取得者が日本の40倍以上という巨大市場があることと、日本とは異なるゲノムデータのオーナーシップに対する考え方があったからです。そして、単純にアメリカで挑戦してみたい、という好奇心が原動力になったのも間違いありません。投資家との話によく出る「起業家はリスクを取って挑戦する人か、リスクをうまくコントロールする人か」で言えば、私は後者のタイプ。正直なところアメリカなら失敗してもキャリアにプラスこそあれマイナスはない、というしたたかさもありました。

創業メンバー4名のうち3人がICU時代の友人やその知人です。偶然とはいえ、卒業後はまったく別のキャリアを歩んでいた、英語教育プログラム(現・リベラルアーツ英語プログラム)のクラスの仲間と協力し、事業を立ち上げることになるとは思いもよりませんでした。

現在はGenomelinkという、遺伝子検査で取得したゲノムデータを預けておくことで様々な情報やサービスにアクセスできる個人向けのウェブプラットフォーム事業を行っています。誰もが自身の遺伝情報を最新のサイエンスを通じて知ることができる教育コンテンツをメインにしていますが、そこを通じて様々なアプリケーションにアクセスできる仕組みもつくっています。例えば、将来、ゲノムデータの提示で検査が効率化すれば、高額な医療検査もコストが下がって誰でも気軽に受診できるようになるのでは、といったことも考えています。ゲノム自体は誰でも持っているものなので、全人類70億人が使うプラットフォームを目指しています。

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大学で見つけた「ビジネスの力を社会に生かす」というテーマ

高校の頃は、漠然と「人の役に立つ仕事がしたい」「国連やNGOで働きたい」と思っていました。そこで国連で働いている人、グローバルで活躍している人が多い大学を調べたところ、名前が挙がってきたのがICUでした。

過去の入試を見てみると問題がユニークで、単純に読み物として面白い。そして、当時はリベラルアーツという言葉は知りませんでしたが、独自性のある大学という印象を持ち、普通とは違うことをしたいという自分の性格もあって「ここで学ぶのは面白そうだ」と進学を決めました。

入学後、リトリートと呼ばれる一泊二日の新入生オリエンテーションのようなものがあるのですが、そこで受けた衝撃は忘れられません。同じ部屋の学生が、この先生はこの研究で有名な人、自分はこの授業を取りたい、と次から次へと話すのを聞き、「同じ新入生なのにすでに自分の目標や、やるべきことを知っているんだ」と、自分とのあまりの差に驚きました。

それ以後、学びたいテーマを自分で見つけないといけない。そんな気づきと焦りから、自分は何がしたいのかを自問しながら授業を選択するようになりました。さらに、少しでも興味があれば、次々と授業を取っては学んでいきました。当初は平和研究に取り組んでいましたが、社会課題を解決するには、前提として自分のツールとなる専門性が必要であることがわかり、自分に一番良いものを探し、行き着いた答えがビジネスでした。

大学3年次の交換留学先は、こうした理由からイギリスのカーディフ大学のビジネススクールを選択しました。しかし、大学での学びだけでは物足りず、当時ロンドンでビジネスを通じて社会課題解決に取り組んでいた日本人の方に「仕事について色々と教えてほしい」とメールを送り、弟子入りのような形でその仕事に携わることになりました。帰国後もこの関係は続き、ちょうど大学院を卒業する時に、その方が日本でスタートアップを支援する組織を設立することになったため、私も参画することになりました。これが今のキャリアにつながる起点になっています。

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問いを立てることが、次につながっていく

起業のそもそもの始まりは、私がゲノム分野に興味を持ち、ゲノムをもっと活用できる方法はないのだろうかと問いを立てたことです。関心を持ったテーマに自分なりの問題意識を見出す。こうした「問いを立てる力」が今のビジネスの土台になっており、ICU時代に身に付けたものの中で最も大きいと思っています。

ICUの授業では、テーマに対して他にどんな見方があるのか、課題に対してどんなアプローチができるのかといったことを自分の頭で考え、自分なりの見解を持つということを徹底してやってきました。すでに決められた正解を導いていく学びとは異なる教育を通して、問題意識が生まれ、「問いを立てる力」が培われたと実感しています。

起業もイノベーションも、何もないところに問いを立て、仮説を立案して検証し、答えを導くプロセスです。誰もが自分のゲノムデータにアクセスできるようになったとき、どんな課題が生まれ、どんなビジネスが求められるだろうか。なぜこの数字なのか、どうすればユーザーの体験を改善できるのか。ビジョンを描くことから現場の個々の業務に至るまで、自分自身で問いを立て、課題を言語化することが最も重要だと考えています。社内でもよく話しているのですが、適切な問いを立てれば、その問いを解決すべく、次のアクションにつながる。これがイノベーションや自走力の根源だと思いますし、実際、起業するにあたってはこうしたスキルが下地になりました。

大事なのはノウハウではなく、問いを立てて、自分で考え、課題を解決し、新しい価値をつくることができる思考のスキルです。この力を、大学時代に培うことができれば、その後の自分の人生を豊かにすることができると信じています。

Profile

高野 誠大
AWAKENS, Inc. Co-Founder & CEO

2011年 教養学部社会科学科(当時)卒業
2013年 ICU大学院アーツ・サイエンス研究科公共政策・社会研究専攻公共経済学専修修了

国際基督教大学大学院博士前期課程修了後、社会にインパクトを生み出す起業家を支援するImpact HUB Tokyoの立上げに参画。2015年、医療ベンチャーのエムスリー株式会社に入社し、ゲノム関連の新規事業の立ち上げに携わる。2017年、ゲノムデータ活用を促進するプラットフォームの構築を目指し、米国カリフォルニア州サンフランシスコにてAWAKENS, Inc.を設立。

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