
夏期留学プログラム:困難に直面した時 オンライン留学の選択が示した道
留学への意欲とコロナ禍
中学生の時に1年間シンガポールに住んでいました。日本とは全く異なる環境・価値観の中での生活は、とても新鮮で、かつ自分の中でも確かな成長の実感があったので、大学でも留学をして、興味のある学問を学んでみたいと思っていました。
1年生の夏は、応募を考えていた海外英語研修(SEA: Study English Abroad)プログラムがコロナ禍で中止となってしまったこともあり、振り返ってみても達成できたことが少なかったように感じていました。なので、コロナ禍で迎えた2年生の夏は、留学への憧れをそのままにしておきたくないという思いと、結果的にオンラインの形態となってしまっても、何もしないで過ごすよりは少しでも自分の成長の可能性がある選択をしたいと思い、夏期留学プログラムへの応募を決意しました。
留学先は、開発学を専攻(メジャー)として考えていたため、開発学の発祥地であるイギリスに魅力を感じていたこと、アジアとアフリカの地域研究に特化した授業に興味を抱いていたことから、イギリスのロンドン大学アジア・アフリカ研究学院(SOAS: School of Oriental and African Studies)を選びました。
課題、ディスカッションと向き合う日々
SOASの夏期留学プログラムは2週間ごとに2つのセクションに分かれていて、それぞれ国際開発と国際関係に関する科目を履修しました。ICUで履修した国際関係や開発学の授業は、理論が中心でしたが、SOASの授業では核兵器問題やテロリズムなど個々の事例を掘り下げて、より実践的に1つのトピックに取り組んだため、これまで自分が気づいていなかった新たな側面に気づくことができました。その一例として、「紛争と国際発展」という授業では、暴力の発生と原因について現実問題と照らし合わせてディスカッションを行ったり、migrants/ refugee/ asylum seekers のカテゴリーが意味する対象の違いについてさまざまな立場から議論したことなどが印象深かったです。普段私たちが見聞きしたニュースや無意識に思い込んでいる事例について、「本当はどういうことなのか」と問いかけながら考える姿勢をメンバーと共有したことで、理解を深めることができました。
留学中の生活は、授業毎の課題が多く、時差の関係で午前中から昼にかけてはずっと課題や自習に取り組み、17時頃から授業に臨む日々でした。また、平均して1日に50-60ページのリーディングに取り組みながら、授業の準備をしつつエッセイを書き上げる必要があるなど、普段の大学での授業以上に熱心な学習が求められたのに加え、オンライン留学では1日の大半を1人で勉強するので、留学当初はモチベーションの維持にも苦労しました。
また、セッションの他のメンバーは修士号を取得していたり、実際に国際機関で働いた経験のある社会人の方々の割合が多かったため、プログラム開始当初は、経験の差や言語の壁もあってディスカッションになかなか参加することができずにいましたが、留学を意義あるものにして終えると決めていたので、先生に授業で使う資料を事前に送ってもらうようお願いしたり、ディスカッションで質問する内容をあらかじめ決めておくことで対応しました。
留学を通しての成長
4週間という限られた期間のなかで当初は積極的に授業に参加できず、時間だけが過ぎていく感覚に強い焦りを抱いていました。留学が終わった際も、もう少し頑張れたのではないか、と後悔や反省する気持ちの方が強かったです。ただ振り返ってみると、オンライン留学という制約下でも、さまざまな学びを得ることができたように思います。
もともとの目的であった国際関係や開発学に関する知識を深めることができたこと、多様な知識、経験を持つ方々とのディスカッションを通して開発や国際協力の現状を知ることができたこと、自分よりも知識も経験もある方々と世代を超えて対等な立場で話し合ったことで、日本からの視点だけでなく、世界全体に目を向ける姿勢を身に付けることができたことがその一例です。
また、当初自分が立てた目標に沿って行動する大切さに気付きましたし、授業を通して国際関係の魅力に気づき、今後の進路に向けた1つの指針となる経験を積むことができたとも感じています。現時点では、メジャー選択や進路について悩んでいますが、オンライン留学をしたことで新たな関心を見つけ、ワンステップ前に進めたのかもしれないと思っています。
留学を迷っている人には、ぜひ留学をして達成したい目標に向けて自分なりにできることを探してみて欲しいと思っています。
(2021年11月掲載)