メジャー:平和研究

【シリーズ:留学✕リベラルアーツ 第1回】
日本との比較を通じた平和研究を
交換留学プログラムを活用し、1年間のドイツ留学に挑む在学生の佐藤優実さん。
本企画では「留学×リベラルアーツ」をテーマに、留学生活での変化や気づき、成長について、3回にわたるインタビューを通じて迫ります。
第1回となる今回は、留学3ヶ月目の佐藤さんにお話を伺いました。
一度は断念した、留学への思い
高校1年時にICUのオープンキャンパスを訪れ、その学びの環境に一目ぼれしました。従来の詰め込み型の教育に疑問を抱いていた私は、対話型の授業に惹かれ、「私が求めていた教育がここにある」と感じたのです。さらに、国際色が豊かな点も大きな決め手となりました。高校時代から留学を志していたのですが、周囲からの反対を受けて断念。大学では必ず留学に行こうと決意していました。
ICUへ入学後、選んだ留学先はドイツです。広島県出身であり親族に被爆者がいる私は、平和研究への強い関心がありました。日本とドイツには第二次世界大戦の敗戦国という共通項がありますが、私は両者の違いに着目しています。たとえば、日本の歴史教育では史実を理解して覚えることを求められますが、ドイツを始めとする国際社会では史実についてのディスカッションやプレゼンテーションの機会が多く、主張を持ち論理的に説明する力が求められます。戦争の記録や記憶の伝え方においても違いがあります。日本には広島の平和記念公園などはありますが、戦争の歴史を発信する施設は多くありません。対してドイツの街では、空襲で焼かれた瓦礫を使って街を復興させるといった一般市民に広く伝える試みがあるのです。こうした背景から、現地での学びを踏まえて両者を比較したいと思い、ドイツへの留学を決めました。
念願叶って、2022年7月から1年間にわたる留学が始まりました。留学先はベルリン自由大学です。キャンパスには世界中から学生が集まり、その数は約33,000人。全学生数3,000人にも満たないICUとは環境が異なりますが、多くの人との出会いや交流を通じて、大規模校ならではの良さを最大限に活用したいと思っています。

言語の壁を乗り越えて
私がドイツ語を学び始めたのは、学部2年次の時です。ドイツ語の初級クラスを1年間履修し、3年の春学期に上級クラスを履修した後、留学先のドイツへ渡航しました。英語よりも学習期間が短く、文法が複雑なので不安もありましたが、現地でのサポートが充実しており非常に心強かったです。7月上旬から8月下旬はフライブルクで民間の語学学校に通い、現在はベルリンに移って大学開講の語学プログラムに参加しています。加えて、ホストファミリーとの生活が非常に良い実践の場になり、生活を始めて1カ月も経つとスムーズに意思疎通ができるようになりました。
一方で、ドイツに来てからICUの英語教育の強みも実感しています。ベルリン自由大学には世界中から留学生が集まるので、英語開講の授業もありますし、寮やキャンパスで英語を使うこともあります。ICUでは1年次から英語を徹底的に学びますが、その力は英語圏以外への留学でも自身の支えとなるはずです。
現在はちょうど履修登録の時期ですが、ドイツ語開講と英語開講の授業をバランスよく選択しようと思っています。両方の力を伸ばし、世界中の人と自在に意思疎通ができる国際人を目指します。

授業開始を目前に控えた、今後の目標
留学に来てから特に強く重要性を実感しているのが「対話力」です。言語の壁がある以上、「相手に伝えたい」「相手を理解したい」という意志とそのための工夫が求められます。この2カ月間で磨いたコミュニケーション能力に加えて、今後は語学力を高め、国際的な対話力を向上させたいと考えています。また、大きな環境変化の中に身を置くからこそ、自分との対話も大事にしていきたいですね。
10月下旬からはいよいよ大学での授業が始まります。ベルリン自由大学では、ICUのリベラルアーツとは異なり、それぞれの学部で専門分野を学びます。私は政治学・国際関係学の学部に所属し、現時点での研究テーマである「核問題」を深堀していく予定です。もともと平和研究に関心を持っていた私ですが、ICUに入学して以降、社会心理学や化学など他分野の学びや、他メジャーの友人との意見交換を通じて複数の角度から平和研究を考えてきました。「戦争と平和」について広い視野と多角的な視点からとらえたからこそ、自身の興味の軸が「核問題」であると見定めることができたと感じています。リベラルアーツ教育と専門的な学び、両方の利点を享受できることは非常に恵まれたことです。ICUの2年間で身に付けた複眼的な視点とクリティカルシンキングを土台としつつ、ドイツでの学びを通じて、私にしかできない比較研究を形にしたいと考えています。
(2022年10月取材)
この佐藤優実さんのインタビューは3回連続シリーズです
【シリーズ:留学✕リベラルアーツ 第2回】
2国間の比較を超え、世界を舞台にした「核をめぐる対話」へ
【シリーズ:留学✕リベラルアーツ 第3回】
確固たる想いを胸に、海外大学院で核問題の研究に臨む未来