在学生・教員の声

黒木 健 (くろき けん)教養学部4年(インタビュー時)

メジャー:生物学、数学(マイナー)

大学生の「今」を目いっぱい生きる

教育理念と先生との距離に惹かれて入学

ICUを受験した理由は、主に三つあります。受験した時点では専門にしたい分野が決まっていなかったので、ICUでは入学後にさまざまな専修分野から選択することができること、オープンキャンパスで先生方とじっくり話すことができたこと、そして入学案内を手にしたとき、ICU独自のリベラルアーツとは何であるかという教育理念を感じたことです。なかでも特にオープンキャンパスでの経験が受験を決めた大きなきっかけになりました。現教養学部副部長の小瀬博之先生(メジャー:生物学、環境研究)に丁寧に対応していただき、先生方との距離が近いことが強く印象に残りました。大学では、自分なりの世界観を構築したいという目標を持っていたので、先生と身近に対話ができ、さまざまな意見に触れることのできる、ICUの環境は最適だと思いました。

実際に入学しても期待どおりで、どの授業でも先生方が熱心に教育してくださる大学だと感じました。特に1学期目から履修するリベラルアーツ英語プログラム(ELA:English for Liberal Arts Program)の先生の教育への専門性と熱意が非常に印象的でした。どの授業も刺激的で、月日があっという間に過ぎていったのを覚えています。

リベラルアーツの環境で自然科学を学ぶ意味

1年次は、学際的に幅広く人文科学、社会科学、自然科学の科目を履修し、公共政策メジャーにも興味を持っていました。2年次の春頃、より具体的にメジャー選択を考えるようになったときには、自然科学分野の仮説を検証し積み上げていくプロセスに惹かれ、自然科学分野をメジャーとして選択しようと考えました。そして生き物が生きていること自体に素朴な不思議を感じていたので、生物学をメジャーに決めました。一方で、マイナーを数学にしたのは、今後将来にわたってどのような分野を学ぶにしても数学の基礎は欠かせないと思ったことと、そう思いながらも苦手だったので克服したかったためです。

「リベラルアーツで自然科学分野を学ぶのは、専門性が深まらず役に立たないのでは」と考える人もいると思いますが、私はそうは思いません。どの大学でも、学部教育はその分野の導入である側面が強く、専門は本格的には大学院で学ぶことだと思っています。むしろこのICUのリベラルアーツ環境は、専門分野の基礎はしっかり固めつつ、さまざまな分野の考え方に触れながら、自然科学分野の考え方を他分野の考え方と相対化することで理解を深め、柔軟な思考を養える素晴らしい学修環境だと、4年間の学びを振り返って強く思います。

授業には、他の分野を学ぶ学生もいて、分野を越えて意見を交わす機会が多々あります。そして小さい規模の大学だからこそ、授業外でも先生方や友人、さらに友人の友人とであってもオープンな対話ができるコミュニティが形成されていて、日々の学生生活からもリベラルアーツ的な考え方が醸成されるのだと思います。

寮長の経験からの学び:"Speak your truth quietly but clearly"

大学4年間、キャンパス内にあるカナダハウスという寮で過ごしました。一人暮らしは社会人になってもできますが、大学生としての寮生活や、留学生との共同生活は今を逃したらなかなか経験できないと思ったからです。

寮生活では、他人と共に暮らすことで他人を知り、他人との対比によって自分を知り、自分を律する力を養うなど、さまざまな面で成長することができたと思います。特に寮長を務めた経験は、私にとっての大きな財産です。寮長でなければ、例え自分に関係する寮内の問題であっても、自分が我慢さえすればやり過ごすこともできてしまいます。でも、寮長になったら問題は無視できず、解決のために動かなくてはなりません。うまく解決できないこともありましたが、それでも継続して対話することや、時にはすべてが丸くは納まらないとしても決断しなくてはいけないことを学びました。自分が寮長として必ずしも満足に役割を果たせたわけではないとしても、得たものは大きかったと思っています。

詩人マックス・アーマンの言葉に "Speak your truth quietly but clearly (あなたが正しいと思うことは静かに、しかし明確に伝えなさい)" とあるように、他人を尊重しながらも、自分の見方・考えを表明することを恐れすぎず、伝えるべきことを適切に伝えることがいかに大切であるか、寮長の経験から学びました。

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何事にも挑戦すること、そして何かを続けること

ICUでは、さまざまな機会をつかむことができます。軽いフットワークで、これらの機会を逃さないように、まずは挑戦してみることが大切だと思い4年間を過ごしました。私は「ICU Debating Society」という英語ディベートのクラブに所属し、障がい学生の学修支援を担う学生サポーターを務め、アラスカの国立公園でのインターンシッププログラム*や、文部科学省の「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」に採択された取り組みの一環として、理系分野に特化した交換留学の締結を目的に、先生方とともに理系分野でその名を知られるアメリカのリベラルアーツカレッジ、ウースター大学を調査ために訪問もしました。さまざまなことに挑戦するのは、時間も労力もかかりますが、そこから得られるものは何事にも代えられませんし、何より学生生活中の今を逃したら、経験することは容易にはできないでしょう。ただ逆に、色々なことに挑戦するだけでなく、何かのことを続けることも重要だと思っています。すぐやめてしまうとわからないようなことが、何かに打ち込んでいくと得られることもあるからです。ICUには、そのどちらも経験できる環境があります。

こうしたさまざまなチャンスがあるICUで、なぜ学ぶのか、大学の教育から得るべきことは何か、リベラルアーツとは何か、こうしたことを真剣に考える人はきっとICUを好きになるし、多くを得ると思います。英語だけではなく、ICUの教育理念や、リベラルアーツ教育を十二分に味わってください。

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*現在はプログラム休止中